第8話
「あれ……?」
意識を取り戻した直後、僕は間抜けな声を発していた。
薄暗い中でも天井は見えるし、地面の岩肌を背中越しに感じる。洞窟内で横たわっているようだ。
この洞窟の最奥部で黒い竜に遭遇して、食べられてしまったはずだが……。こうして生きている以上、全て夢だったのだろうか?
「そうだよね。魔竜とかゲイボルグとか、実在するはずないし……」
ゆっくり起き上がりながら、独り言として口に出す。自分自身に言い聞かせる意味もあったのに、途中で遮られてしまう。
『夢ではないぞ。現実の出来事だ』
脳内に響く声。
慌てて振り返れば、黒い竜がうずくまっていた。
最初と場所も姿勢も同じだが、身に纏う雰囲気は違う。最初より元気になったように見えた。
『当たり前だ。汝を食べて満腹になったからな。やはり人間は魔力に満ちた御馳走だぞ!』
とても満足そうに、恐ろしいことを言う。
「やっぱり僕、食い殺されたのですよね? じゃあ今の僕は一体……」
声に出して尋ねながら、自分の手足に視線を向ける。透けて見える様子はないので、幽霊の類いではないはず。
『安心しろ。確かに我は汝を食べてしまったが、その後蘇らせたのだ。恩返しみたいなものだと思ってくれ』
さすがは伝説の魔竜。死者蘇生の術まで心得ているのか!
一瞬素直に感嘆したけれど、それも読み取られて、しかも否定されてしまう。
『いや、死者蘇生とは違う。蘇生ならば元通りの身体に魂を戻すが、その肉体は我が魔力で作った器に過ぎん』