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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第9章

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27 地元の水のがいい


 男と女で別々の部屋へ案内された。

 ここの部屋へ案内されるまで、やたらと遠回りをさせられた。

 牢屋ではなく広めの客室である為、軟禁もしくは幽閉が近いだろう。

 「あらあら。ライちゃんレオちゃんとは離されちゃったわね」

 「まぁ仕方ないわね」

 一応、皇城の客室ではあるのだろうが、椅子やカーテン、そしてカーペットに至るまでどれもこれもなんとも言えないくらい地味で色褪せていた。

 テーブルやチェストは色斑があり、ところどころささくれていた。

 エテルナとレイチェルは嘆息して、手近な椅子に座る。

 ギシギシと音がするので、二人して顔を顰めた。

 「べ、別に体重が増えたとかじゃないわよ」

 「知ってますわよ。というか、見栄を張る部分ですらこれでは…」

 「うちの国民のがよっぽどいい暮らししてるわよね」

 「よっぽどというか、かなりですね。まぁ、地域差はありますが…」

 「それよりも、凄く乾燥してるわね。喉乾かない?」

 「そうですね。確かにイガイガしますね」

 その瞬間、どここらかメイド達が現れた。

 オパールレイン家のメイド、フィジー、ヒナナ、マーブル。そして、レオナルドの護衛として付いてきた王妃様付きのシャリオとディンゴの五人だ。


 「さっすが仕事が早いわねぇ」

 「それでどうだったの?」

 「事態は急を要するかと」

 ヒナナがどこからか取り出したお茶のセットを用いてお茶を淹れ始めた。

 すかさず、マーブルがテーブルのセッティングを行い、フィジーが焼き菓子をテーブルに乗せる。

 そして最後にヒナナがお茶を差し出した。

 シャリオがレポートをエテルナへ手渡す。

 そんな様子についていけずにただ呆然としているディンゴ。

 「私、ここまで出来ないです」

 「そのうち自然と出来るようになるわよ」

 レポートを渡したシャリオがディンゴの頭を撫でながら答える。

 「まぁ、私でもオパールレインのようには動けないけどね」

 「やっぱりクリスのところは凄いのね…」

 あっという間にお茶の用意が出来上がった。


 レポートを読んで顔を顰めるエテルナとレイチェル。

 「もう何をやっても焼け石に水ね」

 「こんなのどうしろと…」

 レポートをテーブルへ置いてお茶のカップに手を伸ばす。

 「それにしてもこっちの水は硬いわね」

 「まぁ、仕方ないわね」

 「ところで、こっちはどうだったの?」

 メイド達は一緒に皇城へ入らず、別行動をしていた。既に皇城の隅から隅まで調べ尽くしている。

 そして、その指揮をしていた人物がエテルナとレイチェルの間に座りお茶を飲んでいた。

 「お水も王国から持って来れば良かったですね」

 「知っていたなら持ってきてよ、シグマ」

 「言われてませんので」

 「まぁいいわ。それで分かったの?」

 「私がどれだけこの国に入り込んでたとお思いですか? といってもここだけは警備が厳重で中々に入る事が出来なかったのですが、今はガバガバですね。誰かさんのあそこみたいに」

 「減給」

 「……。まぁ、冗談はさておき、今のここはホントに手薄ですね。簡単に分かりました。今までなんだったのかってくらいに」

 「それで?」

 「ええ。あの時攫われたレオン様とルスラン様は同一人物ですね。ただ、ずっと幽閉されていた訳で、帝国に思い入れは皆無だと思いますが、皇帝になろうとは全くもって理由が分かりません。直接聞く事も出来ませんし、もっと早く気づけば良かったのですが…」

 一瞬重い空気になり、場が静まる。


 「ま、まぁその辺はサマンサちゃんが上手くやってくれるでしょう」

 「出来ますかね?」

 「やってもらわないと困るわね。まぁ、サマンサも満更ではないからどう転ぶか分からない怖さがあるのだけどね」

 「それと、もう一つ報告があります」

 「何かしら?」

 「皇帝夫妻は既に亡くなってますが、レオン様が王国へ訪れる前に埋葬されてます」

 「やっぱり?」

 「ええ。世間一般には、まだ病に伏せっているという話が流布されてますが…」

 「昨日亡くなったという話になってたわね」

 「では、今日明日には動き出しますね。一応、武器は持ってきましたが、必要ですか?」

 「流石シグマだわ。一緒に入ってたら没収されてたわね」

 「どう転ぶか分かりませんが、恐らく何か考えがあるのでしょう。民衆の限界も近いですからね」

 「いや、もう遅いみたいです」

 そう言うのはラムダで、いつからそこにいたのか分からなかった。

 部屋の隅からゆっくりと歩いてくる。

 「どういう事?」

 「エンジェルシリカの領軍が反乱を起こしました。国境の森(リーチフォレスト)では、ルビー帝国軍が控えています」

 「そう…」

 エテルナは大して気にした様子も無く、風でガタガタ軋む窓を眺めていた。


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