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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第2章
95/429

62 レオナルド殿下は本当に視察行ったんですか?

 

 

           *      


 しかし、朝からみんなよく食べるね。私とレオナルド以外みんな大盛りじゃない。

 朝の六時から随分と胃腸が強くて羨ましいわ。

 隣に座るレオナルドを見ると、随分とお箸の使い方が上手くなっているわね。感心感心。でも一番ビックリしたのは、エリーがお箸を使えていることだ。てっきり手づかみで食べるのかと思っていたわ。


 そんなこんなで食べるのはあっという間で十五分くらいで食べ終わってしまった。

 「いやぁ、食べたわねぇ。じゃあ、この後はどこいきましょうか?」

 「ソフィアさんや、今日は貴女のところの鉄道の視察に行くんですよ? 忘れてませんか?」

 「あら、そうだったわね」

 「ちょっと、頼むわよ、もう…」

 まだ寝ぼけているのか、それとも態となのか判別のつかないボケをかましたソフィアは、さっきのことを無かったことにして、駅へと先導したのだった。


 駅へ向かう最中、海の方に何やら大きな建造物が見えた。

 「ねぇソフィア。あれ何かしら? 船のように見えるんだけど?」

 「船よ。 うちと伯爵家で共同出資して作った造船会社よ。あれ、聞いてない?」

 「聞いてない。お姉様は聞いてる?」

 「聞いてるわよ。あれ、クリスが知らないなんて珍しいわね」

 「え、いつから?」

 「鉄道延伸の締結の時かしら…」

 「全然聞いてない…」

 「ちゃんと説明してなかったお父様にはあとで、きついお仕置きをしておくわね」

 きついお仕置きはお父様的にはご褒美なんだよなぁ…。


 「大型のクレーンまである……。ねぇ、結構出来ているように見えるんだけど?」

 「でもね、あれでも最低で、あと二年くらいはかかるわよ」

 「そうなんだ」

 「あれに関しては、シド兄様がメインで頑張ってるわ。何か『海外ならオリハルコンとかあるんじゃね?』とか何とか言ってたけど…」

 無いんじゃないかな? ここそういう世界観の世界じゃないし。


 「ちなみに会社名は、アンバーレイクの黄色と、オパールレインの青色を足した緑色。エバーグリーン造船っていうのよ。将来の私たちみたいね」

 両頬に手を当て目を瞑り、右に左に頭を振っている。

 ちなみにレオナルドはどうしてるかなと思ったら、案の定ポカーンとしていた。こういうのも視察の一環だと思うんだけどね。エリーに関してはあんまり興味無さそうだ。大きな口を開けてあくびしている。朝早いもんね。


 そんなこんなで駅に着いた。港町の玄関にふさわしい白い外壁に青い屋根のレトロ風の駅舎だ。いや、この時代でレトロってのは違うんだろうね。でもおしゃれだわ。

 駅舎では、先についていたレオナルドの護衛が、どうだったのかと聞いていた。二人きりになってないし、勿論脈ナシです。あ、エリーは脈アリかもしれないけどね。


 しかし、前世では電車に新幹線くらいで、汽車なんて間近で見ることほとんど無かったんだけど、実際に間近で見るとすごく威圧感があってかっこいい。

 レオナルドも目を輝かせて興奮している。やっぱ、男の子ってこういうの好きよね。

 「あっ、レオナルド殿下、そちらは運転席になりますので、乗るのはこっちの客車の方になりますよ」

 「あ、そうなんですね」

 そりゃあそうでしょうよ。そこに二十人近くも乗れないもの。乗れないと分かってしゅんとしている。

 「あとで、見学させてあげますよ」

 「本当ですね? ソフィア嬢、約束ですよ?」

 めちゃくちゃ興奮してる。私の時以上に興奮してない?


 そんなソフィアお気に入りの汽車に乗り、アンバーレイク領、領都のエーレクトロンまで行く。大体一時間もあれば着くだろう。

 徐々に加速し白煙を上げながら走っていく。そんな汽車にレオナルドもお姉様も大はしゃぎだ。こうして見るとちゃんと子供だなって思う。

 「わ、わ、馬もないのにこんなに早いなんて。うわわわわ」

 「すごいわ。馬車より揺れないし早いわ。うちの前までこないかしら?」

 それはそれで邪魔だしうるさそうなので却下ですね。


 「んー。このくらいだったらぁ、私が走ったほうがぁ、早いわぁ」

 そんな盛り上がってる人たちに、エリーが水を差す。

 自分のものでもないのに、レオナルドとお姉様が汽車を絶賛し、エリーが汽車と自分どっちが凄いのかを議論していたが、最終的にはどっちがあたったら痛いかに話が移っていた。それに関しては両者引き分けじゃないかな?


 無事に、駅へ着き汽車を降りると、興奮覚めやまぬ状態の二人が物凄く絶賛していた。

 興奮覚めやらぬままエーレクトロンの街中を馬車で移動していると、レオナルドがまたもや興奮したように高層ビルやら工場やらを指差しながら「あれは何ですか?」「これは一体?」等と質問しまくっていた。

 それに対してソフィアは冷めた様子で溜息を一つつく。

 「あの、レオナルド殿下? 以前視察に来た際に、この辺を案内したはずですが、もしかして覚えておられないのでしょうか?」

 「えーっと、はい。すいません。全然覚えてないです」

 こんな凄い街並み覚えてないとか、一体何に現を抜かしていたんですかね? 護衛や文官の人たちもちょっと呆れてるじゃない。


 「じゃあ、レオナルド殿下ぁ、私とぉ、夜の工場見学行きましょうかぁ?」

 「いえ、いいです。夜は弱いので遠慮しておきます」

 「別に下心あって言ったわけじゃないのにぃ」

 夜の工場見学とかいいよね。ライトアップされた工場とかマジで大人向けだし。お子ちゃまのレオナルドにはまだ早いのよ。

 そんな感じで、一回来たはずのレオナルドが記憶喪失の如く、初めて観る景色に終始興奮しながら、アンバーレイク公爵家へ着いたのだった。


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