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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第2章

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22 帰りの馬車にて


     *     *     *


 帰りの馬車にて―――――

 一体、どうしてこうなったのだろうか?


 先ほどの事故の後、このままでは街の案内は出来そうにないとのことで中止になった。

 そして、代わりの馬車を手配し、公爵家への帰路についているところだ。

 行きと同じように二台に分かれて帰っているのだが、今回も、私とソフィアとアンバーレイク公爵と公爵家メイドステラさんの四人で乗車している。


 行きと違うことといえば、ソフィアが私の左腕をずっとギュウっと両腕で掴んで離さないのだ。更に、行きは終始不愛想だったのに、今は打って変わって(まなじり)を下げニコニコしている。この違いは一体どうしたことだろう。怖い。

 少し前に、馬車の暴走から助けたくらいで、そんなに気持ちを切り替えるわけがないと思うのだけど、この豹変ぶりは少しではなく、怖い。


 しかも、馬車に乗ってからずっと、「クリス〜♪」と甘えた声で話しかけてくる。 

 それにいつの間にか、呼ばれ方がクリスになっている。

 そしてもう一つ、公爵とステラさんがずっと頭を下げていることだ。

 「…うぅ。娘を…、ソフィアを救ってくれて本当にありがとう。君は恩人だ。私にできることなら何でもする」

 「あの、もうそろそろ頭上げてくれませんか? ソフィア様も無事でしたし…」


 その言葉に左から異議を唱えられる。

 「ソフィアって呼んで。様なんてつけたら他人行儀みたいじゃないの。私そんなの嫌よ」

  惚気がめんどくさい。公爵閣下止めてくれませんかね?

 「そうだな。クリスティーヌ嬢がそこまで言うならここまでにしよう。言いすぎては逆に失礼にあたるね」

 こっちは止めてくれたようでホッとする。


 しかしながら、公爵と話をしている間もずっと頬ずりしてくるソフィア。一体どうしちゃったのこの子? もしかしてどこかで頭を打って人格でも変わってしまったんだろうか?

 その様子を公爵は咎めるでもなく、寧ろ好機と見て話を続ける。


 「クリスティーヌ嬢は、ソフィアのことは嫌いかね?」

 「えっ? いいえ、とんでもないことです。とても好ましく思います」

 「そうかそうか、それは良かった。それで、相談なんだが、ソフィアの婿になる気はないかね?」

 婿かぁ…。一応、第二王子の婚約者になってるから、二つ返事で返せないなぁ。


 「申し訳ございません。残念なことに既に第二王子殿下と婚約しておりまして」

 「えっっっっっっ!!! だって、君は男の子だろう? そんななりでも」

 「えぇ。ちょっと、いろいろと不幸が重なりまして……」

 「そうか……」

 目を瞑り、深く落胆する公爵。


 しかし、すぐに別の議題があったのか、先ほどより前のめり。いや、耳に直接話しかけるくらい近づいてきた。

 (ちょっと、疑問なんだが、君の家は普通の貴族の家だよね?)

 (え? そうですけど。何かおかしいですか?)

 (あ、いや、別にそういうわけじゃないんだが。ははは…)

 ? 一体何が言いたいんだろう?


 確かにうちの家族や使用人。はたまた領民に至るまでおかしい人で溢れているけど、別にそんなに変じゃないと思うのよね。

 逆に言えば、この領の方がおかしいわ。よくあんな不味いものを平気で食べられるんだもの。そっちのが変だと思うわ。まぁ、快いと感じるポイントが違うんでしょうけど。


 (ちなみになんだけど、怒らないで欲しいんだが、あの跳躍力や筋力はどうやっているんだい?)

 (あぁ、あれですか? あれは毎朝、お母様と訓練してるからですね。お兄様もお姉様も出来ますし、なんなら我が家の使用人は大体出来ますよ。あと、レオナルド殿下も少し出来るようになりました)

 (!!!!! そ、それは普通の訓練なのかい?)

 (そうですね。まぁ、吹き飛ばされたりするのも結構ありますが、常識の範疇だと思いますよ)

 (そ、そうか……)

 これ以上は聞いたらいけないみたいなことを言っているが、別にうちはそんなにおかしいと思わないんだけどね。


 そろそろ左腕の感覚がなくなってきたなと思った頃には、無事に公爵へ辿り着いていた。

 馬車を降りると、お父様が居ないことに気づいた。

 ははーん。きっと乗り遅れたんだな。なんて思っていたんだけど。

 「お父様なら、さっき、憲兵隊の人に事情聴取で連れて行かれたわよ」

 一応、貴族なのに何で連れて行かれるんですかね? オーラが足りないのかな?


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