53 半裸のエリーに服をあげよう
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「随分と律儀ね。そういうのってさっきの憲兵隊とか店の人がやるんじゃないの?」
先ほど、エリオットが飛び出した時に、地面が抉れ、タイルが吹き飛んでいる為、誤ってここを通って怪我しないようにパイロンと棒で仕切っておく。飛び出したところ・着地したところ・最後にのしかかったところの3箇所がメキャメキャに壊れている。幸い、ショーウインドウは傷が付いていなくて良かった。このガラス交換だけでお金が結構飛んでいきそうだしね。
地面に関しては流石に他領の、しかも辺境伯ということで、請求出来なそうなのでこっちで負担して修理しておくことにする。後で業者さん呼んで直してもらわないと。
それよりも喫緊の問題として、エリオットの服をどうにかしないといけないね。さっきそこで爆破にでも巻き込まれたんですか? ってくらい服がボロボロだ。
そんな状態で自己紹介をされた。
「私ぃ、エリザベス・エンジェルシリカでっす☆ エンジェルシリカ辺境伯領の長女よ。よろしくねぇ。こっちはぁ、従者のプロフィアよん」
ウインクしながら目の横でピースをする。
エリオットじゃないのか? まぁ、いいか。本人がそう言ってるんだし、下手に追求しないほうがいいよね。
「クリス、あなたの亜種みたいじゃないの」
亜種とか言うなし。
「辺境伯の……。あれ、名前はエリオットではなかったですか?」
私のことは知らなかったのに、エリオットは知ってるのか。複雑ぅ。
「んー、その名前は捨てたのぉ…。だってぇ、可愛くないじゃない?」
キュピピピンとウインクするエリザベス。ぞわぞわと総毛立つレオナルド。
「ふむ。じゃあ、エリーって呼ぶのはどうかしら? エリオットとエリザベス。両方の愛称からエリーなら違和感なくない?」
「あらぁ、いいわね、それ。ふふふ。エリー。エリーね、かわいくて素敵。ね、レオナルド殿下もそう思いますわよね」
「えっ、あっ、はい。というか、知ってたんですね」
「そりゃあ、勿論、イイ男はぜーんぶチェックしてるわ」
「ひぃ…」
レオナルドが一人怯えているが、今は構ってあげられない。
事件があったので野次馬が結構な人数集まってきている。
人目があるので、店の前で半裸のエリーと長々と立ち話をしている訳にもいかないので、お店の扉を開け中へと促す。
とりあえず、犯人捕獲のお礼として、何か服をプレゼントしようと思ったんだけど、普通の服売ってないんだよね。どれも自分好みの服ばっかり。サイズも7XLまであるけど、これはオーダーメイドじゃないと着れないんじゃないだろうか?
とりあえず、どれがいいか選んでもらおう。
「うんわぁ。なーんて素敵なとこなのかしらぁ…」
胸の前で両手をギュッと掴み、腰をフリフリしている。
でも、お店の人はプロだよね。完璧な笑顔で対応している。レオナルドもソフィアも見習ったら? 貴族なんだから腹芸の一つできないでどうするの?
「んー。私ぃ、迷っちゃうなぁ。プロフィアはー、どれがいいと思うぅ?」
「エリオ……、エリザベス様なら何でも似合いますよ」
今、エリオットって言いかけたでしょ。まだ慣れてないんだね。
「んもう。プロフィアもぅ、エリーぃって呼んでぇ」
「は、はい。エリー様…」
あの完璧な笑顔が崩れかけたぞ。
「んー、そうねぇ。この衣装とか可愛いわね。プロフィアとお揃いで作ってもらおうかしらぁ」
「私は、この執事服があるので十分です。お気持ちだけ受け取っておきますね」
「あら、そうぅ? 残☆念」
確かに、プロフィアさん、綺麗でスタイルいいから着ないのは残念だね。




