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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第1章
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06 翌日、夢じゃなくてよかったけど...

 翌日、目を覚ますと、昨日と同じ景色が映った。夢じゃ無くて良かったと安堵したが、右手に違和感がある。右を見れば何故かメアリーが寝ていた。

 普通、使用人って自分の部屋で寝るんじゃないの?

 昨日はそのまま一人で寝た記憶があるんだけど…。よく見ると、メイド服を着ているから、朝早くに来て待っている間に寝てしまったのかもしれない。

 いや、それもおかしい話でしょ。なんで寝ちゃうの? 起こしなさいよ、全く。

 幸せそうな顔で寝ているが、頬をむにむにしたりして起こした。

 「あら、クリス様、おはようございます。昨夜はお楽しみでしたね」

 「おはよう、メアリー。そんな事実は無かったわよ」 

 「昨晩、クリス様が眠った後に入り込んだんですが、覚えてませんか?」

 「何してんのあなた?」

 「いえ、寂しいかなと思って、クリス様を抱き枕にして寝ました」

 「どうりで身体中、妙に痺れてるわけだわ」

 あらやだ。メアリー、私のこと好きすぎない?

 「ねぇメアリー? 何でそんなに私のこと構うの?」

 「メイドの仕事だからですが何か?」

 「仕事の範疇超えてるでしょう?」

 「大丈夫です。オパールレイン家は寛大なので、このくらい誤差です。誤差」

 「…………」

 この家の使用人、みんなこんな感じなのかな。

 欲望全開の暴走機関車メアリーには、流石にある程度の節度を持って接して欲しいので、構い過ぎると嫌いになるよ。と伝えたところ。

 「前向きに検討させていただきます」

 それ絶対に守らないやつじゃん。



 朝食の後、再びお姉様に呼び止められた。

 「クリス、今日こそはお茶会をしましょう」

 「ダメですよ。お嬢様」

 「ちょっ…。なんでよロザリー」

 「クリス様に女装させることに成功しましたでしょう? なので、約束通り、今までやらずに溜めていたお勉強をやっていただきます」

 「そんな~~~~!」

 流石ロザリー。メイド服に身を包んでいても、流石男。逃げようともがくお姉様を離すこと無く連れて行ってしまった。

 まぁ、今日は昨日気になっていた屋敷内の探検をしようと思っていたので、逆に良かったかもしれない。

 「メアリー、この屋敷の中やお庭を案内して欲しいのだけど」

 「かしこまりました。えーっと…。それでは、トイレですか? お風呂ですか? それとも私のお部屋からですか?」

 メアリーの頭の中はピンク色一色なんだね。好きがセクハラになりかけてるね。

 メアリーに案内させるの不安しかないわ。セクハラを挟まないと死んじゃう病気なのかな?

 「冗談ですよ、クリス様」

 この桃色メイドに、こっちから仕掛けてやろうかな?

 とりあえず、不安しかない屋敷探検を開始したのだった。



 この屋敷を調べて分かったことがある。

 時代設定がメチャクチャだった。何かの設定の甘いゲームの世界みたいに、中世・近世・現代がごちゃまぜになってる。

 建物や、部屋の内装とか廊下とか家具とか、レトロなアンティークっぽいのに、電気みたいのやガスコンロみたいのがあって違和感が凄い。

 魔道具とかかなって思ったけど、メアリーに何それ? と逆に聞かれてしまった。

 もういっそアンティーク調のホテルって言われた方が納得できるレベル。

 まぁ、でも不便よりいいか…。

 生肉手づかみで食べたり、糞尿窓からブチまけたり、お風呂入らないで、臭かったり虫が飛んでたりするような世界じゃなくて良かった。ご都合主義の世界観で良かった。ホント、よかった………。

 遠い目をして考え事をしていたら、メアリーがどうしたのか問うてきた。

 「うん…。この世界好きよメアリー」

 考えることをやめた。こんなに都合のいい世界なんだもの楽しまないと損よね?

 という事で、お庭のガゼボでメイドさんたちとお茶を飲みながらお話をした。

 やっぱりだけど、メイドさん達も普通に使ってるから何がおかしいのかわからないそうだ。

 それはそうと、このお屋敷のメイドさん達のメイド服って実用性より趣味性が高いよね。

 コスプレ感が少し強めのデザイン。後で、自分も着てみようと思った。



 楽しく過ごしていると、遠くから全速力でサマンサが走ってきた。ドレスなのに重さを感じさせないなんてすごい身体能力ね。

 「はぁはぁ……。ちょ、ちょっとぉ、こういう楽しそうな事はぁ……。私もぉ、呼びなさいよねぇ……。はぁはぁ……」

 そう言って自分の持っていたお茶を奪うと、一息で飲んでしまった。

 「そもそも、サマンサ様はまだお勉強の最中ではなかったでしょうか?」

 「何でロザリーまで、こっち混ざって楽しんでるのよ」

 ドスの効いた声でロザリーを睨むサマンサ。

 「いえ、クリス様にお呼ばれしたなら、こちらを優先します。当然でしょう? ねぇ?」

 「「「ねぇーーー」」」

 他のメイドさんもそれに倣う。

 「くっ……。まぁいいわ。今日はもうやる気ないから、私も参加させてもらうわね?」

 そうして、お姉様を交え、会話を楽しんだ。

 話題に上がったのは、娯楽が少ないのだそうだ。だから私で遊んでいるのかな? 

 今度何か作ってみようかな。多分、私の扱いが少し変わる気がする。



 部屋へ戻る途中、後ろから目隠しされた。

 「だーれだ?」

 「??????」

 メアリーは前を歩いていたし、サマンサは結局連れ戻されてしまったし……。

 「嘘でしょう? 分からないの? あなたのママよ?」

 振り返り見上げると、母レイチェルだった。

 随分と子供っぽい事をするのだなと、呆っと見ていた。

 「あらら……、大丈夫?」

 そのまま抱きかかえられてしまった。意外と力あるんですね。

 「奥様、どうかされましたか?」

 「んふふ……。ちょっとクリスを借りるわね」

 「え? お母様、何か用事でもあるんですか?」

 「もう……。せっかくクリスが可愛くなってくれたのに、私のところに来てくれないんだもの。だ・か・ら、私の方から来ちゃいましたーーー」

 お母様はこういうキャラなんですね。この親にしてあの姉ですか。納得。

 「あの、お母様?」

 戸惑っていると、母は花が綻ぶように微笑んだ。

 「これから、私の部屋でクリスに似合うドレスを探しましょう」

 「奥様、私手伝います!」

 「あらぁ、助かるわぁ」

 「他のメイド達にも招集をかけます」

 「そうね。結構量もあるものね。お願いできるかしら?」

 「お任せください」

 つまり、この後母主催の着せ替え大会が催されるのですね。体力持つかなぁ……。


 

 夕食時、お母様がツヤッツヤの肌とツヤッツヤの髪で嬉しそうに、自分の着せ替えを行った事を話していた。

 お姉様が参加できずにすごく悔しそうにして震えていた。

 「クリス?今夜暇かしら?」

 「ごめんなさい、お姉様。今日は流石に疲れました」

 「は?」

 何せ、数時間ぶっとしで着替えをしていたのだ。お母様曰く、まだ半分もいってないとの事。

 最初の十着くらいまではノリノリだったんだけど、五十を超えたあたりでうんざりして数えるのをやめた。流石にきついので明日は逃げよう。

 好きなものでも過剰摂取すると、途端に嫌になってくるよね。

 そう考えていたのだけれど……。

 「大丈夫よ、クリス。私も疲れているから。そうだわお母様、この後残りの衣装合わせ、私見学出来るかしら?」

 「そうねぇ……。睡眠不足はお肌の大敵だけど、逆にお肌にいいかもしれないわね。サマンサ、徹夜する覚悟はあるかしら?」

 「どこまでもついていきます。お母様」

 止めて欲しいとお父様に目で訴えたが、凄い勢いで目を逸らされた。

 お兄様は、目を瞑って聞こえてないフリをしていた。

 この家の男どもは全く頼りにならないんだから。 

 そうして、自分は二人に引きずられながら母の部屋へ連れて行かれたのだった。

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