09 迎えに行こう②
「勝手に先に行くなよ。一人で行動するなって何回も言っただろ?」
「いやぁ、すいません。どうしてもクリスの顔が見たくなりまして」
「じゃあしょうがないな」
軽く嘆息したウィリアムは、これまた男に磨きがかかったんじゃないだろうか?
「よぉ。久しぶり…」
「あ…うん。久しぶり」
「待ってください。私の時よりいい雰囲気なんですが」
「逆に言うと、そういう雰囲気を出せないレオナルドが悪いのよ」
「!?」
ソフィアの言葉に驚き項垂れ、そしてウィリアムを睨むという忙しい事をやっていた。
しかし、そんなウィリアムは意に介することなく話を続ける。
「クリスに料理を教わってて良かったよ。行った国々で凄く勉強になったからな」
「そう。それは良かったわね。じゃあ後でいろいろお話とか聞かせてね」
「おう。本場の料理振舞ってやるからな」
「ふふ…。楽しみだわ」
「あ、私も食べたい」
「おう。いいぞ」
ウィリアムは爽やかな笑顔でソフィアにも笑いかける。
しかし、一人納得いかないのがレオナルド。
「待ってください。リアムは現地で代わる代わる女の子と遊んでいたんですよ」
「お前、それは誤解だし、言い方ってものがあるだろ?」
「だから、こんな不潔なリアムは放っておいて、私と旅の話をしましょう」
レオナルドってこんな狭量だったかしら?
「ちっさい男ねぇ…」
「なっ!? 私は事実を言っているだけで…」
「はいはい。レオちゃんそこまでにしておきましょうね」
王妃様が手を引いて引き離す。流石に目に余ったのだろう。
大勢の人達がある場所で一人女々しい事いってたら、ねぇ…。
ただ、レオナルドが目立っていたのか他の人達の目印になったらしい。
「ただいま」
「お! イヴ嬢おかえり」
「おかえりなさいませイヴ様」
魔術の探究の為にレオナルドへ付いていったイヴ様だけど、なんでそんな踊り子みたいな格好しているの?
黒をベースとして、金色の装飾が施されているんだけど、ストラップレスのブラのようなものと、腰まである深いスリットの入った布。
スカートというか、ただ長い布よね。後は全体的に覆われているけれど、私好みの光沢があるわね。
そして、意味のわからないくらいぼてっとしたアームカバーと、フェイスヴェール。
ジャラジャラ音がしそうなほどの装飾品を着けていた。
ちょっと私もその衣装が欲しいわ。
「それにしてもすごいねその衣装」
「極めた結果ここに行き着いたの」
何を極めたらそうなるんですかね?
「安心して。みんなの分も買ってきたから」
「えっ?」「いや…」「……」
「え? 本当? ありがとう。すっごく気になってたの」
ジル様、シェルミー様、ソフィアは難色を示すが、私はこういう衣装大好きなのよね。
というか、あんなに際どい衣装着て演じてるのに、何をそんなに嫌がるんだろうか?
お腹出てるからかな? ソフィアならまぁ、わかるんだけど、他の二人はそういう衣装も着てるじゃない。
いや、ジル様は、チラチラ見てるから興味はあるのね。
じゃあシェルミー様はあれかな? 女性感強いのがアレなのかな?
「やっぱりクリス様は話わかるね。いっぱい仕入れたからね。後で衣装合わせしよう?」
「ありがとう。楽しみだわ」
後で仕入れ先とか確認して、取引の準備しないとね。
「なんか俺の時より喜んでないか?」
「確かに」
「当たり前でしょ? こんな素敵な服ときめかない訳ないでしょ?」
「お、おう…」
「ま、まぁクリスは何着ても似合いますが…」
「複雑だな」
「そうですね」
まぁ、男はあんまり服に興味示さないものね。
そして、そんなイヴ様と同じ格好をした人が後ろにも。
「そういえば、エリーも同じ格好してるのね…」
待って。エリーじゃない。
エリーみたいに筋肉すごいけど、浅黒い肌じゃなくて、小麦色の肌だわ。
「え? ま…マーガレット……?」
「そうよぉ。間違えたでしょお?」
マーガレットの後ろから本物が出てきた。
二人して踊り子の衣装で踊り始める。
「…マーガレット……」
ソフィアも名前を呟いて呆然としていた。
「ね、ねぇ…。マーガレットはどうしてそんな事になってるの?」
「そんな事って、ひどいわね。ねぇエリー?」
「そうよぉ。筋肉は何でも解決出来るのよ? これほど万能なものはないわぁ」
だからって、そんなエリーそっくりになるまで鍛えなくても。
エリーと違って首から上はマーガレットのままだから違和感マックスだわ。
「でもそんな二人に助けられたのも事実だからね」
「そうだな。エリーの言う通り筋肉で解決出来たところも多かったな」
一体どんな未開の地に行ったのよ…。




