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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第2章
48/431

15 ソフィア事故に遭う

 

 そんな事を考えていると、お父様と公爵の話が終わったのか、こっちへと歩いくる。

 「いやあ、待たせて悪いね。ちょっと、話し込んでしまったよ」

 「いえ、こちらも有意義な時間を過ごしておりましたわ」

 あのフリーズ状態が一瞬で元に戻ったわ。答えは出てないけど…。

 しかし、お姉様もちゃんとした言葉遣い出来るんだよなぁ…。毎回見ても慣れないや。

 

 そんな時、遠くの方から、幾つかの悲鳴と怒声が上がった。

 「「きゃあああああああああああ!!!!」」

 「「うわぁあああああああああ!!!!」」

 「逃げろ! 逃げろぉおおお!」

 「危ないぞ! 離れろぉおおお!」

 「誰か! 止めろぉおおおおお!!!」

 「そっち行ったぞ!」

 そして、馬の走る音と悲鳴にも似た、軋み壊れそうな程激しい車輪の音がこっちへと向かって近づいてきていた。


 音のなる方に居た人たちは、逃げ惑い、混乱し、転んだりしてる人がいる。

 「「ヒヒーーーーーーーン!!!」」

 二頭の馬が、そのままの勢いで公爵家の馬車に突っ込む。


 その馬車の前には何が起こったのか分からず、立ちすくんだソフィアが居た。

 「ソ、ソフィアーーーーー!!!!!」

 公爵が叫ぶが、公爵が今から走っても間に合わない。

 メイドさんが庇う様にソフィアをその場で抱きしめる。

 馬に蹴飛ばされた馬車が勢いよくソフィアの上へと倒れそうになる。

 恐怖で声も出ないソフィアと、必死に抱きしめるメイドさん。


           *      


 鳴き声が聞こえた辺りで私とお姉様は駆け出していた。

 「クリスはあの娘の方をお願いね」

 「はい」

 短く、了承の意を示す。


 お姉様がメイドさんを抱きかかえ、瞬時に上空へ飛ぶ。あまりにも一瞬の出来事だった。体にかかる重力が凄そうよね。

 私も、ソフィアを抱え、上へ二、三回飛び、お姉様と同時に公爵の前へ着地する。

 飛んだ直後に馬車がけたたましい音を立てながら倒れ、そのまま横へ壊れながら滑っていく。

 残骸は街路樹の枝を折り、街灯を薙ぎ倒していた。石畳は抉れ、吹っ飛んだ石が建物の外壁やガラスに突き刺さっている。よほど凄まじい衝撃だったようだ。

 あれをモロに食らっていたら、きっと助からなかっただろう。


 図らずもソフィアをお姫様抱っこをしてしまった。

 そっと、ソフィアを下ろすと、先に下ろされたメイドさんがソフィアを抱きしめる

 「お嬢様ご無事でっ!!!」

 「ステラも無事でよかったわ…」

 いやあ、無事でよかったね。あと少し遅かったら、大変な事になっていたよ。

 公爵も抱きしめようとしたんだけど、メイドさんの方が早かった。二人とも恐怖から抜け出したあまり、互いに慰めるように抱きしめ合う。

 手持ち無沙汰になった公爵はまるで指揮者のように腕を上下左右に振っている。


 それはそうと、メアリーはあの武装で良かったのかもしれない。

 暴れていた馬を二頭とも止めて、宥めている。

 「どうどうどう……」

 お父様もいつの間にか、公爵家の馬車の馬を宥めている。

 ロープで繋がってたはずだけど、そのロープは綺麗に切れている。いやぁ、お馬さんも無事で良かった良かった。


 「すんません。すんません。おらさ、この街さ、はずめてなもんで、たいへんもうすわけねぇ、もうすわけねぇ…」

 あの暴走馬車の行商人のような男が訛り口調で土下座で謝っている。

 公爵家の馬車は破壊され原型を留めていない。破片が歩道全体を覆っている。

 車道側では、行商人の荷馬車の残骸と商品と思しきものが散乱している。

 街の憲兵隊の様な人たちが十数人駆けつけ、辺りの整理を行っている。

 暫くは、この辺は封鎖でしょうね。


 ソフィアは暫く呆然としていた。まぁ、あんな事があったら、そうなるよね。

 そして、暫くしてキッと涙目でこちらを睨むように見てきた。

 「あ、ごめんね。緊急事態だったから、咄嗟に抱きかかえちゃって…。もう、触ったりしないから、ごめんね」

 そっと、離れようとすると、スカートを引っ張られる感覚がした。

 振り返り見ると、ちょんとスカートが摘まれていた。

 「…ゃ、待って、違うの……。あ、その………。ありがと……。助けて、くれて……ありがと………」

 「どういたしまして。無事でよかったわ」

 その言葉を聞けただけで私は満足です。


 その後、ソフィアが何か言いかけようとしていたが、さっきの一部始終を見ていた聴衆に囲まれてしまった。

 「おう、嬢ちゃん凄いな!」

 「かっこ良かったわ。まるでヒーローのようね」

 「これって何かの撮影なの? え? 違うの?」

 「最近、馬車の誤操縦多くね?」

 「女の子なのに凄いわ! で、これ何のパフォーマンス? え? 事故?」

 「これ、うちの店のだけど食べてくれ」

 「お、こっちのも食べてくれ」

 「余りもんで申し訳ねえが貰ってくれ!」

 等々、称賛の言葉と共に大量の食べ物を貰ってしまった。

 一応貴族なんだけど、こんなフランクな感じでいいのかしら?


 お姉様の方を見ると、お姉様も大量に食べ物を渡されていた。でも、あのお姉様が引きつった笑みを浮かべている。あの食べ物は要らなかったんでしょうね。

 どうしようこれ……。お姉様にもメアリーにも押し付けられそうにない。

 袋から覗く中身が食べ物に見えないんだけど。

 魚のぶつ切りに乳白色のゼリー……。魚の頭の出たパイのようなもの。湯葉のような色のラグビーボールのようなもの。大量の白っぽい塊に黒っぽいお菓子。あとは、大量の生の人参。何で?


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