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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第9章

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05 お断りします


 結局お腹すいたと言い出したソフィアとランチを食べに街中へ行こうとしたところで、レベッカ先生に見つかってしまった。

 「あ、ごきげんよう…」

 「ごきげんよう。私達急いでおりますので、ごめんあそばせ。あーほっほっほっほ…」

 「待ちなさい」

 レベッカ先生が両手を広げて立ち塞がる。

 その横を気にせず通り抜けようとしたソフィアを、小さな身体で必死に抱きつくように捕まえる。

 ソフィアが悪役令嬢みたいな笑い方するから捕まったんだよ。

 「えぇ…なんですか?」

 「今更だけど、よく教師相手にそんなめんどくさそうって態度出すわね…」

 「だってレベッカ先生めんどくさいじゃないですか」

 私が思っていた事をなんの躊躇いもなくソフィアが言い切った。

 確かに。シグマさんといい、婚期逃してる系女子ってめんどくさいしね。

 「お…女はちょっとめんどくさい方がいいのよ」

 「婚期が伸びても?」

 「ぐはぁっ!」

 ちょっと! レベッカ先生血を吐いたわよ!

 蹲りながらも笑みを絶やさないレベッカ先生。

 「それで、どんなご用ですか?」

 話が進まなそうなので、とりあえず聞いてみる。

 別に聞いたからやるなんて事ないものね。

 「副学園長もいるから来てくれる?」

 手の甲で口元の血を拭うレベッカ先生。男らしいな。

 あんまり長くならないといいな。

 長くなると、ソフィアの空腹メーターに比例して不機嫌メーターも上がるから。


 レベッカ先生に連れられ会議室へ入る。

 先生方もわかっているらしい。

 それぞれの席の前には軽食やお菓子が置いてあった。

 勿論、ソフィアの前にはうず高く積まれていた。

 これにはソフィアもニッコリ…していない。

 「なんかバカにされてる気がする」

 そんな事ないと思うわよ。

 不満を言いながらも、どかっと座って食べ始めるソフィア。

 「サマンサ嬢で勉強したからね」

 「なんか申し訳ないです」

 身内の恥で大変恐縮だわ。

 強いて言えば、お姉様と違って暴れない事かしらね。

 しっかし、結構いるわね。

 もしかして長引きそうな感じかしら?

 副学園長に学年主任と十人の先生がいた。

 みんな腕組んだり、眉間に皺をよせたりしていた。

 「で? 何で呼ばれたの?」

 ソフィア…。せめて食べ切ってからしゃべってよ…。

 学年主任のデランジェ先生が口を開く。

 「本当は一年の学年主任になるパーソンズ先生が決めるはずなんだけど、今回はちょっとイレギュラーで、我々にも影響でそうなので二年と三年の先生方にも集まってもらったんだ」

 なるほどねぇ。だからか。三年のピロウズ先生もいるのは…。

 パーソンズ先生が申し訳無さそうに苦笑いしている。

 「ねぇ、私に関係あるの?」

 「あるとも。今回は他国からの生徒が多いからね」

 留学じゃなくて普通に入学なんだ…。

 チラッとソフィアを見ると、咀嚼が止まったまま真顔になっていた。

 えぇ…。私めんどくさいの嫌なんだけど。


 目の前の入学者リストを見ると、結構いるなぁ。

 五大国以外からもいるね。

 まぁ、それでも全部合わせて五十人と言ったところかな? 大体一クラス強だわ。

 この中に二作目の攻略対象がいるのね…。

 でも、名前聞いてないから分からないのよね。

 「(ソフィア、その攻略対象ってどれ?)」

 だが、ソフィアの顔は曇ったままだ。

 「(何、どしたの?)」

 「(分かんない…)」

 「(へ?)」

 「(お父さんに全部丸投げしてたから、名前とかうろ覚えなんだけど…)」

 とんでもないわね。

 「(分かるだけでもいいわよ?)」

 「(これ)」

 ソフィアが指差したところに記載された名前はどう見ても女子生徒の名前だった。

 「(レッドベリルの人だね)」

 「(いやでもほら、よくある苗字だし。設定だと平民になってたから別の違う人かもしれないし)」

 結局リストを見ても思い出せないソフィアは椅子に深く凭れかかって目を瞑ってしまった。


 その後、九月の入学式に向けていろいろと打ち合わせをしていった。

 結局呼ばれた理由は分からないまま、提案したり、代替案を出したりしながら一つ一つ決めていった。

 そしてある程度話が纏まった頃、先生達が皆顔を見合わせて頷いたり、顎をさすったりしていた。

 嫌な予感がする…。

 チラッとソフィアを見ると、顎を少し上げて目を細めていた。

 冷静に物事を見ているようだ。

 レベッカ先生が代表してニッコリ笑顔で話題を切り出した。

 「実はね…」

 「お断りします」

 「まだ何も言ってないじゃない!」

 レベッカ先生が口を開いた瞬間に断りを入れる。

 こういうのは時間が勝負なのよ。

 言われたら断り辛くなるしね。

 「生徒会長と副会長やってくれない?」

 「何で言ったし!」

 何で言った! 何で言った!

 「ちょ…そんなクオン先生みたいな言い方して…って、しょうがないじゃない? 本来なら去年決めるはずだったのよ?」

 レベッカ先生が言うには、本来去年に生徒会長の選挙があるはずだったのだが、誰も立候補せず、推薦も無かった為、お姉様が卒業までやっていたのだった。

 そんなお姉様も後任を決めずに卒業してしまい、入学式までに決めないといけない状況らしい。

 レオナルドにって声もあったらしいが、当の本人は今海外に行ってしまっている。

 九月の入学式には絶対に間に合わない。

 それに、本人にやる気があるなら去年の段階で手を挙げていたはずだしね。

 そこで懐柔しやすそうという事で、今日この場でなし崩し的に断れない雰囲気を作っていったのだそうだ。

 私としては、そんなめんどくさい事やりたくないのよね。

 お兄様とお姉様がやったから私もなんて都合がよすぎじゃない?

 他の先生達も頭を下げたりしているが、答えは変わらない。

 だが、代案はあるわ。

 「もう一度言いますが、お断りします」

 「そんなぁ…」

 「でも、代わりにとっても適任な人がいます」

 ソフィアの方を見ると、ニヤッと口角を上げた。

 どうやら、ソフィアにも分かったらしい。


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