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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第9章

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31 高貴な二人の暇つぶし


 「今頃クリス達は何してるのかしらね」

 「そりゃあ勿論、私を助けに向かってるに決まってるわよ」

 「昨日の今日で、そんな連絡行く訳ないでしょ。手紙も送ってないし、電波も届かないし」

 「あ、そっか」

 「そもそも、エテルナ様だけを助けになんて来る訳ないでしょ? 大好きな私を迎えに来るの。間違えないで欲しいわ」

 「レイチェルも大概よね」

 皇城の客室で二人が暇そうに話していた。

 やる事は全部他のメイド達がやってしまい、手持ち無沙汰になってしまったのだ。

 「ボードゲームとかないの?」

 「カードゲームならあるわよ」

 「じゃあ、それやりましょうよ」

 「いいけど、二人だとなぁ…」

 「別にいいじゃないのよ。で、二人だと何ができるの?」

 「スピードとか七並べとかかしら。二人でババ抜きしても楽しくないでしょ?」

 「二人がババア?」

 「言ってないわよそんな事。ババ抜きよ」

 「あ、あぁ…そうよね。やだわ。暇すぎて耳がおかしくなったみたい」

 レイチェルは内心、老化では? と、思ってしまったが、そんな事口にしようものならめんどくさい事になるので、口には出さずに飲み込んだ。

 「何か言いたそうね?」

 「いや、暇だなって…」

 「……」

 エテルナが疑うような目で見てきたが、レイチェルは涼しい顔をしていた。

 実際、部屋の暖房は弱く、涼しいというより寒かった。

 他のメイド達は更なる情報収集や工作活動をしている。

 二人も暇だからやろうとしたのだが、見た目的にそういった活動をするとバレそうなので、ここで待機していて下さいと、すげなく言われたのだ。


 ぐーっと腕を伸ばしてストレッチするレイチェル。

 「何かマジックとか出来ないの?」

 「サマンサが得意なのよね」

 「じゃあ行く?」

 「それ本気で言ってる?」

 緊張感のない会話が続く。

 「しっかし、こうして座ってるだけってのも退屈よね」

 「そうですね」

 「あっ!」

 「どうかしましたか?」

 何か思いついたのか、途端に花を綻ばせるような笑顔になる。

 「キュアキュアショーの新しいフォーム考えててー、折角だしここで練習しない?」

 「ドタドタやってて怒られないかしら?」

 「監視も見張もいないのよ。へーきへーき」

 見た目通り精神年齢も低いなとレイチェルは思いながらも、自分も暇だった為にその提案にのる事にした。

 「それで? 新しいフォームって?」

 「まぁ、見てなさい。こうよ」

 予想以上にアクロバティックな動きをするエテルナ。年齢を考えるとどこか痛めないか不安になる。

 「どうかしら?」

 「いいんじゃないですか? スカートがくるくる広がって生き物の様に動いてる感じしますし」

 「そう? じゃあレイチェルもやりましょう」

 息一つ上がっていないのは流石だと思いながらも、レイチェルも一緒になって動き回る。

 「ふふ…。やるじゃない」

 「エテルナ様もよくもまぁこんなに考えるものです」

 「ふふん。やっぱり観に来てくれる人を楽しませるのってワクワクするじゃない?」

 「ええ」

 「だから期待に応えないとって思うのよね」

 動かにキレと激しさが増していく。

 最後にエテルナが高く飛んで着地すると、カーペットごと床が抜けた。

 「あっ…」「あ…」

 そのままの体制で固まる二人。

 「な、何よ。私、そんな重くないわよ」

 「……いや、えっと…、あんな高く飛んだからでは?」

 「普通そんなんで床抜ける?」

 「うちじゃないんですよ?」

 「あ…そっか…」

 エテルナは恐る恐る足を抜く。

 結構深い穴が開いてるように見える。

 二人はカーペットを持ち上げて確認すると、予想通りの穴が出来ていたが、横方向に更に抜けそうだなと感じた。

 もう少し捲って確認すると、床には無数の凹凸が出来ていた。いつ穴が開いてもおかしくなかっただろう。

 カーペットを敷けば歩く分には気づかれないだろうが、穴だけはどうしようもなかった。

 床材が穴の中に落ちてしまって取る事ができない。というか、怪我をする恐れがある。

 二人は顔を見合わせると、カーペットを敷き直し、穴の上にテーブルを移動させた。

 入口入ってすぐの場所にテーブルが置いてある不自然感は拭えず、二人の表情は固まったままだ。

 「折角動いて、身体ポカポカになったのに、冷や汗かいて寒くなったわ」

 「じゃあ、今度はこっち側でやればいいのでは?」

 「また穴空いたらどうするのよ」

 「飛ばないやつやりましょう」

 「ええ…」

 何でそんなに飛び跳ねたがるんだと思いながらもレイチェルはエテルナに付き合った。


 結局、ドタバタ音がして不審に思った衛兵が駆けつけるまでに何個も穴を空けてしまっていた。

 「あら…何かしら?」

 「こちらで、大きな音が断続的に聴こえた為確認に来た」

 「あらそう? きっと大きなネズミが走ってるのね」

 「厨房を確認した方がいいわよ。食材食べられたら大変よ?」

 「確かに…」

 そう言って踵を返そうとした衛兵が、ふと疑問を口にした。

 「あなた方はどうしてこんな入り口近くで椅子に座っているのですか?」

 「…ちょっと、寒くて」

 「え、えぇ…。そうなのよ」

 「暖炉は向こう側ですよ?」

 「あそこだと暑すぎるの」

 「そうそう」

 不審に思いながらも、それ以上の追求はせずに衛兵達は去っていった。

 「危なかったわね」

 「そうですね」

 「これ、弁償代請求されるかしら?」

 「そしたら、エテルナ様が払って下さいね」

 「何でよ。レイチェルも空けたじゃない」

 「私は一つしか空けてません」

 「くっ…」

 その後、報告に来たメイド達が天井から降りるたびに穴にひっかかったのだった。


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