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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第2章

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33 イベントの闖入者



 一通り、ショーが終わり、五人がそれぞれポーズと決めゼリフを言い、敵役をおもいっきり吹っ飛ばしたあたりで前列の男たち(ウィリアム含む)が、野太い歓声を上げ、頭上で拍手をしている。


 そんな時、ふとステージの脇の方から不審な人物が会場内に闖入してきた。

 細マッチョの変態だ。何で分かるかって? だって、紐に近いブーメランのパンツしか穿いてないからよ。

 その、紐に近いパンツを肩までかけている。ギリギリ乳首が隠れている格好だ。あの紐肩に食い込んで痛くないのかしら?

 あとは、膝丈までの靴下と、顔にはパンツを被っている。例えるならそう、変○仮面とカンダ○を足しっぱなしにしたような風貌をしている。

 他には何かの入った袋を担いでいる。


 これも、うちの使用人なのかしら? 誰だろう? ショーのクライマックスなのかしら? それにしては下品すぎないかしら? もしかしてお父様…はあんなに筋肉無いわよね。

 会場全体が静まり返っているところをみると、これはイレギュラーなことらしい。

 流石のお母様達も戸惑っている。闖入者というより、その格好の方にかしらね?


 変態はキョロキョロと首を小刻みに回し、周りを見渡す。

 グリンと首を回しこっちに顔を向ける。

 もしかしてこいつ、レオナルドを狙っている? ソフィアもいるのに何てことだろう。慌てて二人の前に庇うように出ると、同時に一蹴りで私の前まで飛んできた。なんて身体能力だろう。機動性のある変態ってこんなに怖いのね。

 でも、ここで退くわけにはいかないと思っていたら、刹那にスカートを捲り、私のパンツをずり下ろそうとした。でも残念。今日はタイツを履いていたので、簡単には降ろせなかったらしい。


 その一瞬の間に、お母様達@キュアエイジングの方々が駆けつけ、あっという間に変態をのしてしまった。

 変態は一言も声を出す間もなく床に倒れ伏した。

 「お嬢さん、もう大丈夫よ。私たちが来たからには……、えっと…、悪は絶対にたたき潰す!」

 一応、こんな場面でも役に徹するのね。

 というか、もっといいセリフはなかったのだろうか? 後半怒りに任せて言っていたように聞こえたのだけど……。


 アンジェさん以外がビシッとポーズをとる。やっぱり恥ずかしいんだな。

 そんなことより、変態は息をしているんだろうか? 首や関節がありえない方を向いているんだけど……。

 「わー! さっすが、キュアエイジングッ! みんなー拍手ーーーー!!!」

 司会のお姉さんが出てきて、無理やりに演出という程をとった。

 まぁ、そうだよね。なんて思っていたら、今頃になって丸々太った憲兵隊が入ってきた。前よりも太ってない? 歩くのもやっとって感じなんだけど?

 「ねぇ、○ルソナの○ャドウであんなのいなかった?」

 ソフィアさんや、あんまり言うとやばいですよ?


 「はっ! クリス大丈夫ですか? スカート捲られてましたが大丈夫ですか?」

 「大丈夫ですよ、レオ様。なので確認しようとしなくていいですからね?」

 オロオロとしているレオナルド。下手になんかされても困るので先手を打つ。

 「そうですよ、レオナルド殿下? デリケートなところですから、男子がおいそれと触っていいわけないですよ? ここは、私が後でしっかり、念入りに確認しておきますので、大丈夫ですよー」

 「全然安心できない」

 そうして、本日のキュアエイジングショーは閉幕となった。

 ウィリアムは一人、ずっとイベントだと思っていたらしい。平和だね☆


 因みに後日、何でこんな名前にしたんですか? と聞いたところ、アンチが増えれば増えるほど、アンチエイジングになるからとのこと。なるほどわからん。

 因みに、イベントをやればやるほど、ファンが増えてアンチが増えないのでアンチエイジングできないと嘆かれた。知らんがな。

 同年代の人たちに比べて圧倒的に若作りしてるんだから、これ以上やらなくてもいい気がする。ただ、ウィリアムを喜ばせてるだけな気がするよ。


           *      


 ショーが終わり、帰路につこうかと帰り支度をしていたところに、ウィリアムが私たちのところまでやってきた。

 そして、普段見慣れない人がいるからか、ぶっきらぼうな感じで疑問を口にする。

 「クリスの横のねーちゃん誰だ?」

 「あら、随分と口の利き方がなっていませんわね、ウィリアム・クロムウェル?」

 「な、何で俺の名前を……」

 そりゃあ、ゲームの攻略対象ですからね。ソフィアにとっては朝飯前な話よね。


 「(わたくし)、ソフィア・アンバーレイク。アンバーレイク公爵家の長女よ」

 堂々と自己紹介するソフィア。いやぁ、堂に入ってるなぁ…。

 「ふーん」

 興味なさそうに返事をするウィリアム。


 「クリス以外の人間に興味はありませんが、こうも興味なさそうな態度を取られると腹が立ちますわね」

 「当たり前だろ? 俺はな、年上(大人のお姉さん)にしか興味ないんだ」

 「これが将来の騎士団長だなんて……」

 ソフィアが呆れたように呟いた。

 勿論、ウィリアムにも聞こえていたようで、なんの事もなしに返す。

 「いや別に俺、騎士団長になろうなんて考えてねーぞ。弟のが強いしな」


 その言葉にびっくりしたのか、私に耳打ちする。

 (ちょっと、どういうことなの? 騎士団長コンプレックスのウィリアムがこんなにあっさり否定するなんて、びっくりなんだけど。というか、完全に見た目がアイドルオタクみたいになってるんだけど)

 (自分の好きなことをみつけたんじゃないの?)


 実際ウィリアムは、うちで剣の稽古をしてはいるが、実際はお母様に会いたいからだし、うちのお年を召されたメイドさんとかにもアピールしたりしているのよね。そして何より、私に料理やお菓子作りを教わっているので、将来そういう道に進むんじゃなかろうかと思ってる。

 最初にあった頃より、毒気が抜けて非常に生き生きしている。だって今も顔がツヤツヤを通り越してテッカテカしてるもの。半分くらいは汗なんだろうけれど。

 

 そうして、広場を後にし、再び屋台のある方へと歩みを進めた。

 「いやー、やっぱあれだけ動くとお腹空くな。レオなんか奢ってくれよ」

 「あなたは気楽でいいですね」

 そう言った後に、私の方をチラッと見る。

 「クリス、何か食べたいものはありませんか? 何でもご馳走しますよ」

 そんな対応をされたウィリアムが拗ねるが、これ幸いとソフィアがウィリアムを嗾ける(けしかける)


 「あら、レオナルド殿下が、私たちに奢っていただけるそうですよ。良かったわねウィリアム。何でもいいらしいわよ」

 パァッと笑顔になり喜ぶチョロいウィリアム。

 「マジか! じゃあ俺あれがいい!」

 「では、私はあれがいいですわ」

 「待ってください。あなた達には奢るなんて一言も…」

 じーっとレオナルドを見やる。

 「わ、分かりました。ここは私が出しましょう……」

 いいカッコしようとして失敗したレオナルドが、財布が空になるまで奢らされたのは言うまでもない。


 「ちょっと、クリス! このコロッケめちゃくちゃ美味しいわよ。いったいどんな味付けしてるのかしら?」

 それね。美味しいよね。胡椒がすごく効いててスパイシーなんだよね。しっとり系のコロッケで、ジャガイモに豚肉とタマネギとニンジン。ただ、入ってる青い野菜が未だにわからないんだよね。ネギの青いところか、にんにくの芽か、そんな感じの野菜片。コロッケも美味しいんだけど、メンチカツも美味しいのよ。肉汁が溢れだして、手で持ったら手が油まみれになるくらい肉汁が凄いの。


 そんなコロッケの他にメンチカツにハムカツ。更には唐揚げと四人が競い合うように食べている。追加注文するたびに、レオナルドの表情が固まる。

 「あ、すいません。コロッケとメンチカツとハムカツと、ヒレカツそれぞれ15個ずつと、唐揚げ800グラムください」

 「ソフィア様、向かいのお店の豚まんと焼売と海老焼売も買っていきましょう」

 「何ですか、この魚の形をした焼き物は? ……たい焼き。へぇ、ではあんことクリームとずんだ。それとお好みたい焼きというのもあわせて10個ずつください」

 ソフィアとメイドさん二人が、目につく食べ物を、片っ端から買っている。レオナルドのお金で。


 「なんか悪かったな、レオ。お前も食うか?」

 フランクフルトを食べながら、レオナルドにも差し出す。勿論、レオナルドのお金で払ったものだ。

 「………はい、いただきます………」

 何かかわいそうになってきたので、肩代わりしてあげようかなと思ったら、ソフィアがアメリカンドッグを食べながら近づいてきた。よく食うな。

 「ねぇクリス、男の子がソーセージ食べてるの見ると、何か感慨深いものがあるわね。クリスもそう思わないかしら?」

 そう言って、ソフィアは私にフランクフルトを差し出してきた。


           *      


 「私たち、ちょっと(レオナルドのお金で)買いすぎちゃったから、クリスの屋敷によらずにこのまま帰るわね。だからお礼にレオナルド殿下、今回はクリスを貸しますよ」

 勝手に私の事を貸し借りしないで欲しい。本当に自由だねこの人達は。


 「そ、そうですか。それでは、仕方ありませんね。ちゃんとクリスをお家へ送り届けますよ(遠回りで)」

 「え? もう帰るのか?」

 「リアムは自分で帰れるのなら、まだ食べていてもいいですよ」

 「⁉️ それは困るぞ! もうこれでお終いにするから置いてかないでくれ!」

 「正直、クリスと二人きりになるには、置いていくという選択肢もアリですね」

 「俺が悪かった。だからそんな意地悪言わないでくれよぉ…」

 帰りの馬車の中では、終始レオナルドが私に話しかけてきていたので、結局ウィリアムは屋敷に戻るまで蚊帳の外だった。



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