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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第2章

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54 マスコットキャラクター


 向こうで服を選んでいる間、二人が何か見つけたらしく、えらく興奮している。いつも来ているのに、そんな興奮するものが………あったわ。何これ。

 二人の前には、フェルト生地で作った私っぽいぬいぐるみが置いてあった。ジト目で笑顔なのが非常に可愛らしい。


 「あ、こちら気になります?」

 コロナさんが接客の為に割って入ってきた。

 「こ、ここここれは何ですか?」

 「こちらは、クリスたん人形になります。ラピスラズリ商会の公式マスコットキャラになります。大・中・小の3種類を通常販売しておりますが、大変人気な商品でして、現在、こちらの展示品のみの在庫となっております」

 「えぇ、そんなぁ…」

 悲鳴にも似た声でソフィアが嘆く。そんな悲しむことでもないだろうに。

 しかし、公式キャラって、メ○ンブックスのメ○ンちゃんみたいなものかな?


 「にゅ、入荷の予定はあるんですか?」

 食い気味に質問するレオナルド。

 「はい。ございますよ。ただ、こちらは人の手で一つ一つ丁寧に作っておりますので、次回以降の入荷の予定がまだ未定になっております」

 「「そんなっ…」」

 そんな悲しむことでもないでしょ?

 「一応、こちらのマーサちゃん人形ならまだ十分に在庫がありますが…」

 「「あっ、そっちは大丈夫です」」

 サマンサお姉様に似たぬいぐるみだ。私のと違って怒ったような表情になっているからダメなのでは? というか、同時に要らないは失礼じゃない? お姉様が聞いたら怒るわよ。その人形みたいな顔で。


 「ルイスたん人形はないのでしょうか?」

 お付きのミルキーさんが食い入るように入ってきた。

 「あー、すいません。今の所販売の予定がないですね」

 「そうですかー」

 シュンとなるミルキーさん。分かった。分かったから。後で作ってあげるからそんな気落ちしないで、ね?

 そんなやり取りを尻目にソフィアが大胆な事を言い出す。

 「じゃあ、私これ全部買うわ」

 「待ってください。ここは一つずつにするべきだと思います。勿論大で」

 「待ちなさいな。百歩譲って一つずつはいいにしても、大はダメよ。小か中にしなさい。レディファーストって言葉知ってる?」

 小が約13センチ、約中が20センチ、大が約30センチくらいだろうか。


 尚も言い争っていると、カランカランとお店の扉が開く音がした。

 どうやら子供達が何かを買いに来たようだ。そして、このぬいぐるみに気づいた子がこっちへやって来て、ぬいぐるみを指差す。

 「これくだしゃい!」


           *      


 「ありがとうございましたー」

 子供達の群れが帰って行った。最後の在庫のクリスたん人形3点売り切れました。そしてなんと、マーサちゃん人形も4つ売れました。何という事でしょう。

 後には呆然と立ち尽くす二人。真っ白になっている。

 しかし、その後どちらともなく笑い出し握手をする二人。


 「買われてしまったものは仕方ありません。しかし、子供達がクリスを好きだというのならそれを邪魔するのは野暮ってもんです」

 「そうね。私はいつでもクリスに逢えるもの。ここは本物で妥協するわ」

 それは妥協って言わない。しかもさらっと『私は』って言って牽制しているし、レオナルドも全然気づいてない。


 コロナさんが申し訳なさそうに提案をする。

 「い、一応、受注生産という形になるのですが、等身大とBIGがありますが…」 

 「BIGってどのくらい?」

 「等身大の約2.5倍になります」

 「か、買います。全種類買います!」

 「わ、私も買うわ!」

 「一か月くらい時間いただきますが、宜しいですか?」

 「えぇ、大丈夫です」

 「勿論、そのくらい待つわ」

 「かしこまりました。早急に製造ラインに発注いたします」

 流石に全部売り切れてしまったからなのか、態となのか判断に困るところだ。まぁ一応無事に解決したからいいかなと思ってたら、ソフィアがまた何か見つけたらしい。


 「ちょ、ちょっと。何でこれが…」

 「こ、これは!」

 えぇ…。今度は何? 何が売っているの?

 二人の後ろから覗くように見ると、小さいガラスケースに入った私のフィギュアだった。シンプルなワンピースを着てポーズを取っている。

 「あの、コロナさん? これは一体どういう事かな?」

 笑顔で問い詰める。どう考えてもうちの領の技術力じゃ作れないはずよ。まさか…。

 「ソフィアさん?」

 「わ、私知らないわよ。知ってたら売りに出さないわよ」

 「それもそうかぁ…」

 「あ、もしかして!」

 「えぇ、こちらはエーレクトロン支店に持ち込まれた案件になりまして、そのサンプル品をサマンサ様が確認して、今後うちへ独占的に販売していただける運びになりました」

 コロナさんが説明するが、お姉様も一枚噛んでいるのか。あとで、お姉様の部屋に行ってみよう、きっとこれ以外にも飾ってあるに違いない。他のメイドにもチクってやろう。死なば諸共ってね。


 「クリス、犯人が分かったわ。うちの3バカよ」

 「でしょうね」

 「まぁ、今回はいい事したから、褒めておくわ?」

 「⁉️」

 いや、いい事ではないでしょう? 私の肖像権どうなるの? あ、この世界にはないですか。そうですか。

 「あの、これはこの1点限りなんでしょうか?」

 「いえ、こちらは展示品になります。ちょっと値段も張るのであまり売れませんが…」

 そういってコロナさんは奥の棚を案内する。

 うえぇ…。何でこんな種類あるの?

 バニースーツ、チャイナドレス、魔法少女、シスター等々。制服だけでも十種類くらいあるんじゃない? ドレスも結構あるな。こんなの色違いみたいなものじゃないの?


 全部ケースに入っているんだけど、注意書きのところが最高に頭おかしい。

 「こちらは舐めても安心安全な素材で出来ております…。意味がわからない…」

 「本人は舐めたら怒るのにね」

 「舐められて喜ぶ人なんていないでしょうに」

 「でも、舐めて喜ぶ人はいるわよ? ねぇ?」

 「えぇ、勿論です」

 二人とも何言ってるんだろう。なんかやばい薬でも飲みましたか?


 こっそりと、私とソフィアにだけ聞こえるようにコロナさんが耳打ちする。

 (ちゃんと、年齢制限かかるようなものは青の洞窟で販売してますよ)

 (は?)

 (分かったわ。それも全部買うわ。3点づつ買うわ)

 (ありがとうございます)

 もう、見なくても買うんだ。マンション買う感覚で買ってない? 後悔しない?

 (ねぇ、一つで良くない? 3点って何?)

 (そんなの決まってるじゃない! 保存用、鑑賞用、実用用)

 (実用用って何? 何するの? ねぇ? 黙ってられると怖いんだけど…)

 口をつぐんで明後日の方向を見て知らんぷりするソフィア。


 そういえば、レオナルドが静かだなと思って様子を伺うと、刺激が強かったのか、顔を真っ赤にしてゆでだこ状態になっている。頭から白い湯気も出ている。レオナルドには早すぎたんだ。

 顔を覗き込んで様子を見ていたら、我に返ったのか、途端にびっくりして後ろにひっくり返る。

 「ク、クリスいたのですか」

 「大丈夫ですか? レオ様」

 手を出し引っ張り上げる。

 「ありがとうございます。いやぁ、私には刺激が強いようです。あ、店主さん、アレとアレとアレを、あと、これとそれと、これもお願いします」

 買うんだ…。いや、いいんだけどね。でもやたら布面積の少ないのを選んだのはどういう事かな? バスタオルバージョンなんて必要なくない?

 そんなレオナルドにソフィアが手を差し出す。

 「ようこそ、レオナルド殿下。こちら側へ」

 「ふっ…。貴女には負けませんよ」

 固く握手する二人。その様子を微笑ましく眺めるコロナさんと店員さん。ミルキーさんに至っては軽く涙ぐんでいる。何だこれ。


 よくわからない茶番が終わった頃に、エリーがどの服にするのか決めたようで、採寸が終わり、こっちにやって来た。

 「決まったわよぉ」

 何の衣装にしたのか店員さんに尋ねる。ふむふむ。これかぁ。

 「これなら、一、二時間くらいで出来るから、それまでお茶にでもしましょうか」

 店員さんが、応接室の方に一行を案内する。

 「あ、ついでにこの衣装も作ってもらってもいい? あと、ミルキーさんの分もね エリーのは、赤地に金色の柄。ミルキーさんは青地に金色の柄ね」

 「かしこまりましたが、何に使うんです?」

 「何か必要になりそうだから?」



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