表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第9章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

531/544

33 不満


 遡る事、少し前。

 これから戦いだというのに、緊張感は一切無かった。

 「何で俺らまでメイド服着なきゃいけないんだ」

 「何でもドレスコードらしいぞ」

 「いやいや。だったら俺らは執事服とかでいーじゃん」

 オパールレイン家の男性の使用人達が、渋々メイド服に身を包んでいながらも、延々と文句を言っていた。

 「それにしても、お前らのサイズよくあったな」

 使用人の一人が庭師三人の体型を上から下まで見て呟く。

 「だよな。この短期間でよく用意出来たよ」

 「まぁ、パッツパツだけどな」

 「いや、これ伸縮性のあるシャツにフリフリ縫い付けただけだぞ」

 「そうそう。エプロンの紐の長さ足りなくてな」

 「まぁ見えりゃいいんだろ?」

 「というかさぁ、何で向こうさんはブーメランパンツ一丁と靴下だけなんだよ。おかしいだろ」

 「それな」

 あれこれと、自分達の着ている服について話し合っていると、その中の一人が、ふと思った疑問を口にした。


 「そういえば、ルイス様っていつから女装始めたんだっけ?」

 「クリス様が女装に目覚めた後だけど…いつだったかなぁ…」

 「いや、結構隠れてやっていなかったか?」

 「いや、やっぱりクリス様が可愛くなられてからだろ?」

 「というか、クリス様の場合、元から女の子だったろ?」

 「それな」

 そして、全員が自身と周りを再度見まわし溜息をついた。

 「俺らが着てもなぁ…」

 「罰ゲームだよ。ホント」

 そんな時、ルイスが呆れた顔で近づいてきた。

 「君達、何がそんなに不満なの?」

 「この格好が。ですよ」

 「何で? メイド服可愛いじゃん」

 「そりゃあ、可愛い子が着たら可愛いですよ?」

 「俺らみたいなコワモテが来たって可愛くありませんぜ」

 「寧ろ犯罪的だよな」

 「それな」

 「僕は可愛いと思うけどなぁ。最上級に可愛いよ」

 「それ、本気で言ってます?」

 コテンと小首を傾げるルイス。


 「そもそも俺ら斥候とか工作メインの裏方ですからね。戦いとかそんなに得意じゃないですよ」

 「そうそう。まぁ、ある程度は戦えますけど、アレと戦って生き残る自信がないです」

 「? 大丈夫でしょ」

 何がおかしいのか分からないといった様子のルイスに、男の使用人達はそれ以上何も言えなくなった。

 その時、準備が整ったのだろう。メイド達がニコニコしながらルイスの元へやって来た。

 「ルイス様、メイド服似合ってますよー」

 「私達、今日は頑張りますね」

 「私達戦闘職なのに、裏方ばっかりでしたから、凄く楽しみです」

 「全力で相手をぶっ潰しますねー」

 「最近食べてばっかりだったので助かりますー」

 これから戦うというのに、朗らかに話をしている。尤も内容は物騒なのだが。

 

 「うちの女どもはホント血気盛んだよ」

 「実際強いしな」

 「それな」

 「だから、俺は嫁とはケンカしないんだ。殺されるからね」

 「ウチもだよ。一回やり合ったら骨折したもん」

 「ああ、あったなそんな事」

 「ははは…。俺のこの顔の傷、妻が原因なんだよ」

 「元からじゃないのか…」

 懐かしむように話をしていたのだが、一人が身震いして振り返ると、メイド達がじーっと使用人達を見ていた。

 「俺、これが終わったら旅行行くんだ」

 「そうか…。片道切符にならない事を祈るよ」

 「怖い事言うなよ」

 「だってさぁ、今俺の背中にクナイが刺さってるんだぜ? まだ戦う前なのにさ」

 「お前、嫁の悪口めっちゃ言ってたもんな」

 「生きてたら飲み行こぜ。な?」

 相手よりもメイド達に恐怖する使用人達だった。


 「はぁ…」

 「おいどうした?」

 「いや、さ。何でこの場にクリス様いないんだろうなって思ってさ」

 「仕方ないだろ? 別任務なんだから」

 「無事に帰ってくるかな?」

 「そりゃあ、大丈夫だろ?」

 「あんま言うとフラグになるからやめろ」

 「そうだな…。うん、そうだ。俺ぁ必ず戻ってクリス様と話したいぞ」

 「俺もだよ。クリス様に庭を見てもらいたいんだ」

 「僕もまたクリス様の作るお菓子が食べたいよ」

 「じゃあ俺らも頑張んないとな」

 お通夜モードから一気に闘志をみなぎらせる使用人達。

 「それにほら、クリス様のご学友もいるんだ。無様な姿見せられねぇだろ?」

 「それな」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ