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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第2章

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48 メアリーの絵でほっこりする



 そんな感じで気落ちしていた私にアマベルが声を掛けてきた。

 「クリス様、こんなとこで、こんなのを読んでも面白くないんじゃありませんか?」

 「まぁ、はい…」

 気になったのはあったので、後で来て確認しようと思ったのは内緒だ。


 「そうでしょうとも、そうでしょうとも」

 曇りのない笑顔でこういうことを言うときは大抵碌でもないもんだ。

 「こちら、私がクリス様を想って描いた最新作になります。読んでいただけますか?」

 有無を言わさないような圧で、手渡された本は、表紙を見ただけで凄かった。こんなの言葉に表せないわ。

 中を検めると、まぁ凄い事。人によっては最後のページになかなか辿り着けないんじゃないかしら?

 読み終わると、横からエペティスがすっと自分の描いた本を渡してきた。はいはい読みますよ。読めばいいんでしょう?

 ………。エペティスさんは機械工学がお得意なのかな? この街でそんなに機械とか無いだろうに。謎だわ…。そして、これもなかなか刺激が強いね。何考えて描いてんのかしら? 頭おかしいんじゃないの?


 どうりで、最近屋敷でセクハラが減ったわけだ。願望を描くことによって、こうして発散していたのね。直接ねだってくるメアリーのが健全に思えるわ。

 「ところで、メアリーの描いた本もあるのかしら?」

 「あら…」

 「やっぱり、メアリーの事が…」

 「いや、そんなんじゃないわよ。あなた達が描いてるんだから、脳内ピンクのメアリーがどんなの描いてるか気になるじゃない?」

 「あぁ、なるほどです」

 二人とも、苦い顔をしている。えっ、そんな過激な本を描いているのかしら?


 アマベルがコロナさんにところに行き、コソコソと耳打ちをすると、コロナさんが奥から何やら持ってきた。

 「こちらになります」

 それは、幼稚園児がクレヨンで描いたようなレベルの絵が描いてあった。

 「メアリー、絵下手だったんだ」

 「そのようです」

 クレヨンで裸の人間二人がニコニコしながら手をつないでる絵が描いてあった。いや、そう見えただけで、本当は違うのかもしれない。使ってる色が少ないから判別がつかない。もしかしたら、服を着ているのかもしれないしね。

 なんか、ほっこりしたから、これは持ち帰って額縁に入れて部屋に飾ろう。メアリーの反応が楽しみだ。

 「しっかし、私の知らない間に、よくもまぁこんなに描いたものね」

 「そんな、褒めないでくださいよ。みんなクリス様を想って描いたら、こんなに増えていただけですって」

 「褒めてないわよ? 呆れているのよ、もう…」

 「私たちメイドだけでなく、男性の使用人や街の人も描いてるんですよ。クリス様は大人気ですね」

 「えっ⁉️」 

 メイド達だけじゃなくて、街の住民も描いてるって? ははっ。コミケでも開くか? そう、私は開き直ることにしたのだった。


           *      


 結構時間が経っているけれど、ソフィアはまだ読んでいるのかな?

 さっきみたいに声を掛けると怒られそうなので、暫く黙って待っていることにした。したんだけど、アマベルとエペティスがオススメの本を次々と持ってくる。他人の作品をオススメするのはすごくいいことだと思うのね。でもね、私を題材にしたエロ本をどんな気持ちで、どんな顔で読めばいいのかしら? せめて、家で落ち着いて読みたいんだけど。


 更に待つこと十分ちょい。険しい顔をしたソフィアが決心したのか、本を閉じ、コロナさんに向き直る。

 「買うわ! ここの本全部、三冊づつ買うわ!」

 某CMのような威勢のいい声で言ったけど、買うのはエロ本なんだよなぁ…。

 「かしこまりました。全て梱包し、おもちゃと併せてお届けいたします」

 「よろしくね。あ、ポイントってつくのかしら?」

 「勿論でございます」

 ニッコニコ笑顔のソフィアとホックホク笑顔のコロナさん。


 「あ、そうそう、さっきこの本とこの本で読んだこれなんだけど…」

 「はいはい。あ、これですね。これがどうかしましたか?」

 「可能性の段階の話なんだけど、うちの兄達にお願いしたら、作れそうな気がするのよね…」

 「えっ! 本当ですか?」

 「うん。そしたら、ここに卸すから売ってみたらいいんじゃないかしら? 勿論最初にクリスに使ってもらってからになるけど」

 「えぇ、えぇ。勿論です。出来ましたら、是非よろしくお願いします。その際はエーレクトロン本店のものに言っていただければ、誰でも対応できるようにさせていただきます」

 「あら、近くて助かるわ。じゃあ出来るのを楽しみにしていてね?」

 「はい。ふふふふふふ……」

 「おほほほほほほ……」

 何やら不穏な会話が聞こえたんだけど。何を作るのか分からないけど、その時は全力で逃げさせてもらうわ。


 腰に付けた懐中時計を見ると、もう少しで十三時半。ギリギリランチタイムの時間だが、間に合うだろうか?

 「ねぇソフィア? お昼ご飯はいいのかしら?」

 「あっ! そうだった。今日はお寿司の予定だったじゃない! 今から間に合うかしら?」

 どうだろう? 時間も時間だけど、平日だから大丈夫な気もする。行ってみないことには分からないな。

 「じゃ、じゃあ、あとはヨロシクね」

 そう言って慌ただしく店を後にした。やっぱり食い気のが上なのか。


 港の方なら何店舗かあるんだけど、今からだと間に合わないだろう。なので、街中にある方のお寿司屋さんに行く。結構有名店だからまだ混んでる可能性もある。

 「何とか間に合ったわね」

 「そうだね。誰かさんが読み耽らなければ、余裕で間に合ったと思うわよ」

 「私だけのせいじゃないと思うんだけど」

 こんなとこで話し合っていても仕方ないので、引扉を開け、中に入ると、お姉様達が居た。


 「いらっしゃいませー、お客様ー。すいやせんー。本日、ネタの方が完売になってしまいましてー、本日終わっちゃたんですよー」

 威勢のいい大将が申し訳なさそうにする。

 「あら、あなた達、今頃お昼なの? てっきりもう食べた後だと思ってたわ」

 カウンター席から声を掛けられる。もう営業終了で仕方ないが、お姉様の近くに行く。

 「いや、ちょっといろいろありまして…。というか、打ち合わせは?」

 「そんなのすぐ終わったわよ。だから、こうして食べていたんじゃない」

 お店の材料を食べきるまで? だからお姉様とは来たくなかったんだけど、まさか、一緒に来なくてもこんな弊害があるなんて…。


 お父様の横にいた、公爵も満足そうだ。

 「ん? ソフィアじゃないか。ここのお寿司はうまいぞー」

 「でしょうね…」

 凄く不貞腐れている。まぁ、食べられなかったし、仕方ないね。

 「ねぇ、いまからやってるお店ってないの?」

 「そうねぇ。思いつくのはカフェくらいかしらね」

 「あら、カフェ行くの? じゃあ私もついていこうかしら」

 え? お姉様、こんなに食べたのにまだ食べるんですか?

 「あなた達同じような格好してるのね。私浮かないかしら? でもまぁいっか。私が真ん中に入れば丁度バランスがとれるわね」

 その後、お姉様とソフィアがケーキを競うように食べたのは言うまでもない。

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