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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第7章

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36 エピローグ


     *     *     *


 学園は長期の夏季休暇。世間一般で言うところの夏休みに入った。

 私達は今オパールレイン領にある港、オパルス港に集まっていた。

 「本当に行くんですね」

 「えぇ」


 あの後、自由参加のパーティでの茶番とはいえ、一度婚約破棄を宣言してしまった為、公式的には婚約破棄保留の状態となっている。

 まぁつまり今までと変わらないという事。

 ただ、あの後レオナルドがやっぱり私と結婚したいと言うので、男同士では結婚も子作りも出来ませんよ? と言うと眉間にしわを寄せて一人の世界に入ってしまった。

 そして、その翌日に私の性別を変える方法を探しに行くと言い出したのだ。

 一体どうするのだろう? と思っていたら、他の国に薬や魔術などの方法が無いか探しに行きたいのだと。

 そして、その場に丁度居合わせたソフィアが快く船を貸すと言い出したのだ。


 そして今日、レオナルドは暫く旅に出るので見送りに来たのだ。

 勿論レオナルド人で行くわけでは無い。

 外交も兼ねて、王城の騎士団や官僚の人達も乗り込む。

 それに…。

 「クリス、強くなって戻ってくるからな」

 「海外にいい男がいるんでしょ。ワクワクしちゃうわ」

 「あんた国際問題になるわよ?」

 「海外の植物は非常に興味深いわ」

 ウィリアム、エリー、マーガレット、イヴ様も一緒についていくようだ。

 あんなにソフィアが好きだと言っていたマーガレットが何故? とも思ったが、本人曰く海外旅行してみたかったからとの事。どこまで本当かは分からないが、半分くらいは本当なんだろう。

 彼ら以外にも乗り込む人は多い。うちのメイドさん達も十数人乗り込んでいる。

 他にもギガさんやグレート様。

 あ、シドさんやムックさんもいるね。ソフィアはなぜか気づかないフリしてるけど。それにしてもやたらと荷物が多いなぁ…。

 そしてレオナルド付きのメイドのディンゴちゃんやディオンさん達。マーガレット付きのメイド四人娘も行くそうだ。

 かなりの大所帯だが、これただ単に海外旅行なのでは?

 だって目の前にあるのはクイーンエリザベスと同じくらいの大きさの豪華客船なんだもの。

 『クイーンエテルナ号』という名前が付いているが、作ったのはうちとソフィアのところの合弁会社、エヴァーグリーン造船で作った船で王妃様は一切出資してない。

 まぁ、レオナルドが乗るというから急遽名称変更したんだろうね。

 最初はソフィアがふざけて『クリス・ソフィアラブラブ号』とかいう意味の分からない名前だったし。

 まぁ対外的にも丁度いいかもね。

 ただ、一つ懸念がある。

 そうこいつだ。

 「アーサーは行かなくていいんじゃないかしら?」

 「そんな…。私も外での見聞を広げたいのです」

 広めたいの間違いではなくて?

 「いい? 宗教を広めない事、変な説教はしない事、あと、アーサーは大丈夫だと思うけど搾取はしない事。いいわね?」

 「私を何だと思っているんですか…」

 「大丈夫よクリス。私が見張ってるから」

 ロベルタさんがいるなら大丈夫かな。

 まぁ、ロベルタさんも胸を大きくする野望があるらしいから、何かしでかさないか不安ではあるのだけれど…。

 というか、一般のお客さんもかなり乗船するのね。これは本当にただの観光で終わりそう。

 あそこでロベルタさんにバレないように変装している女神様もいる。

 ここで話しかけるとバレてしまうだろうから黙っていてあげましょう。きっと海外旅行行くノリでいるんでしょうし。


 「ではクリス行ってきますね」

 「えぇ。お気をつけて」

 レオナルドは手を振って船の方へ歩いて行った。


 そして船は出港し、上の欄干部分で乗客が手を振っているので、私達も手を振る。

 「ねぇソフィア」

 「何かしら?」

 「あれってどのくらいで戻ってくるの?」

 「そうね。世界一周だから、だいたい二〜三ヶ月くらいかな」

 「え、そんなもんで行けるの?」

 「じっくり寄港する場合は半年とかあるけど、学校もあるしもう少し早くなるかもね。速度も出るから寄るだけなら一、二ヶ月くらいで戻ってくるんじゃない?」

 「そうなんだ。てっきり年単位だと思ってたよ」

 「そんな訳ないでしょ。最新鋭の船だし、もう海外の航路とか調査済みよ?」

 ホントソフィアのところは凄いね。もうあと空と宇宙くらいしかないんじゃないかな?

 というか、いつの間にそんな海外にまで手を広げていたのよ…。


 船が見えなくなると、港にいた人達は去って行った。

 「じゃあ私達も帰りましょうか」

 「待って」

 振り返ると真剣な表情のソフィア。

 「どうしたの?」

 「クリスは鈍感だから、はっきり言うわね。好きよ」

 「? うん。私も好きよ?」

 ソフィアは私の両頬に手を当て、顔を近づける。

 「違うわ。愛してるって意味。何回も言っているのにどうして伝わらないのかしら?」

 そう言われて初めて気づいた。

 「えっ! 好きってもしかしてそういう…」

 「そうよ。ずっと言ってきてるじゃない。私はクリスが好き。大好きよ」

 「そ…そうなんだ…ありがと………」

 初めてソフィアの好意に気づき、今までの事が思い出されると、一気に顔が熱くなった。

 「何でそんなに鈍感だったのよ。でもまぁ、分かってくれて何よりだわ」

 「ご…ごめん…。少し頭が混乱してるから、ちょっと待ってくれる?」

 「いいわよ。今まで散々待ったんですもの。少しくらい待つわ」

 今まで周りから言われていた事を思い出すと、今まで自分がどれだけ鈍感だったのか分かる。

 これはもう恥ずかしいを通り越して死にたくなる気分だわ。

 そっと顔を上げるとソフィアがニヤッと笑うと私の口唇にキスをした。

 レオナルドとソフィアからの好意に一体どうすればいいのか。答えはまだ出そうにないけれどいつか答えを出さないといけないと思ったのだった。


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