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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第2章

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41 街に行く前に…


           *      


 街へ向かうことになったのだが、とりあえず、声かけはしておいたほうがいいかなと思って調理場へ足を向ける。

 中に入ると、ありとあらゆる食べ物の匂いがした。

 カレーに、トンカツなどのフライ系の揚げ物に、唐揚げ。中華もイタリアンもある。何、オードブルの注文でも入ったのかしら?

 というか、お菓子を作ってるんじゃないの?


 中では、カレーにうるさいロザリーがステラさんとシフォンさんにカレーとは何かみたいなことを長々と語っている。二人もメモを取りながら真剣に聞いている。

 というか、いつの間にか調理担当の使用人さんが十人近くいる。

 三、四人くらいが今も何かしらの料理を作っている。

 みんな教えるの好きだからなぁ…。作って、味見して、教えて、実践してを繰り返している。


 これは、あの二人を一緒に連れて行くのは憚られるので、入り口近くで試作品をむさぼり食べてるメアリーに声をかける。

 「メアリー、これは一体どういうことなの?」

 「あ、クリス様。これはですね、調理実習?」

 「何で疑問系なのよ」

 「いやぁ、最初はお菓子を作るはずだったんですが、珍しく街から戻ってきた調理担当者が、これもこれもって作り出しまして…。で、あの二人も凄い凄いとほめそやすので、軽いパーティになってます」

 「そ、そうなんだ」

 「この量ですからね、私がいなかったら消費できなかったでしょうね」


 まだ、テーブルの上には大量の料理が乗っているが、これからもどんどんと増えそうだ。ソフィアが私の袖を引っ張る。もう慣れたわ。

 「なぁに?」

 「あの二人だけだと覚えきれなそうだから、明日からうちの人間を研修に連れてきていいかしら? あ、お金はちゃんと払うわよ」

 「そうしたほうがいいかもね。あの料理と量だと、胃もたれ凄そうだし」

 「ありがと。今日は、ウスイホンの方が気になるから、こっちはこのままにして早く行きましょう?」

 ソフィアも何だかんだ欲望に忠実ね。


 「え? これからどこか行くんですか?」

 「ちょっと、ラピスラズリ商会本部に確認に」

 「あ、じゃあ私も行かないとですね」

 「そうね。そのために来たんだけど、別の人でもいいのよ? 動けるの?」

 「大丈夫です。まだ、腹六分目くらいです」

 本当にぃ? どう見てもぷっくり膨らんでるわよ?

 「ふーん。じゃ、メアリーでいいわ。一緒に来てもらえる?」

 「…っぷ。かしこまりました」

 ゲップをしながら立ち上がるメアリー。お腹をさすりさすり苦しそうにしている。そこまでして食べるかね? 普通…。


 「では、まず…」

 「まず?」

 「街へ行くのに着替えましょう」

 ズコッと芸人みたいなこけ方をするソフィア。

 「あなた、今日1日で何回着替えるのよ…」

 「でも、折角だしおしゃれして行きたいじゃない?」

 「はぁ…。分かったわ…。付き合うわよ」

 「クリス様、ちょっと今辛いので、一人で着替えてきていただいてもいいですか?」

 「最初から当てにしてないからいいわよ。あ、馬車の用意だけしておいてね」

 「いやぁ、助かります」

 お腹をさすりながらよろよろと歩いていくメアリー。

 「ねぇ、あなたのとこのメイドってみんなおかしくない?」

 あら、ソフィアさんや。今更ですよ? まともな人なんて一人もいませんよ?


           *      


 ということで、今日はクラシカルロリータで決めてみました。

 でも何でロリータファッションってコットン生地みたいのが多いのかしら…。

 まぁ、全体的にふんわりしてて可愛いからいいんだけどね。

 前世では合うサイズが少なくて、いいデザインのものは諦めてたのよね。くっ…。


 前回とは逆に、私は赤系、上半身は白、スカートは薄いピンクと濃い目のピンクのボリュームのあるスカートと姫袖。交差したティアードスカートが可愛い。今回は頭にはボンネットを被る。

 ちなみに、ソフィアには同じデザインの青系を着せてみた。

 そして、ソフィアはというと、私を見るなり「はふはふ」言いながら抱きつき、胸の下あたりを頰ずりする。シワができるのでちょっと、激しい頰ずりは止めてほしい。

 「クリスといると、私の中の女の子が音を立てて崩れていくわ」

 はっはっは。何をおっしゃいますやら、ソフィアさん? 昨日のご飯の食べっぷりで既に崩れて粉になっていますよ? 勿論口には出さないけれども。


 部屋を出ようかというときに、何かを思い出したのか、ソフィアが声を上げて立ち止まる。

 「あっ!」

 「いきなり大声あげてどうしたの?」

 「昨日の服返すの忘れてたわ。そのまま着て帰っちゃたじゃない? ステラもシフォンも」

 「そういえば、そうね」

 「ちゃんと洗って返すからね」

 「別にいいのに。あ、ソフィア達が着ていたのはもう洗って干してあるわよ」

 「仕事が早いわねぇ。今日借りた服も洗って後で持ってくるわね」

 流石に昨日の今日で返ってくるとは思ってなかったから、別にいいのに、律儀よね。


 玄関前に行くと、馬車は用意してあるが、メアリーの姿が見えない。

 中で待っているのかしら? と、覗いてもいない。あれぇ?

 辺りを探すこと一、二分。屋敷横の花壇の縁に腰掛けていた。


 こんなとこにいると思わないから、馬車の下や、馬の下まで覗いてしまったじゃない。ソフィアに「そんなところにいるわけないでしょう」と、呆れながら突っ込まれた。

 「どうしたのメアリー? まさか、誰かに襲われたの?」

 青い顔をして俯き、お腹を押さえている。これは重症だわ。

 「当たらずも…、と、遠からずです…」

 メアリーをこんなにする手練れが入るなんて、と、ソフィアを背後に庇い辺りを見回す。


 「何やってんの?」

 「いや、メアリーをこんなにする敵が潜んでるかもしれないじゃない?」

 「いや、どう考えても食べ過ぎで苦しんでるようにしか見えないわよ?」

 え? まさかそんな…。そんなアホな理由な訳…。

 「流石っ…、ソフィア…様ですっ…。そ、その通りです……」

 心配して損したわ。こんなんなるまで食べるなんて。なーにが「腹六分目です」だよ。

 こんなんじゃ、途中の馬車でとんでもない粗相しそうだから別の人を連れて行きましょう。


 「メアリー…。今日はいいわよ。部屋でゆっくり休んでなさい」

 「うぅ…。誠にごめんなさい…」

 あれ? もしかしてまだ余裕がおありですか、メアリーさん?

 「ねぇ、茶番は終わった?」

 冷ややかな目で私達にツッコミを入れるソフィア。別に茶番のつもりはないんだけどなぁ…。


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