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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第9章

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32 いざ出発!


 クリスはオパールレイン家の庭にいた。

 屋敷のメイドや使用人達は既にエンジェルシリカ辺境伯領へ行っており、屋敷に残るのは身重のキャロルと子供達だけだ。

 「まぁ、うちは守るから安心して行ってきてね」

 「はい」

 「お土産期待してるわね」

 「ルビー帝国にお土産らしいお土産なんてありますか?」

 「……頑張って探してきて。あ、あの人形が何回も重なって入ってるのはいらないからね」

 「は…はぁ…」

 「ま、無事に帰ってきてくれたらいいから。じゃ、ヴェイロンお願いね」

 「任せて!」

 ヴェイロンは竜の形態になっていた。

 人形態の時はお姉様そっくりなのに、お姉様と違って素直でいい子なのよねぇ。

 そんなヴェイロンが竜形態で庭にいる為、子供達が全員庭に出ていた。

 やっぱりドラゴンって人気なのね。

 みんなの使ってる袋とかケースとかみんなドラゴンが描かれているし。

 人形態の時は一緒になって遊んでるけど、流石にドラゴンになってる時は大人しくしていた。

 爪の垢を煎じてお姉様に飲ませてあけだいわ。

 でも、ドラゴンの爪のカケラとか高く売れそうよね。

 そういえば、剥がれたヴェイロンの鱗だけど…なにかに使えないかしら? かなりの量溜まって倉庫を圧迫してるのよね。


 「じゃあ行きましょうか」

 「本当に行くんですか?」

 ただ一人難色を示しているのは、ヴェイロンのお気に入りロザリーだ。

 「当たり前でしょう? ヴェイロンはあなたが手綱を握らないと飛ばないんだから」

 「いやいや、クリス様なら乗せてもらえますから」

 「うん。クリスならいつでも乗せるよ」

 「ほらぁ!」

 どうしてうちのメイドはこうなのよ。

 「でも、他の人乗せる時はロザリーも乗らないと飛ばないよ」

 「だそうよ」

 「ぐっ…ぐぐ…」

 何をそんなに嫌がっているのだろうか。

 「ほら、時間ないから行くわよ」

 「いや…ちょっ…」

 渋るロザリーを無理矢理ヴェイロンに乗せる。

 「じゃあ、行ってくるわね」

 ヴェイロンが予備動作も無く垂直に真上へ飛び上がる。戦闘機みたいだな。

 初めて乗ったけれど、この重量と風の勢いが半端ないわね。

 十数秒で屋敷の上空へと上がった。

 「わぁ!」

 こうして見ると凄い絶景だ。

 「こりゃあすげぇや」

 今回一緒に帝国へ向かうと着いてきたウィリアム。

 ヴェイロンもウィリアムを特に嫌がる事無く乗せたのは驚いたわ。

 「乗せてくれてありがとな」

 「あなたは美味しそうな匂いがするからね。特別よ」

 「え、何? 俺食われんの?」

 「いや…多分料理作るからじゃない?」

 「え、そうなの? パクって一口でいかれない?」

 ウィリアムが居心地悪そうにしていると、ヴェイロンが不機嫌な声を漏らす。

 「失礼ね。私はちゃんと調理してあるのしか食べないわよ!」

 「だって」

 「あー良かったぁ。なんか安心したわ」

 「でも、マズイの作ったら私もどうするか分からないわね」

 何で態々そんな事言うのよ。ウィリアムが途端に表情が固くなる。

 「大丈夫よ。リアムが料理上手なのは、私が保証するから」

 「そ…そうだよな…はは…」

 帝国に着く前に戦意喪失されたら困るわよ。

 まぁ、別に戦うかどうかは現時点では分からないけれど。


 「そういえば、リアムは剣を持ってきたのね」

 「ああ。ばーちゃんにクリスを守りなって言って投げて渡されたよ」

 「そうなんだ。それ、かなりの業物じゃない?」

 「だろうな。今までこれで負けたことなんて無いって言ってたし」

 じゃあ、何かあっても大丈夫かしらね。

 私はナイフとかクナイとかスカートの中に隠せるのしか持ってきてないわ。

 そういえば、飛び上がってからロザリーがずっと静かね。

 まぁ、元から寡黙な方ではあるけれど…。それにしたって静かすぎないかしら?

 「ロザリーはちゃんと武器持ってきたの?」

 「………へ?」

 いつものロザリーなら、「当たり前じゃないですか。クリス様はお忘れになったんですか? お貸ししましょうか? パンツも貸しますよ?」なんて返すかと思ったけど、心ここに在らずって感じで、声もか細い。

 ロザリーは首だけこっちを向くと、真っ白い顔をしていた。

 それはもう、ストレスマッハの時のお父様くらい白い。

 もしかして…。

 「もしかしてロザリー高い所苦手なの?」

 「そ…そんな事は…はい…」

 「え、だって教会の時は普通に跳んで登ったり降りたりしたじゃない」

 「…あれは、落ちても死なない高さなので。今は少しでも気を許したらそのまま落下して死にます」

 まぁ、言わんとする事は分からないでもないけど、結構安定してるのよね。

 風だって真正面から当たらないし、上手く逃げていると感じるもの。

 「もう。ロザリーは心配者ね。私が落とす訳ないでしょ!」

 「………」

 あ、これ一回なんかあったのかも…。

 そんな事を考えていたら、下の方で爆音がした。

 「え、何?」

 「うおっ! なんだなんだ?」

 二人で下を覗くと、どうやら国境付近。エンジェルシリカ領の上に来ていたようだ。

 そして、だだっ広い平原で大勢の人達が集まっていた。

 確認するまでもなく、エリー達と、うちのメイドさん達だろう。

 だが、そんな事よりも、さっきから大きな音を轟かせながら、雷やら氷やら爆炎が巻き起こっている方が気になった。


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