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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第8章

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15 二代目誕生?


 「あらぁ。いいじゃない。なかなか似合ってるわよ」

 「そ、そうでじょうか? 王妃様が普段やられている方は髪の毛長いですが…」

 「あれねぇ、元々ショートカットの予定だったんだけど、エテルナ様が髪短いを嫌がってああなったのよ。だから、本来はこっちが正解」

 「そ、そうなんですか…」

 王妃様の演じるキュアマーダーの黒い衣装に着替え、いろいろポーズをとるシェルミー様。

 それを見て絶賛するお母様。

 以前は黒い方をお母様がやっていた気もするけど、気分で変えたりしてるんだろうか?


 私はというと、メイドさん達やジル様とその様子を見ている。

 シェルミー様がいろいろポーズをとる度にジル様がうずうずしている。混ざりたくて仕方ないという感じだ。

 「じゃあ少し合わせてみましょうか」

 お母様がニッコリしながらジル様を手招きする。

 ジル様はウキウキしながら、シェルミー様の横にすぐに移動した。

 「じゃあ決めポーズとってみましょうか」

 「「はい!」」

 二人ともとっても楽しそうにやっている。

 それにしても凄いな。

 シェルミー様は元から演技力高いから、即興でいろんな事やってもそれなりに様になって見える。ガチで練習したらその役を任されるんじゃなかろうか?

 対するジル様は、そのキャラクターへの愛が深いのか、その特性や癖を見事に再現している。粗がところどころあるけれど、やっぱりこれも練習したら任されるかもしれない。

 まぁ、二人がどの程度本気かはわからないけれど、凄く楽しそうにはやっている。


 「あ、でも…流石に父にはバレてしまいますね」

 憂いを帯びた表情をするシェルミー様。

 影を纏っても絵になるなぁ。

 「あら。それなら髪の毛を染め…るのは難しいから、ウィッグ被ったらいいんじゃないかしら? アマベル?」

 「はい。ちゃんと用意してますよー」

 衣装担当のアマベルさんが、もちろんと言った顔で、それっぽいウィッグを取り出してお母様へ手渡した。

 アマベルさんが、シェルミー様の髪の毛を纏めてネットで覆っていく。

 お母様はそのウィッグを慣れた手つきで、乗せてセットした。

 明るいオレンジ色に近い茶髪のウィッグを被ったシェルミー様は、どこからどう見てもキュアマーダーにしか見えなかった。


 「ほぅ…」

 どこからともなくため息が漏れた。

 改めてポーズを取るシェルミー様を見て一言お母様が呟いた。

 「二代目の誕生ね」

 「えっ!? そんな僕なんてまだまだ…」

 「いいえ。あなたには素質があるわ。磨けば更に輝くわ」

 「そ、そうですかぁ?」

 満更でもない顔で照れるシェルミー様。普段はもっと堂々と「そうだろう」とか言うのに…意外。

 「あの…私も…変装したいのですが…」

 おずおずと手を挙げるジル様。

 「もちろんよぉ。アマベル?」

 「はい。こちらに」

 先程と同じ感じで濃いめの青いウィッグを被せていく。

 「リボンつけた方がかわいい…か」

 ポニーテールにして小物のリボンをつけていく。

 「あら。素敵」

 「ジル嬢も似合ってるね」

 「あ、ありがとうございますですわ…」

 めちゃくちゃ顔を真っ赤にしてもじもじしている。普段のジル様を知っていると、誰? って気持ちになる。


 しかしそこで、腕組み指を顎につけて考え出すお母様。

 「眉毛は太い方がいいわね」

 「えっ?」

 「メイクでやってみましょ。エペティス?」

 「はいどうぞ」

 同じく衣装担当のエペティスさんが、メイク道具を持ってきた。

 「このくらいかしらぁ…あら! いいわ! 最高! ちょっとポーズとってもらっていいかしら?」

 二人は頷き、決め顔で決めポーズを取ると、メイドさん達から一斉に拍手が起こった。

 口元に両手を当てて頽れるお母様。

 「あなた達最高よ。二代目を安心して任せられるわ」

 その言葉にシェルミー様は頬をかき、ジル様は軽く俯きながら照れている。


 敢えて突っ込まなかったけれど、これアレよね? こんな完成度高くして怒られないかしら?

 眦を指で拭いながら立ち上がるお母様。

 「じゃあ次はクリスの番ね」

 「えっ!?」

 アマベルさんとエペティスさんが、ピンクの衣装と金色のウィッグを持ってニコニコしていた。

 後ろからは逃げられないようメイドさん達が囲んでいく。

 もしかして嵌められた?

 「やっぱり新キャラって必要だと思うの」

 「思うの」じゃないわよ。そういうのは別の方にお願いしてくださいな。


 これはもうやるまで解放してもらえないかもしれないと思ったところで、ノックの音がした。

 「チッ…いいところなのに」

 伯爵夫人ともあろう人が舌打ちするなんて…って思ったけど、お母様なら普通の事か。

 「はぁ…はい。どうぞ」

 不機嫌を隠そうともせずに応えるお母様。

 「お取り込み中失礼します」

 入ってきたのはイノさんだった。

 「あら、イノどうしたの?」

 「旦那様がクリス様をお呼びになっておりまして…」

 「どうせまたロクでもない事でしょ?」

 お母様の言葉に同意するように頷く。

 しかし、お父様の呼び出しに応じるか、ここで新たにコスプレするか悩ましいところだわ。

 「仕方ないわね。私もいくわ」

 「えっ!?」

 「なによクリス、その反応は」

 「いえ、このまま続けるものだと」

 「もう少し楽しんでいたいけど、クリス一人で行かせると、どうでもいい事あの人いっぱい押し付けるでしょう?」

 「ははは…」

 流石夫婦ですね。分かっていらっしゃる。

 「じゃあ、シェルミーちゃんに、ジルちゃんごめんね。ちょっと抜けるわね」

 「お気遣いなく」

 「充分に楽しめましたわ」

 そう言う二人はイベント終了後みたいな感じで手を振っていた。

 お母様も私の手を引いて、もう片方の腕を持ち上げ、ブンブン音が鳴るくらい腕を振って応える。

 もう習慣が染み付いてるのね。流石ですお母様…。


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