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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第9章

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22 なんでそんな話に


 私の部屋へ入ると、ただ呆然と立ち尽くすアンさん。

 普段なら、キャーキャー言いながらあちこち物色したり、私の衣類の匂いを嗅ぎ出しただろう。

 しかし、そんな事はなく、今にも崩れ落ちそうな程膝が震えていた。

 普段のアンさんを知っているメアリーも同席したが、アンさんの様子に戸惑っている。

 「あの…。そちらにおかけになってください」

 「ありがと…」

 そのまま素直に座るのを見て、いよいよこれは何かあったに違いないと半ば確信した。

 半分しか信じてないのは、まだ演技の可能性があるからだ。


 「どうしたんですか?」

 「父が怪我をして戻ってきたわ」

 「え?」

 声には出さなかったが、メアリーも驚いたようだ。

 「あの人ね、今までそういったヘマした事ないのよ」

 そもそも組織の長が、自ら潜入してるのも珍しいけどね。

 「いつも飄々と物事を解決してくるのに、今回は何があったのかお腹を刺されていて…」

 呟くようにかき消えそうな声音で語るアンさんの手は震えていた。

 「何があったか教えてくれなくて…」

 アンさんに伝えないなんて、そんな事あり得るのだろうか?


 「今、父はアンバーレイクの病院にいるわ」

 「王都じゃないんですか?」

 「王都の病院じゃ無理よ。あそこまでの傷を治せるのはアンバーレイク以外では無理よ。昨日緊急搬送されたの」

 「そんなに…」

 まぁ、あそこの領はもうチートみたいなもんだしね。何も問題なく治せるだろう。

 「それで、まぁ…お察しの通り、無事に手術も終わってるわ」

 「それは、なによりで…」

 空気が重い。

 メアリーも目を瞑ったままで、何も口出ししないのが不気味だが、ついにその口を開いた。

 「一体何があったんです?」

 「分からないわ。でも、クリスちゃんを呼ぶようにとしか言われてなくて」

 「え? 私?」

 「そうよ、いつもの憎たらしい顔であなたを呼ぶように言われたの。もしかして、私と婚約の話かしら?」

 あっ…いつものアンさんだわ。

 暗い顔してるから、何だと思ったら、やっぱりロクでもない事言い出したわ。

 「ダメです。そんな理由では行かせられません」

 そうよメアリー。もっと言ってやりなさい。

 「正妻は私です。愛人なら考えないでもないですが」

 「なんでそんな話になるのよ」

 「そうよ。私が正妻よ。あんたはペットで充分よ」

 「なっ! 私がどれだけ長い事クリス様といたか知らないんですか?」

 「知らないわよそんなの」

 ああもう。どうやって収拾つけるのよこれ。

 メアリーとアンさんが取っ組み合いを始めたけど、止める気なんてさらさらないわ。

 「待ちなさい! 正妻はこの私よ」

 話を盗み聞きしていたのだろうか? ソフィアが勢いよく部屋に入ってきたと思ったら、私の腕を掴んで引き寄せた。

 「「あっ!」」

 「外までバカな話が聞こえてたわよ」

 「……」

 アンさんはまたぞろ顔を暗くして、メアリーは腕組みをするとそっぽを向いてしまった。

 もしかして、自分を鼓舞する為に態とあんな事言ったのかしら?

 「まぁいいわ。その…アンさんのお父様でしたっけ? 一応挨拶(釘を刺)しといた方がいいわよね」

 最近のソフィアは昔のお姉様みたいに執着心が強くて困るわ。あ、昔からか。


 と言う事で、私はソフィアとメアリーを連れてブライアンさんのいるアンバーレイクの病院へ向かう事になった。

 もしかして、ブライアンさんの病室にあるお菓子や果物目当てなんて事ないわよね?

 そこまで意地汚くないわよね?

 腐っても公爵令嬢なんだから、ちゃんとして欲しいわ。

 部屋を出て、その事を話そうとリビングに行くと、あんなにあったはずの食べ物は既に無かった。

 食べるの早いのはともかく、よくあの量を食べたわね。

 「待ってください。私の分がありませんよ!」

 メアリーが自分の分がない事に声を張り上げる。

 「もうメアリー。いいから。あっちで何か食べさせてあげるから、ほら、行くわよ」

 「ガルルルル…」と、狂犬のように唸り声を上げるメアリーを引っ張りながら寮を出たのだった。


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