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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第9章

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34 挑発


 「ルイス様」

 「おや。来てくれたんだ」

 「もちろんですとも。折角お披露目と言う名の実験が出来るのですから。我ら黒魔術研究会はルイス様のお手伝いを喜んでいたしますよ」

 黒魔術研究会の部長が部員達を引き連れてやってきた。

 普段の扇情的な格好ではなく、ちゃんとメイド服を着ていた。尤も、スカート丈は短く胸元が空いているのだが、一応はメイド服の形をしていた。

 「私も今日という日に向けて新しい魔術を考えてきました」

 イヴがうっとりした表情で言う。今にもぶっ放してしまいそうな危なさがあったが、それは他の部員も一緒だった。

 そして、別の集団がルイスに近づき、頭を垂れた。

 彼女達はイヴ達と違って、アイドル衣装のような装飾の多いフリフリのメイド服を着ていた。

 どちらかというと、オパールレイン家のメイド服に近かった。

 「クリス様の代わりに私達が力になりますわ」

 「クリス嬢の所のメイドさん達には負けるかもしれないけど、僕達もそれなりに鍛えられたからね」

 「私達のレッスンの結果をレイチェル様にも見ていただきたかったのですが、結果で示したいと思います」

 「どれだけ強くなったのか、結果で示させてもらいます」

 「迷惑かけた分、ちゃんとお返ししますわ」

 ジル達クリスの学園での友人達一行が手伝いたいと買って出たのだ。

 クリスは最初止めたのだが、半ば強引に参戦する事を取り付けた。

 後方で支援するという話だったのだが、前線で戦う気満々である。

 他にもクリスを慕う生徒達が集まっていた。

 ちなみにソフィアは絶対にやらかしそうだったので、寮の自室でカリーナに見張りをつけさせている。

 本当にミサイルを発射させかねなかったからだ。


 「ありがとう。でも無理しないでね。これは、あくまで()()なんだから」

 「分かっていますわ」

 「それにね、うちのメイド達の方が危ないから巻き込まれないようにだけしておいてもらったらいいから」

 「え?」

 ルイスの言う事にピンとこない面々。

 「確かに、ルイス様の言う通りかも」

 「やはり、後方で支援。もしくはこっちに来てしまった方の対処に限定した方がいいかもしれませんね」

 そう言うのは同じく王国の暗部に属するクリとカスタだ。

 ちなみにクリはクリスと一緒に行くウィリアムについて行こうとしたが、ヴェイロンの巨体と空高く飛ぶという事で辞退したのだ。

 「あの人達の闘い方凄いのよ。メイドやってるのが嘘のようだもの」

 「だからとりあえず様子見して、それでイケそうならって判断でいいと思うの」

 「確かに一理あるね」

 「それにほら、聖女様も来ちゃったし」

 「僕も頑張るよ!」

 「あぁなんて可愛いのでしょう」

 テオドールとアーサーも救護班として来ていた。

 「アンタは前線で戦った方が良くない?」

 「なぜですかな?」

 「そっちのが、クリスも喜ぶんじゃない?」

 「女神様はそんな事いいませんよ」

 「チッ…」

 「今、舌打ちしました?」

 「してないわよー。きっと風の音よー」

 カスタがアーサーを煽っていた。


 それとほぼ時を同じくして、両方の陣営の対する最前面でも話し合っていた。

 「あらあら。折角つけた筋肉がしぼんちゃってるじゃない」

 「無駄に筋肉だけつければいいってもんじゃないわよ。必要な分を必要なところにつけるの。見せかけだけの筋肉なんて役に立たないわよ」

 エリーとマーガレットが今にも一触即発になりそうな雰囲気で語り合う。

 「それにね、気付いたの。身体が大きいと可愛い服着れないのよ。ソフィアお姉様にも引かれちゃったら本末転倒だもの」

 「あらぁ。残念ねぇ。折角いいお友達になれたと思ったのに。ねぇ、貴女達?」

 頬に手を当て心底残念そうにマーガレットの後ろに控える人物に目線を向ける。

 マーガレットの後ろにはプロフィアとクオンがメイド服を着て立っていた。対するエリーの後ろに控えるギガは執事服に身を包んでいたが、大きな胸がその見た目をアンバランスにしていた。

 「申し訳ないですね。正直ここにいると自分の好きな事が出来ませんでしたから」

 「そうね。プロフィアはともかくウチは耐えらんなかったし」

 「あら。私はここの生活とーっても気に入ってたわよぉ?」

 「ギガは元々汗臭い男が好きだったからだろ? ウチらの好みと全然合わないし」

 「そうですね。鍛えていても内面豆腐メンタルの人では愉しめませんでしたし」

 「「「………」」」

 三人ともそれぞれの趣味と不満をぶちまけていた。ただ、プロフィアの趣味にだけは気まずそうにしたのだった。


 「ま…まぁ、今日はそれぞれ思っている事をぶちまけなさいな。私もマーガレットちゃんと認識の違いをたしかめ合わないといけないもの」

 「そうね。その為にここに来たんだもの。それに、私も守られてるだけじゃないって事くらい教えてあげないとね」

 「ふふ…」「おほほ…」

 マーガレットとエリーが堪えきれずに笑い出す。そんな様子をグレートが楽しそうに眺めていた。

 「おやまぁ。こんな緊張感のない戦場は初めてだよ」

 「あらぁ。王国の英雄までお越しなんて嬉しいですわ」

 「ちゃーんと言いつけ通りメイド服とやらを着てきたよ。似合ってるかい?」

 「ええ。もちろんですわぁ」

 「全くおかしな事を考えるものだよ」

 「お褒めに預かり光栄ですわぁ」

 「精々楽しませてくれよ? はっはっは!」

 「おほほほほほ…」

 この場で一人、アンだけが『何で最前に来てしまったのかしら』と場違いな居心地の悪さを感じて辟易していた。

 それに、この国の騎士を総る騎士団の事実上のトップで貴族でもあるグレートが下働きのメイド服を着るなんて、怒られても仕方ないと思っていたが、本人はノリノリで着てくれたことに内心ホッとしていた。

 何でも、自宅では家事もやるのだそうだ。全く想像できないが、本人が了承しているのだ。変に突っ込む必要もないだろう。


 というより、エリーの発言で機嫌を損ねられたら困るなと、内心ビクビクしていたのだった。

 それは、戦いの内容や行く末よりも深刻だった。こっちに飛び火でもしようものなら手もつけられないかもしれないとアンは顔を青ざめながら考えていた。

 グレート本人にその気は無いのだが、戦場での獅子奮迅の戦い方で誤解しているに過ぎないのだが、勝手なイメージで怯えていたのだ。

 そんなアンを見てルイスは軽く肩に手を乗せた。

 「ひゃいっ!」

 「そろそろ始まるよ? いつも変な妄想してるくせに、何でこういう時は悪い方に考えるんだい?」

 「いや…その…空気に飲まれて…」

 「はぁ…。戦いが苦手なんだから後ろにいたら? そろそろ始まるんだから」

 「そ、そうね。そうさせてもらうわ。頭脳派は後方にいた方がいいわよね?」

 「………」

 「せめて何か言ってくれないかしら?」

 その時、後方から風を切り裂くような音が聞こえた。

 振り返り仰ぎ見ると、大きな青い巨体が空を覆い隠していた。


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