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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第2章

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42 フリー素材


           *      


 馬車に揺られること十数分―――――

 「まさか、クリス様と一緒にお出かけできるとは思ってませんでした」

 「えぇ、でも宜しかったんですか?」

 食べ過ぎて動けないというメアリーに変わり、アナベルとエペティスさんを連れてきた。アナベルに関しては、いつもさんづけで呼んでるんだけど、ちょっと今は外している。

 何でって? メアリーと同じで私に対する扱いが酷いと感じたからよ。基本、年上にはさんづけするもの。貴族っぽくないと言われてもね。


 それに、二人は普段からロリータファッションに造詣が深いので、私たちと一緒に居ても違和感がないので、今回は護衛にぴったりだと思う。

 二人とも、胸元に白いフリルのある空色と桜色のスエードのワンピースを着てきている。髪の毛も下ろしてゆるふわな巻き髪。私達に合わせる格好になっている。

 でも、シンプルなのに、私より圧倒的に似合っている。一朝一夕で身につくものじゃないなと改めて思う。


 え? メアリーはどうしたのかって? ちゃんと二人の代わりとして託児所に置いてきたわ。子供達と戯れ(じゃれ)合ってればお腹も減るでしょう?

 部屋を出るとき、子供達にめっちゃ揺さぶられていたけど、まぁ大丈夫でしょう。メアリーは子供達人気スゴイから、すぐに元気になるわ。


 「ところで、クリス様、本日はどちらへ行かれるのですか?」

 「ラピスラズリ商会本部へ行くわ」

 その言葉を聞いた途端、二人とも冷や汗をダラダラと掻いて、笑顔の表情のまま固まってしまった。

 あれれー? どうしたのかなぁ? 何もやましいことなければそんな緊張しないよね?

 そんな感じで静寂に包まれた馬車は十分弱で街の停車場に着いた。



 街の中心部へは基本馬車は入れないので、ここからは徒歩で移動だ。

 ラピスラズリ商会本部こと本店は商業区画の中央にある。一応伯爵家で経営している商会だしね。停車場から大体五、六分もあれば着くだろう。

 四人ともゆるふわな格好をしていると目立つね。

 結構声を掛けられる。もしかして、この格好で来るのは失敗だったかな?


 平日の木曜なのに、結構子供達がいる。学校に修業前の小さな年頃の子供だ。

 そんな子供達が私の前に集まってくる。こんなちっちゃい子にも人気なのかな?

 「フリー素材のおねーちゃん!」

 「ちがうだろー! フリー素材のおにーさんだって」

 「いつもパパがおせわになってるっていってた!」

 「あくしゅしてー」

 笑顔が引きつる。一体どういうことかな? フリー素材とは一体…。もしかして、例の同人誌とやらがこんなとこにまで普及してるんだろうか?


 「えっと、どういうことかな?」

 子供達の目線に合わせるよう、少し屈んで声をかける。

 「いつもよんでるー」

 「ぼくもー」

 「わたしもー」

 「くっころっていって!」

 「……………」

 こんな小さい子にまで悪影響が出ているなんて…。実害が大きすぎるわね。

 少し目眩がしたので、顔を手で押さえる。


 「えっと、読んでるってそういうのどこで手に入れたの?」

 なるべく冷静に平静に問いただす。

 「おにぃのベッドの下ー」

 「おとーさんの本棚ー」

 「図書館にあったー」

 「ママのクローゼットの中ー! 山積みだった!」

 「路地裏に落ちてたー」

 「ねぇ! くっころっていって!」

 一人、物凄く熱心に「くっころ」を求めてくる子がいる。意味知ってるのかな?

 小さく「くっころ……」と言ったら、子供達が一斉に騒ぎ出す。

 「もっと大きな声で!」

 「聞こえない!」

 「いつもみたいにやって!」

 「にせものー」

 し、失礼な。これはもうどうしたらいいかわからんね。


 後ろを振り返ると、メイド二人がニマニマしながら楽しんでいる。

 「子供達にもクリス様の魅力が伝わって嬉しいですわ」

 「クリス様への愛情は止まる所を知りませんね」

 ソフィアはニヤニヤと笑いを(こら)えている。ソフィアさんや他人事だと思って…。

 「あなた結構人気なのね。というか、バレてるじゃない。男だって」

 確かに、バレているね。きっと本の内容に依るんだろうね。ちょっと確認しないとまずいかな? でも読みたく無いなぁ…。

 それに、いい意味で人気じゃないですよね?

 

 「ほら、子供達の期待に応えてあげなさいよ」

 子供達以上に期待しているのはソフィアではないのかな? それに後ろで見ているアナベルとエペティスもワクワクみたいな顔で見ないで欲しい。

 でも、ちょっとイラッときたので、子供達の方ではなく、これ以上ないくらいニヤニヤした顔のソフィアに向けて叫んであげた。

 「くっ…、くっころーーー!」


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