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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第2章

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23 クリス、3バカと初めて遭遇する


           *      


 お父様が一人、別の馬車で戻ってきたときには夕食の時間になっていた。

 街で貰った(押し付けられた)食べ物は、使用人の方に笑顔で差し出した。

 「あの、街で戴いたんですが、よろしかったら使用人の皆さんで召し上がってください」

 「え? よろしいんですか? ありがとうございます」

 喜んで貰って頂けて何よりだわ。別に、いらないものを処分したわけじゃないのよ。そう、お腹いっぱいで食べきれないと思ったの。本当よ。匂いだけで胃が受け付けないんだから。


 「私、この領の事舐めてたわ。普通、あんなに発展していたら、ご飯も進化して美味しくなってると思うじゃない? 何で、退化してるのよ…」

 まぁ、働く人が増えて、料理まで手が回らなくなったとか、いい食材がないとか、料理の技法が失われたとかいろいろあるとは思うんだけどね。

 「お父様も知ってて、いっぱい食べていいって言ったに違いないわ。絶対そうよ。帰ったら、タダじゃおかないわ」

 「それに関しては全くもって全面的に同意です。お姉様。でも、今晩の夕食はどうなんでしょうかね?」

 「私は使用人用の食事があると言われてるんですが、もしかして、お二方が提供したアレなんですかね? 私、もう食べたくないんですけど」

 「はははっ。良かったじゃないメアリー。私たちは何が出るか分からないのよ。未だかつてこんなに恐怖を覚えた瞬間は無いわ。出来るなら代わってほしいわ。まだアレなら食べられるもの。うぅ……」

 あのお姉様がこんなに弱気だとは…。やっぱり食べ物って重要よね。


 コンコン、とノックの音がする。

 「サマンサ様、クリスティーヌ様、食事の準備が整いました」

 客室で、お姉様とメアリーとでこの領の食べ物の恐ろしさを語っていたら、夕食の時間だと呼ばれた。吉と出るか凶と出るか………。

 昼間に出されたお茶とお菓子を思い出すと、一切の期待はできない。

 お姉様は、断頭台に送られる囚人のように青白い顔をしていた。

 「だ、大丈夫ですよお姉様。街中と違って、公爵家の料理が酷いわけないじゃないですか」

 「そうよね、そうよね。きっとそうよね…」

 なんとか自分を鼓舞するお姉様。ちょっと痛々しい。


           *      


 食堂に案内されると、既にお父様が座って待っていた。その横にお姉様が座り、昼間のことを聞いていた。

 「お父様、無事戻ってこれたのですね。それで、どうだったんですの?」

 「あぁ、彼かい? 本当に田舎から出てきただけのようだよ」

 「ふーん」

 興味を失ったように、素っ気なくなるお姉様。

 事故を起こしたあの人のことかな。田舎から出てきたから交通のシステムが解らなかっただけじゃないのかな。


 そんな二人を見て椅子に座ろうと思ったら、後ろから声をかけられた。

 「初めまして、可憐なお嬢(おぜう)さん」

 後ろを振り返ると、三人の男性が立っていた。

 一人は、いかにも貴族然とした金髪の男性。イケメン顔だけど、モブっぽい。

 二人目は、茶に近い金髪のメガネの男性。モップみたいな髪の毛をしている。

 三人目は、白っぽい金髪で、眠そうな目をしている。


 いきなり声を掛けられて戸惑っていると、これは失礼と言った後に、自己紹介をされた。

 「私は、アンバーレイク家長男のシド。鉄鋼関係がメインだけど、機械も得意だよ」

 「私は、次男のムック。主に、生体関係の研究をしていますぞ」

 「……スケキヨ……。………いろいろできる………」

 聞いてもないのに、自分の得意分野まで言われた。私にどうしろと?


 そんな感じで見上げていると、シドとムックが興味津々に舐めるように見てくる。

 「しかし、本当に男の娘なのかい? 下手な女子より可愛いじゃないか」

 「ほほほ。本当ですな。可愛くってどうかなってしまいそうですぞ」

 「……かぁいい………」

 「ふむ、男の娘と女装男子。どっちが正しいのかねぇ」

 「むっほほほっ…。兄者、男の娘は男として生まれたけれど、女の子として育てられた子。女装男子は男であるのに、女装をするのが趣味な子のことかと思いますぞ!」

 「ふむ。そういう考え方もあるね。君はどっちなのかな?」

 そりゃあ、後者でしょうよ。別に女の子として育てられてないもの。多分。別に言う気はないけれど。


 「しかし、一体どうすれば男なのにこんなに女性らしくなるのだろう? 異世界あるあるだね」

 「本当ですぞ。アレだけ後付けしたのではないですかな? ペロペロしたいですぞ」

 「……見せて………」

 ちょっと気持ち悪いなぁ…。生理的に無理そう。三人とも私のことを研究対象としか見ていないんじゃないだろうか?


 ちょっと引きながら黙っていると、何を勘違いしたのか、ノックバックしながら痙攣し出した。もしかして、汚いものを見るような目をしていたのかな?

 「おんおん!!! 今まで、女子に何の感情も抱かなかったが、こんなに可愛い子が男だと思うと興奮するでやんすーーーーーーー!!!」

 「兄者、語尾が戻っていますぞ!」

 「おっと、失敬。私としたことが…」

 「むほほほー。しかし、こんな完璧な存在、隅から隅まで調べ尽くしたいですな」

 「………データ、ほしい………」

 あまりの気持ち悪さに、一歩後ずさると、シドとムックが土下座した。スケキヨはぼーっと見下ろすように立っている。


 「どうか、我々の新しい研究の為に遺伝子のデータを提供してくれないか!!!」

 「お願い申し上げるですぞ!!!」

 踵を返し逃げようとしたら、両肩を掴まれた。ヒッ!

 「頼む。人間相手にこんなに興味をそそられたのは初めてなんだ。痛くしないから、さぁ!!!」

 「ふひひ。最低でも、髪の毛と体液。そうですな、血液と、唾液と、精液は戴きたいですぞ!!!」

 「……じゅんび、できてる………」

 怖い怖い怖い。目が血走ってて、口から泡吹いてる。なんなら、バッタの改造人間にされそうな勢いまである。


 今ほど、初めて助けて欲しいって思ったことはないわ。

 そう強く願ったら、後ろの方から底冷えのする声が聞こえてきた。

 「お兄様、私のクリス様に一体何をしようとしているのかしら?」



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