第9話
魔力で作られた器ならば、魔導士が土塊から作るゴーレムと同じだろうか。それは制作者に使役される泥人形に過ぎないのだが……。
『おい、中身が空の人形と一緒にするな。きちんと汝には自身の魂が宿っておる。その点は元通りだ』
ゲイボルグの説明によると。
どんな生き物も魂を有しているのに、肉体が他の生き物に食べられる際、魂は消化されない。魂は食物連鎖の輪から外れているのだ。
食べられた魂は未消化のまま、食べた側が吐く息などに含まれて空気中へ。普通はそこで霧散してしまうが、それは食べた側が魂を形あるものとして認識できないが故。
ゲイボルグのような魔竜ならば霧散させず、魂の形を一時的に留めておけるという。
『一時的なのも保管場所がないからで、代わりの器さえ用意してやれば、ずっと留められる。つまり元通りの魂として、その存在を続けさせるのも可能なのだ』
ゲイボルグは誇らしげに、胸を張るみたいな仕草も示していた。
『意識や記憶は死ぬ前と同一だろう? ならば蘇ったも同然ではないか。しかもその肉体は我の魔力で作ったのだから、我が生きて我の魔力が続く限り存在し続ける。いわば永遠の命だぞ!』
ちょっと強引な理屈だが、確かに自分を自分たらしめているのは、意識や記憶の蓄積だ。それが変わらない以上、蘇ったも同然なのは僕にも納得できた。
『うむ、ではその先だ。我の魔力が続く限りといっても、離れ過ぎれば魔力を送り続けるのも大変で……』