表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第9章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

522/540

24 クリスのメイド


 「それにしても、お父様がりんごを生のまま食べるなんて珍しいわね」

 「そんな事ないだろう」

 「いいえ。いつもはすぐにお菓子に使っちゃうじゃない」

 「え? ブライアン様はお菓子をお作りになるんですか?」

 意外。私もびっくりだわ。

 「ん? ああ。下手の横好きってやつさ」

 「嘘よ。うちで経営してる食べ物屋さんは全部お父様が監修してるもの。しかもかなり厳しく」

 そういえば、王都の街ではたい焼き、今川焼、たこ焼きとか売ってるものね。どれも美味しかったわ。まるで前世の日本のものと変わらないくらい。


 「ちなみに、どんなものを作られるんですか?」

 「焼き菓子だよ」

 「りんごのパウンドケーキは確かに絶品よね。あとは、タルトタタンとかアップルパイとか」

 「りんごの…パウンド…ケーキ…」

 「そうよー。あれしっとりジューシーで美味しいのよ。悔しいけどね」

 「悔しいは余計だよ」

 ソフィアの方を見ると、何か表情が固い。

 「ソフィアどうかした?」

 「あ、いや…なんでもないのよ」

 後ろでメアリーが黙ってりんごをシャクシャク食べている音が凄く響く。

 「そうそう。クリス嬢には話があってね。アン、すまないが、席を外してもらえるかな?」

 「…分かったわ」

 「あ、じゃあ私も…」

 ソフィアが、ここの病院の経営をしているらしい。併設したカフェが結構本格的だとアンさんを伴って出て行った。


 「あ、メアリーも…」

 そう言うと、メアリーはずいっと私の横に立つ。

 「いいえ。大丈夫です。私はクリス様のメイドですから。ここにいます」

 「いや、でも…」

 途中で言葉に詰まる。メアリーの目は決意に満ちた表情をしていた。

 そして、ブライアンさんもニコニコと捉えどころのない笑顔のまま了承する。

 「構わないよ」

 「そ、そうですか? じゃあ…」

 メアリーの方を再度見ると、普段とは打って変わって落ち着いたメイドらしい表情をしていた。

 「お久しぶりです。そう言った方が宜しかったでしょうか? クリストファー様」

 え? 何を言ってるのメアリー…。

 「そうだね。久しぶりでいいと思うよ」

 私だけが分かっていないのだろうか?

 「しかし、よく僕がそうだと気づいたね」

 「ええ。クリス様から前世の話とかを伺っておりました。そして、その知識をもとにいろいろな事をなされました。それは、ソフィア様も同様に。そして、クリストファー様。いいえ、ブライアン様、あなたもそれに近しい事をされておりましたので」

 いつものメアリーと違って丁寧に話す。

 そして、ブライアンさんは、くっくっと笑って肩をすくめた。

 「よく見てるじゃないか」

 「ええ。私はクリス様のメイドですから」

 「そうか…。じゃあ、話は早いな。どこから話そうか…」

 ブライアンさんは、一度軽く上を見た後、私の方をじっと見る。


 「では、初めましてと言った方がいいかね?」

 「えっと…」

 「初めまして。九歳までのクリストファー。そして、二十七歳以降の栗栖照だよ」

 え? いきなりそんな事言われても頭が追いつかないわ。

 「つまり…入れ替わりって事ですか?」

 「どうだろうねぇ。目覚めたらおっさんだったからね。びっくりしたよ。まぁ、それまでの記憶が流れ込んできた。いや、前世と言った方がいいのか、九歳までの記憶が流れ込んできた感じかな。特に苦労とかは無かったよ」

 「そ、そうですか…」

 私の時は、そういったものは全く無かったのよね。

 というか、おっさんは失礼じゃないかしら?

 私、結構美容とか気を使っていたもの。

 だが、ブライアンさんは私が思っていた事を察したらしい。

 「年相応だと思うがね」

 それから、栗栖照になって以降の事をいろいろ語って教えてくれた。

 「それにしても君はあんなに大量の衣装よく集めたねぇ」

 「ま、まぁ女装が趣味なもので。というか、衣装は…」

 気にする所はそこじゃないんだけど、どうしても気になって。

 「ああ、あれね。私にその趣味はないからね。メアリーもよく知っているだろう?」

 「ええ」

 もしかして、捨てられちゃったかな…。給料ほぼ全部突っ込んでたんだけどなぁ…。

 「流石に私もあの量を捨てるのは忍びないし、何より世間の目が気になってねぇ。ネットで売りにだしたよ。いやぁ。まさか四桁万円になるとは流石に驚いたよ」

 まぁ、捨てられるよりいいか。

 「あそこにあった服は、今の方がいっぱい着ているんじゃないかね?」

 まぁ、確かに。ほぼほぼ再現したわね。

 「ちなみになんですけど、何が一番高かったですか?」

 「あのやたら豪奢な赤いウェディングドレス…だったかな?」

 特徴と値段を聞いた。惜しいけど仕方ない。でもよく五倍の値段で売れたわね。あれ、手に入れるの大変だったのよね。出ないし、高いし、サイズ合わないわで。

 というか、普通に結婚して娘三人って凄いわね。私には出来そうにないわ。

 そういえば、今も子沢山だったわね。

 奥さんの名前も聞いた事あるのよね。敦子……イデアツコ……イデア……イデアさん……。まさかね。

 しかし、結局この世界に戻ってきて…。ん?

 時間軸おかしい気がする。

 クリストファーが、生まれる前に転生したって事?

 まぁ、その辺は深く考えても分からないわよね。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ