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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第2章

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58 みんなイベントが大好きなようです


 こんな展開になるかもと先読みしていた私を褒めたい。

 ミルキーさんさんとエリーにそれぞれ、さっき作った戦闘用の衣装を渡す。

 ミルキーさんには青い方。エリーには赤い方のチャイナドレスだ。スリットが入ってるから足技がやりやすくていいんじゃないかな?


 二人が着替えている間に、決戦のバトルフィールドことオパールレイン北部庭園の会場設営が行われている。もう完全にお楽しみモードだよね。

 手馴れた様子で庭に低いタイプのウッドデッキを敷き、パラソル・テーブル・椅子を各所に置き、お茶と軽食の用意が迅速に進んで行く。

 普段、脂肪・糖分・塩分の怪人役を演じるロック兄弟とラックの三人の庭師が耕す予定の場所として、ここならいいと判断をする。後で後悔しても知らないよ?


 主人の着替えが終わり、出てくるのを待っていたプロフィアさんにウィリアムが話しかける。まぁ、プロフィアさん綺麗な大人のお姉さんだからね。

 「あ、あの。俺、ウィリアムって言います!」

 「はい。存じております。私はエリー様の従者をしているプロフィアと申しますが、何かご入用でしょうか?」

 「はい! プロフィアさんはお子さんはいますか?」

 「………。え、えーっと、すいません。質問の意味がちょっと」

 「あ、すいません。子供を産んだことはありますか?」

 「あ、あぁ。そういうことですか。すいません。私は生憎まだ独身なもので…」

 「あ、そうですか」

 その言葉をもって、興味がなくなったのか前を向くウィリアム。

 「???????」

 頭に大量の?をつけるプロフィアさん。気持ちはすっごくわかる。いきなりそんなこと言われて、興味なくされたら困るよね。

 というか、ウィリアム失礼すぎ。性癖もここまで拗らせるとただただ気持ち悪い。大人のお姉さんより美人すぎる経産婦のがいいなんて…。もうこれは治らないかもしれないね。


 ちょっと叱ってやろうと、頭を叩こうとしたら父親ことパジェロ将軍に思いっきり拳骨を食らっていた。

 「いっっっっっっっっったぁ!!!!! 何すんだよ親父!」

 「馬鹿者! 見ていたらなんだあの失礼な態度は。いやぁ、すいませんねお嬢さん」

 「いっ…、いえ…」

 「お前は女性への接しかたが酷すぎる。帰ったら母ちゃんに報告する」

 「やっ…、やめ…。ごめんなさい。ごめんなさいプロフィアさん」

 ポロポロと大粒の涙を零し許しを請うウィリアム。そんなに母親が強いんだろうか?

 「いえ、あの。大丈夫です。ちょっとびっくりしましたが…」

 大人の余裕を持っていたプロフィアさんが、物凄く戸惑っている。そりゃあそうだろう。こんなのどうしろっていうのよ。

 まぁ、これで少しは懲りただろうか。しかし、ちゃんと叱るときは叱るんだなと思って将軍を見たら、プロフィアさん相手にデレデレしていた。

 親子揃ってダメダメだな。私はそれ以上関わらないよう、そっとその場を離れることにした。


           *      


 さて、準備は万端。うちのメイドさんや、王妃様付きの使用人や護衛の人がどっちが勝つかを賭けている。怒られても知らないよ?

 屋敷から腕を回したり肘を曲げたりしながら二人が出てきた。

 勿論、みんな盛り上げるのを忘れない。

 それに気を良くしたエリーが、レオナルドに満面の笑顔で近づく。

 「レオナルド様ぁ、勝ったらぁ、ハグとキッス。期待していますねぇ」

 そう言って後ろに手を振りながら、ドスドスドスと走って行った。


 「………………………」

 無言で固まるレオナルド。

 手首を軽く回し具合を確かめるミルキーさんの前にレオナルドが平身低頭で近寄る。

 「お願いします。勝ってください勝ってください勝ってください…………」

 それは呪文のような、お経のような、ブラック企業の営業の最後の祈りのようなかき消えそうな声で嘆願していた。

 そんなミルキーさんは私とレオナルドを交互に見るやいなや。

 「よくよく考えたら、私が戦うメリットって無くないですか?」

 まぁ、確かにね。勝手に参戦させられてるけど、ミルキーさん積極的に戦うイメージないもんね。ルイスお兄様を抱いてのほほんしているイメージしかないわ。

 しかしそうも言ってられないのよね。レオナルドがぱっくり口を開けたまま固まってしまった。余程ショックだったのだろう。仕方ない。ここは私が一肌脱ぎましょうか。


 「ミルキーさん、ミルキーさん」

 「はいはい。なんでしょうかクリス様」

 「別に勝っても負けても構わないんだけど、一応体裁があるから、エリーと戦ってくれたら、特別にルイスたん人形を作ってあげるけど?」

 「いくつですか?」

 「へ?」

 「いくつ作ってくれるんです?」

 「んー。そうだなぁ」

 ここはやる気を出してもらうため、破格の条件でもつけようかな。

 「勝ったら、ミルキーさんの望むだけ。負けたら1個だけ、どんな大きさでも作ってあげるよ」

 「勝ちます。絶対に勝ってきますから、その言葉忘れないでくださいねー!」

 そう言いながら、先に待つエリーの元へ元気に走って行った。もう馬車酔いは大丈夫そうだ。


 「よかったですね、レオ様。ミルキーさんやる気になってくれましたよ」

 って、まだ口を開けたまま固まっている。なんか口から白い靄のようなものが出ているけど大丈夫なんだろうか? 軽く揺さぶってみるが、反応がない。

 はぁ、仕方ないな。レオナルドの耳元にそっと近づき息を吹きかける。

 「わひゃぁああっ!」

 「気づきましたかレオ様? もう間も無く始まりますよ」

 「あっ、うん……」

 そんな様子を王妃様とお母様が微笑ましく見ていた。別に深い意味はありませんよ。ただ、レオナルドが呆っとしている間に勝敗が決まったらかわいそうじゃないですか?


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