第7話
「なるほど。竜の巨体ならば、さぞや大量の食べ物が必要なのでしょうね」
大袈裟に頷きながら発言したのは、無言で考え込んでいたら心を覗かれるだろうし、それは避けたかったからだ。
『うむ。しかし我にとって重要なのは、肉体的なエネルギー消費よりも魔力の問題だ。木の実や野草、リスやウサギでは、いくら食べても魔力の補充にならん』
ゲイボルグは少し遠い目をした後、まるで僕を覗き込むみたいに、厳つい顔を近づけてくる。
『しかし人間は違う。使いこなせておらんが、潜在的な魔力は膨大。勿体ないくらいだぞ!』
確かに、僕たち人間には魔力がある。
例えば僕はそれを魔法という形で具現化できないが、魔力が体内に蓄えられているからこそ、魔導通信具や魔導ランタンみたいな器具を使いこなせるのだ。
一瞬そう考えた直後、ハッとする。一番最初に竜が言った『ちょうど良いところに現れた』を思い出したからだ。
『うむ、それだ。汝は魔力の補充に適したエサだから……』
気づいた時には手遅れで、大きく開いた口が目前に迫っていた。
上顎から生えた牙は滴る涎で滑っている。それがはっきりわかるほどの距離だった。
思わず目を閉じてしまうと、僕の意識は暗転して……。