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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第9章

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13 旅の話


 「ねぇ、リアム?」

 「ん? どうした?」

 「こんなに買ってきてお金大丈夫なの?」

 まぁ、ウィリアムも貴族だから、このくらいの量買っても大したことないんだろうけど、やっぱり前世一般人の感覚が抜けきらない私からしたら、とんでもない額だと思う。

 だが、ウィリアムはなんの事はないと得意げな顔をする。

 「気にすんな」

 「でも…」

 「俺、船の中でバイトしてたから、余裕だぞ? かなり稼げたしな」

 「え、バイト?」

 「ああ。シェフの補佐的な感じで入ったんだけど、途中からは料理ガンガン作ってたぞ。かなり修行になった」

 「そ、そうなんだ」


 貴族なのにバイトというのは置いといて、船旅中ずっと厨房でバイトしてたのか。すごいわね。

 「これもクリス師匠の元で修行したお陰だな。そのお陰で普通よりいい給料貰ったし。なんなら、このまま就職してくれとまで言われたぜ」

 ウィリアムの料理にかける情熱は凄いわね。

 というか、師匠って…。

 「あと、現地でもいろいろ教わってきたけど、大体オパールレイン(ここ)で食ったことあるのばっかりだったな。だけど現地のは結構人選ぶな。使う材料とか香辛料とか合わないのあるしな」

 まぁ、食べやすいようにアレンジしてあるからね。

 「お陰で初めて行った気がしなかったよ。ははは」

 それはそれで複雑ね。


 そんな感じでウィリアムと料理の話をしていたら、レオナルドが神妙な顔で参加してきた。

 「私もびっくりですよ」

 「レオ様どうしたんですか?」

 「あんな凄い船というのが、そもそも驚きなんですが、まぁ今更なのでそれは置いときますが…」

 確かにこの時代だとオーバースペックもいいところよね。

 お隣のサファイア帝国なんてガレオン船みたいのだし、その他だと未だにキャラベル船みたいのだしね。

 というか、普通にクルーズ船とかタンカーとかがあるウチがおかしいのよ。

 ソフィアのところなんて、浪漫で戦艦作ってるし、なんならイージス艦みたいなやつも既に何隻も竣工してるし…。独立でもする気なのかしら?


 「それで、レオ様は何が気になったんです?」

 「はい。やっぱり知らない土地に行く訳じゃないですか。こう言ったらアレですけど、現地の蛮族に槍でも投げられるのかな? なーんて思ってたんですけど、着いたら、港は整備されてるし、接岸したら現地の人に歓迎されるし」

 「良かったじゃないですか。石投げられるよりはいいんじゃないですか?」

 「いや、めちゃくちゃ歓迎されたぞ? というか、ソフィアのニーサン達を見るなり駆け寄って握手してたしな」

 「ありましたね。通訳も買って出てくれましたし。というかですね、全部の港にアンバーレイク家の旗が掲げられていたんですが…」

 「な。アンバーレイク家って、それぞれの国に担当者とかいるんかな? 全部の国で別々の人が対応してたな」


 それを聞いて、王妃様とお土産談義をしていたソフィアが話に加わった。

 「そりゃあ、貿易するのに協定結んでるし」

 「一体どれだけの国に触手を伸ばしてるんですか」

 「人聞きの悪い言い方するわね。別に侵略も植民地化もしてないわよ。ちゃんと対等に貿易してるわよ。ただ、他の国からちょっかい出されないようにしてるだけで」

 「物は言いようですね」

 「信じてないわね…。というか、ナヴァラトナとか南東の半島エリアとかだとオパールレインの旗もあったでしょ?」

 「ああ…ありましたね」

 「あったな」

 「だからうちの国でも美味しいもの食べられるんでしょ?」

 「クリスに感謝だな」

 「そうですね」

 「私にも感謝しなさいよ」

 「勿論してますよ」

 「ああ。流石ソフィアだ。サスソフィ」

 「言いづらそうだし、気に入らないから二度と言わなくていいわ」

 「そうですか。まぁそのお陰でいろいろ国交を結べましたしね」


 それを聞いて王妃様も扇子を持ったまま話に加わる。王妃様ホント扇子好きですね。

 「あら。よくやったわね」

 「うちの官僚達がアンバーレイクには足を向けて寝られないって言ってましたよ」

 ここでもそういう言い回しあるんだ。

 そんな感じでいろいろな国の思い出話を語っていたが、ウィリアムとレオナルドがとある国の話題になってからは真面目な顔になった。

 「そういえば、最後の翡翠国ですけど…」

 「ああ、あそこな」

 「え、何? そこが何かあるの?」

 「なんというか…その…着ている服とか文化とか違うんですけど、なんかクリスやソフィアのところと雰囲気が似ているというか…」

 「確かにな。飯も一番美味かったな」

 「なんと言ってもご飯美味しかったですね」

 「クリスに箸の使い方教わってて良かったよ。随分と上手ですねって言われたし」

 「そりゃあ、六年くらい使ってたら慣れるよな」

 「あのアーサーが移住しようか真剣に悩んでたしな」

 へぇー。あのアーサーがねぇ…。

 「熱心に何か話し合ってたしな」

 「そうですね。分厚い本やらフィギュアやら渡してましたし、布教活動ですかね?」

 やっぱりやってるじゃないアイツ。

 「それで、近いうちに是非ともクリスに会いたいと、各国の方々が言ってましたよ」

 「うぐぅ…」

 頭を抱えるわこんなの。一体どこまで私の恥を喧伝すれば気が済むのかしらね。


 「近いうちに代表者も来るそうですよ母上」

 「あら。それは忙しくなるわね」

 まぁ、そっちは私には関係ないわね。

 「じゃあ、そういう事も含めて、今後の事を話し合いましょうか」

 王妃様が扇子をパチンと閉じると、レオナルドにニッコリとした笑顔で問いかけた。

 「今後…の事ですか?」

 「そうよー。レオちゃんが戻ってきたから、やっとお披露目できるもの」

 「お披露目? 私とクリスの…ですか?」

 ガクッと期待外れの答えに戸惑う王妃様。

 レオナルド以外のみんなも苦笑いだ。

 「違うわ。ルキちゃんの婚約のお披露目よ」

 「ああ…。ルキナとテオドールが婚約したんでしたっけ」

 「そ。帰って来る日に併せて招待状出してあるからね」

 「え? は…早くないですか?」

 「寧ろ遅いくらいよ。ちゃんと祝福してあげなさいね」

 「はい」


 という事で、来週の週末に王城の広い方の中庭で婚約お披露目のパーティーが催される事になった。

 まぁ、招待状自体届いてたらしいけど、家に届いてて知らなかったとはこの場では、口が裂けても言えなかった。

 「ねぇクリス、招待状なんて届いてた?」

 何で聞いちゃうのよ…。

 「ちゃんとお家の方に出してるわよソフィアちゃん」

 「あ、そうなんですねー」

 よく王妃様怒らないよね。ホントできた人だわ。


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