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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第9章

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35 いざ、戦闘開始


 ヴェイロンの姿を確認すると、それぞれが距離を取って散開した。

 最前列にはグレートやメアリーなど経験豊富な人が睨みを利かせていた。

 その少し後ろでは、ルイスを含めた黒魔術研究会の人たちがブツブツと何かを唱え始めた。

 「現るは煉獄の業火。今際へ誘いし灼熱の赦しを与え給へ! ファイアーストーム!」

 「天より貫くは閃光の裁可。その身を焦がす雷鳴に貫かれろ! サンダーボルト!」

 「凍えるはこの世からあの世への誘い。深き眠りへと堕ちるがいい! アイシクルフォース!」

 「その身を切り裂くは無数の刃。罪深き躯を切りきざめ! エアリアルスラッシュ!」

 「我は望む…全てを灰燼に帰す力の奔流よ…光をも飲み込む暴虐の化身よ、噴き飛ばせ! エクスプロージョン!」

 ヴェイロンが上空を通過するのを合図に、黒魔術研究会の面々が先制攻撃とばかりに魔法を打ち込んだ。

 今までの研究の成果なのか、ゲームで見るような凄まじい魔法をお見舞いした。

 その様子をマーガレット、プロフィア、クオン、ギガが呆然と眺めていたが、魔法を打ち込まれた側のエリー達は驚き慌てふためいていた。

 何しろ初めて見るのと、初めてその威力を感じたのだから。

 最後の魔法により、平原には大きなクレーターの様な穴が空いており、土の表面が赤く輝いていた。

 

 「待って待って! ちょっと待って! 何それ聞いてない! そんなの反則よ! やり過ぎよぉ!」

 エリーが笑いながら泣くという器用な事をしながら逃げ回っていた。

 実際、拳と拳で戦う事を想定していた為、この様な魔法は想像の埒外だった。

 それも、開始と同時に打ち込まれたのだ。怯まないはずがない。

 そして、国境付近の森で待機中だった帝国軍は、ヴェイロンの巨体と先程の魔法を目撃した事により、既に指揮官にまで至る全員が戦意喪失していた。既にこの場から一目散に逃げ出したいが、命令により撤退する事も出来ず、絶望に苛まれていた。

 ただその場に蹲り、終わるのを震えながら待つしかなかった。


 南北に長い領地を持つエンジェルシリカ辺境伯領は、大きく三つに分かれていた。

 北のラリマー地区、南のスギライト地区。そして、現在交戦中の中央のチャロアイト地区。

 本来なら(ラリマー)(スギライト)にも帝国軍が在中しているのだが、その殆どを一点突破の為にここへ集中させていたのだが、既に使い物にならなくなっていた。

 そして、北と南でもヴェイロンの巨体と魔法のエフェクトが見えており、帝国軍・エンジェルシリカ辺境伯領軍共に得体の知れない恐怖に震え上がっていた。

 あの場所にいなくて良かったと、屈強な男達がそれぞれ抱き合いながら慰め合っていた。


 「ちょっとぉ! 聞いてない! こんなの聞いてないし台本と違うわよぉ!」

 「大丈夫。威力は抑えてるし。それに、折角の機会だし、こんな広い所で試せるなんてツイてるよ」

 「ふざけないでよぉ! 互いにくんずほぐれずやる話だったじゃなぁい!」

 「それは聞いてない」

 エンジェルシリカ側の土地の形状がどんどんと変わっていく中で、アンジェとメアリーがおずおずとルイスへ話しかけた。

 「あの…ルイス様?」

 「なんだい? 今いいところなんだ」

 「私達、戦えるのを楽しみにしてたんですよ!」

 「そうです。やりすぎですし、私達のいる意味がありません」

 「え…あ…そうか。そうだったね。ちょっと僕達で突っ走っちゃったね」

 「ホントですよ!」

 「お疲れでしょうから、そろそろ私達に変わってください」

 魔法の事には口を挟まずに、ただ不満だけを告げていた。

 「ごめんごめん。そうだよね。…みんなー、その辺で終わりー」

 「「「「えーっ!」」」」

 黒魔術研究会の面々が打ち足りないと不満を漏らすが、そろそろ魔力も切れる頃だから下がろうとルイスが諭した事により、戦場に吹き荒れる魔法による暴力は止んだ。

 「た…助かったぁ…」

 屈強なエンジェルシリカの男達が尻餅ついて安堵していた。

 聞いていた話と違うと、あちこちから漏れ聞こえてくるが、今度こそ拳と拳で戦えると、不満を飲み込んで立ち上がり出した。

 そして対峙するオパールレインのメイド達がそれぞれ武器を持って構えているのを見て、やっぱり話が違うじゃないかと憤るが、得体の知れない魔法よりはいいかと思い直し、それぞれが戦いのポーズを構え出した。


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