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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第8章

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09 新たな来訪者


 翌日。学園へ行く前のように賑やかな朝食を終え、今日は何をしようかなと屋敷内を当てもなく歩く。

 そうそう、昨日帰ってから静かだったメアリーだが、どうやらお腹を壊して寝込んでいたらしい。

 あのメアリーがねぇ…と思うと同時に、夏だし食べ合わせが悪かったのかもしれない。

 でもおんなじ様に食べてるお姉様やソフィアが何ともないって事は、きっと何か隠したものか拾ったものを食べたに違いない。

 メアリーには、何で看病に来ないんだと半泣きで言われたけど、そんな事になっている事は知らなかったし、そもそも何で私が看病しないといけないのかしら。


 まぁ、そんなメアリーも一晩で復活して私の後ろについてまわっている。

 「昨日一日無駄にしたので、ソフィア様がおやつを食べている今こそ私とラブラブしましょう」

 「暑いからヤダ」

 暑いのに何が楽しくて汗だくになる様な事しないといけないのよ。

 メアリーが抱きつきせがんでくるのを躱し躱しやり過ごしていたら、後ろから声が掛けられた。

 キスしようとするメアリーの顔を手でやりながら、内容を聞こうとするが、どうして貴女まで羨ましそうな顔してるのよ。

 「で、何?」

 「クリス様のご学友の方が訪れてます」


 ビシューさんに案内されるまま、玄関まで行く。

 なぜかさも当然といった感じで、ソフィアも私の横にいた。

 「げぇっ」

 「その言い方はないんじゃないかなソフィア嬢」

 夏でも王子様オーラを絶賛振り撒き中のシェルミー様。やっぱり休暇中も男装してるんですね?

 まぁ、私も女装してるから、別に文句とかある訳じゃないんだけどね。

 「そうですわ。そもそもどうして当然の様にクリス様の横をキープしてるんですの?」

 夏でも暑苦しい縦ロールをみょんみょんさせながら大人なファッションに身を包むのはジル様だ。

 ちなみにイヴ様はレオナルドに付いて海外へ行ってしまったのでいない。

 「それにしても凄いね。汽車というものに初めて乗ったけど、馬車とは比べものにならないね」

 あれ、今まで乗った事なかったのかな?

 「シェルミー様は基本馬に乗っての移動ですものね」

 なるほどね。馬車にすら乗らないのか。ますます王子様感あるな。生憎とここには眠り姫はいないんだけどね。

 「それと、あの馬のない馬車」

 「あぁ、車ですか」

 「そうそうそれ。あれは是非ともうちにも欲しい。快適だし早いし」

 「それは私も思いましたわ」

 「では、販売等につきましてはソフィアにどうぞ」

 「えっ! クリス嬢のところで売ってないのかい?」

 「製造販売アフターサービス全てアンバーレイク領でやってますね」

 腕組みドヤ顔で自信満々にしているソフィア。

 「あら欲しいの? どーしよっかなー」

 ホント、他の侯爵家三人娘にはキツく当たるわね。


 そんな時、新たな来客が訪れた。

 「ソフィア姉様〜!!」

 甘ったるい、でもどこか怖さも含んだ声で駆け寄ってくるのはソフィアの妹メリーちゃん。

 「メリーどうしてここに…」

 「ソフィア姉様ったら、すぐに愛人のところへ行ってしまうんですもの。だから私もソフィア姉様と遊ぶ為に来ました」

 「そ、そう…」

 いいじゃない。メリーちゃんの相手ちゃんとしてあげなさいよ。

 「へぇ…ソフィア嬢にはこんなかわいい妹さんがいるんだね」

 「ホントですわ。怖いくらいかわいいですわ。まるでお人形さんみたい」

 「えへへ…」

 満更でもない様子のメリーちゃんと、苦笑いのソフィア。

 そこで、シェルミー様が何か思いついた様な顔をする。

 「やぁ、メリー嬢。僕はシェルミー。ストーンローゼス公爵家の五女だよ。よろしくね」

 「私は、ジル。ガーネットクロウ公爵家の三女ですわ」

 それを聞いて慌てて、カーテシーをするメリーちゃん。

 「ああ、そんな畏まらなくていいよ」

 「そ、そうですか?」

 シェルミー様を見て、ほぅっと顔を朱らめるメリーちゃん。おっとこれは…。

 そんなメリーちゃんを見て、王子様スマイルで話しかけるシェルミー様。

 「ちょっとシェルミーやめなさいよ…」

 嫌な予感がしたのかソフィアがやんわり制止する。

 「実はね、ソフィア嬢が僕達に車を売ってくれないって言うんだ」

 「まぁ。それは酷いですわね。ソフィア姉様、いじわるしないで売ってあげたらいいじゃないですか」

 「うっ…わ、分かったわよ…。前向きに考えとくわ」

 「ソフィア姉様?」

 「あのねメリー、ただ売っても道路とか整備しないと使えないでしょ」

 「あっ! そうですね」

 「だからその辺も詳しく聞いてからじゃないと売れないの。何でもかんでも売って使えなかったら意味がないでしょ?」

 ソフィアの言う事は正しい。悪徳商人とか使えないと分かっても、高く売りつけて知らんぷりしちゃうものね。

 「ソフィア嬢…そうならそうと言ってくれないと」

 「だって暑くてめんどくさかったんだもの…」

 嘘だね。ソフィアの場合、ホントにいじわるで売ってあげないつもりだったんじゃないかな。

 だってジル様は笑顔だけど、冷ややかに見ているし。絶対気付いてるわよ。


 「そういえば、メリー一人で来たの?」

 「いくら治安が良くても一人での外出は危ないのです」

 目が泳ぐソフィア。ほらぁ。メリーちゃんのがしっかりしてるじゃない。

 見覚えのあるハリウッド女優みたいなメリーちゃんお付きのメイド、グリさんとグラさんが、大きなバッグを持ってやって来た。

 「「お久しぶりでございます」」

 二人が礼をして控える。ミスユ◯バースみたいな格好している。自由だね。

 あれ、後ろからまだ誰か来ているみたいだ。

 やたらとヨロヨロしてるけど大丈夫かな? というか、あんな感じの人知り合いにいたかな?

 その人達が時間をかけてやっと到着すると、それは女装したスケキヨさんと、ソフィア付きのメイドプレオさんだった。

 「きゃあ! かわいい!」

 思わずかけ寄り手を握ってしまう。気温が暑いからか、それとも着ている服が暑いからかは分からないが、今にも倒れそうだ。

 「わぁ、大変。中涼しくしてるからどうぞ」

 「……うん……」

 「僕達がこんだけおめかししてるのに、クリス嬢は女装した男の子にしか興味がないのかな?」

 「折角勇気を出して、色気のある格好をしてきたのにこれではあんまりですわ」

 別にそういうつもりじゃないのよ? ただへばってかわいそうだなと思っただけで。

 そういえば静かだなと思って振り返ると、ソフィアは顔を真っ赤にして不機嫌そうな顔をしていた。


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