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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第9章

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44 答えを聞き出す簡単な方法


           *      


 うっわぁ…どうしよう…。

 特に考えもなくここに飛び降りちゃったけど、凄い目立つわ。というか、かなり注目集めちゃってるわね。

 でもまぁ、何か起きようとしていたのを止められたのは良かったのかもしれない。

 ただ、ヴェイロンがかなり低空を飛ぶもんだから、倒れたりしている人がちらほらいる。ごめんなさい…。怪我とかしていないといいんだけど…。 

 しかし、こんな鬱屈した空気だと、気が滅入りそう。

 何とか空気に呑まれないよう気を引き締めないと…。

 そんな時、遥か空高く、上空から竜化を解いたヴェイロンがロザリーを空中で抱きかかえ、そのままの勢いで落下してきた。

 ロザリーの声にならない悲鳴とヴェイロンの風切り音が融合して、何とも恐ろしいものの襲来する音に聞こえた。

 そして、そのまま地面に着地し、濛々と土煙や砂礫が舞い上がった。それはかなりの衝撃だったようで周囲の建物に小さな穴を穿ち、窓ガラスは全て粉々に消し飛んだ。

 そんなヴェイロンの登場に臆する事無く、ただその場に優雅に佇むお姉様は流石だと思った。

 ヴェイロンはお姫様抱っこしていたロザリーを下ろすが、生まれたての子鹿の如く、立っているのもやっとだった。

 ロザリーが、どうしてあんなにヴェイロンに乗るのを嫌がるのか分かった気がするわ。

 多分、普段からああいう事をやっていたのだろう。でも、あれはヴェイロンなりの愛情表現だと思うのよね。じゃなきゃ、お姫様抱っこなんてしないもの。

 お姉様専属メイドのロザリーを取られたにも関わらず、お姉様は相変わらず眉ひとつ動かさずに微笑んでいた。それは乙女ゲームに出てくる悪役令嬢さながらに、禍々しいオーラを放っていた。

 「あら、随分と派手な登場の仕方ね。もう少し大人しく出来ないのかしら? こんなにも物を壊しちゃうなんて躾がなってないんじゃないのかしら? ねぇ、ロザリー」

 「ロザリーは関係無いわ」

 ロザリーへの問いを代わりにヴェイロンが答える。そもそもロザリーは真っ白な顔をして今にも戻してしまいそうなのを必死に堪えている。口を開いたら言葉以外のものも吐き出してしまうだろう。

 「あらあら。随分と気に入られたものね。あんなにも私を慕っていたはずなのにね?」

 「ふふん。奪っちゃってごめんねー。でもロザリーだって暴力女のところにいるより私のところにいる方が幸せよ?」

 「ふーん。どの口で言ってるのかしらね? あんな高いところから落とすような無神経なドラゴンとなんて上手くやっていけるわけなんてないでしょう?」

 「なっ! ろ…ロザリー、そんな事ないよねぇ?」

 「ほら、何も言わないのがその証拠よ」

 「違うわ。ロザリーは私の方が好きよ。サマンサなんかよりずっとね」

 「へぇ…どうやら躾が必要なようね」

 「私に勝てるの?」

 「やってみればわかるわ。かかってきなさい。ロザリーはずっと私のメイドよ!」

 ロザリーは気分が悪いのか、四つん這いになってぐったりしている。二人の会話なんて聞こえていないだろう。まさか、お姉様とヴェイロンがロザリーを取り合って争ってるなんて、あそこにいる大勢の人達は知らないでしょうね。

 そんな様子を新たに皇帝になったルスランが、肩を震わせながら見ていた。

 棺を持った人達は、一体どうしたらいいのか分からずに、その場で固まっていた。

 やれやれといった感じで振り返ったルスランは私を見上げて口を開いた。

 「お前の姉はつくずく面白い女だよ」

 それに関しては、心底同意しますわ。

 「お前もサマンサと同じように面白いんだろうなぁ」

 そう言ってルスランは、棺を持っていた黒服の人達が腰に佩いた剣を二つ抜き取った。

 黒服の人達は驚き、目を見張るが、その行動をただ見ている事しか出来なかった。

 ルスランは、祭壇の上へゆったりとした速度で登ると、二本の剣の内一本を放り投げた。

 すかさず剣の柄を取る。

 なんて危ない事を…。それに地面に落としたら剣にダメージがあるかもしれないじゃない。分かっててやっているのか知らないけれど、ルスランは暗い笑みをしていた。

 もしかして、あの聴衆が見ている中で拾わせたかったのかしら? そんな事するとは思えないけど…。

 しかし、こんな所で剣を渡してくるなんて一体……。

 「これで何をしようっていうのかしら?」

 「やはり姉妹だな。話し方も似ている」

 え? そうかしら? なんか不本意なんだけど。まぁ、でも他から見たらそうなのかしら?

 「さて、俺が何をしようとしているか分かるか?」

 「えっと…」

 ごめんなさい! 何も分からないわ。

 一応、お姉様と結託してダイアモンド王国に攻め入ろうとしているって考えていたのだけれど、何か違うのよね。

 だって、国葬とかいうけれど、警備兵もつけずに、こんな少人数で反感を買っている国民の目の前をゆっくりと歩いているんだもの。襲ってくださいって言っているようなものだわ。もし。それを分かっててやっているなら酔狂どころの話じゃないわ。

 返り討ちにする気も無かったんでしょうね。だって、この人自体は武器を持っていないんだもの。

 じゃあ…お姉様を巻き込んで一体何をしようとしていたのかしら? 本当に分からないわ。

 余程不審な目で見ていたのだろう。ルスランは肩を軽く竦めると、挑発するように剣を私へ突きつけた。

 「まぁ、ここは一つ俺と戦ってくれないだろうか?」

 つまり、勝って聞き出せってことかしら?

 そういう分かりやすのは好きだわ。いいわ。その提案に乗ってあげる。

 伊達に剣の訓練をずっと続けてきたわけじゃないのよ?

 私はきっと笑っていたんだと思う。

 ゆっくりと剣を構えると、どちらともなく駆け出し剣を振り下ろした。


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