第10話
ゲイボルグに乗って仲間の居場所へ戻る。騎乗した状態で森の中は進めないので空からだ。
鬱蒼とした森でも、開けた場所ならば空を見上げるのは可能。デニックたちはバサッバサッという翼の音を聞き、上空に目を向けていた。僕が「おーい!」と呼びかけると目を丸くする。
あの時の彼らの姿は一生忘れないだろう。特にジャクソンなんて、洞窟での僕みたいに、尻もちをつくほどの驚き様だった。
本来の目的である食料探しは失敗したが、空を飛べる手段があれば上から森全体の地形を把握できる。もう迷う心配はなかった。
「竜を使う……? そんなのインチキだ、今すぐ放してこい!」
「そうだ、行軍訓練だぞ。自分の足で歩かなきゃ!」
ジャクソンの文句にスペンサーも追従するが、デニックが二人を制止する。
「いや訓練の表面でなく本質まで考えれば、ブレントの方が正しいよ。竜の利用は確かに上策だろうね」
今回の訓練で想定されているのは、撃墜された乗騎から脱出して逃走中という状況。途中で別の竜を発見して、手懐けることが出来たならば、それを使うのは当然という意見だった。
普段リーダー面のジャクソンも、チームの参謀役がデニックなのは認めている。だから反対の言葉もなく……。
その後。
ゲイボルグは僕が見つけた野生の竜という扱いで、そのまま僕の乗騎となった。
あの洞窟で僕に正体を明かしたのは、空腹で困っていたからに過ぎない。存在を秘匿して一般の竜に紛れて暮らしていくのが、魔竜本来の生き方だという。
僕以外にはテレパシーも使わず、みんなからは「ちょっと色が違うだけの普通の竜」と思われているようだが……。
『軍の上層部には、我の正体を察している者もいるはずだぞ。だが現在の扱いならば手駒に出来るから、気付かぬふりをしているのだろうよ』
そう言ってゲイボルグは笑っていた。
まあ周りの思惑がどうあれ、現状が続くのであれば僕としては大歓迎だ。
こうして、一人前の竜騎兵どころか『黒き流星』の二つ名で呼ばれるほどになれたのだから、人生、何が幸いするかわからないものだ。
なんとも素晴らしい人生ではないか。厳密には生きているのと少し違うから、もう人生とは言えないかもしれないけれど。
(完)




