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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第7章

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32 レオナルドとのデート①


 文化祭三日目。

 この日も一般の参加者が来場しており、昨日の評判を聞きつけたのか、朝からかなりの人数が来場していた。

 そして、ソフィアやウィリアムからのお誘いをやんわりとお断りして、昨日レオナルドから指定された場所へ行く。

 一年A組の教室だ。

 みんなそれぞれの場所へ行ってしまったため、今現在教室は誰もいないのだ。

 「やぁクリス。お待ちしていましたよ」

 それは見事な王子様スマイルでキラキラを振りまきながら立っていた。

 黙ってればかっこいいのになぁと改めて思うが、乙女ゲーの攻略対象なんだから当たり前かと、今更ながらに思い出す。だって、口を開くと残念イケメンなんだもの。

 そんなレオナルドはスチルかな? と思うほどの仕草をしてみせた。

 トゥンクと何かトキメク音がした。

 もう。私が女だったら、速攻でオチてるわよ?

 「お待たせしました」

 「いえいえ。では行きましょうか」

 「はい」

 今日一日はレオナルドと最後のデートだ。

 レオナルドが予め面白そうなところをピックアップしてきたようなので、お任せして回ることにした。


 最初は無難にお化け屋敷のようだ。

 この世界にもそういう概念があるのか、あるいは前世の記憶持ちの人がいてそういうのを提案したのかは分からないが、いかにも文化祭のお化け屋敷って感じが出ている。

 何組か列をなしているが、みなカップルで並んでいた。

 「ふふ…。私達も一緒ですね」

 恥ずかしげもなく、満面の笑顔でそう言うレオナルド。王子様の心臓って強いのね。

 暫くすると私達の番が来たので、案内されるまま入場した。

 中に入ると薄暗く、洋風と言ったらあれだけど、和風要素は全くなかった。

 ドラキュラや狼男など定番なコスプレで脅かしにかかっていたが、作りが甘いのかかわいいとしか思わなかったのだが、レオナルドが予想に反して終始ビビりまくっていた。

 「ひっ!」「ひひっ!」「うわぁっ!」「きゃー!」「あばばば…」等と一人怖がっている。

 そもそもずっと私の腕を掴んで絶叫しているんだもの。怖さも何もありゃしないわよ。

 きっと怖がる私に堂々とした態度をとってカッコつけようと思ったんでしょうけど…。

 そんな素振り一切無かったわね。結局腰の抜けかけたレオナルドが脚をプルプルさせて、私にしがみついた状態でお化け屋敷を脱出した。

 「す、すいません。思ったより完成度が高くて」

 「いえ…」

 気まずい空気が流れる。

 そんな時、お化け屋敷をやってるところの生徒が一人声をかけてきた。

 「あ、こちら記念にどうぞー」

 そう言って手渡してきたのは一枚の写真。レオナルドが絶叫しながら私に抱きついている写真だ。

 「ありがとうございます。これは記念にいただきますね」

 レオナルドの感性が分からないが、ニコニコしながら内ポケットにしまったレオナルド。

 「さて、いっぱい声を出しましたし、喉乾きませんか?」

 「え、ええ」

 私は絶叫してないから、別にいいんだけど、まぁ確かにちょっと休憩したいかも。意外とそういうところ見てるのね。

 「では、気になるカフェがあるんです」


 満面の笑顔で連れてこられたのは、案の定アーサーのバカがやってるクリス様カフェ。

 学園内でやってるカフェの中では一番行列が出来ていて、今回の文化祭の飲食店部門で一位を取るのでは? と言われているらしい。不愉快。

 「こんな素晴らしい事を思いつくなんて、企画を考えた方とはいい紅茶が飲めそうです」

 「そ、そうですか」

 レオナルドとアーサーがタッグを組んだら、私の胃に穴が開きそう…。

 待つ事二十分ちょい。待ってる間も廊下で私の格好をした生徒達がパフォーマンスをやっているので飽きないのだが、私そんな事した事ないんだけど?

 しかし、他の生徒達には大変好評だったようだ。

 だが、レオナルドは少し違ったようだ。

 「ふむ。クリスなら、もう少し足上げられますね」「クリスなら、あそこは別の振り付けの方がかわいいはずです」「あ、これはいいですね。実にクリスらしい」「なるほど。そういう解釈もありますね」「素晴らしい。実に素晴らしい」「あの躍動感はクリスそっくりです。よく研究されてますね」

 一体あなたは何なんですか? とツッコミたくなるのを抑え、とりあえず笑顔を貼り付けておいた。

 そんな時、例のバカが同調するように現れた。

 「お詳しいですね」

 アーサーが、レオナルドに声をかけた。

 「もちろんです。婚約者ですから」

 「そうでしたか。通りで女神様も穏やかなご様子で」

 違うわ。呆れてどうでもよくなってるだけよ。

 「ええ。クリスも楽しんでるようです」

 「女神様には一昨日も来ていただけましたし、流石、我々悩める子羊達をよく目に掛けて下さります。これ以上の幸せはありません」

 やめて。ねぇやめて? そんな気一切ないんだけど?

 レオナルドもうんうん頷いて話に花を咲かせないで。


 結局そのまま三人でカフェに入り、レオナルドとアーサーが私について私そっちのけでいろいろ熱く語っている。

 私いる意味あるのかな?

 周りで私の格好をしている人達が申し訳なさそうにしているのが、唯一の救いよ。

 そのまま一時間くらい話していたのかな? 最後は二人ガッチリと握手して、お互いの背中を叩いていた。

 結局、アホな事を語っているのを見ながらコーヒーを飲んだだけだったわ。

 「彼は素晴らしいですね。クリスへの信奉が半端ないです。とても信用出来ますねぇ」

 非常に悪い化学反応でしたね。非常に強い毒性の結合を確認したわ。

 「彼とはまた今度席を設けてじっくり話し合いたいですね」

 そうですか。その時は呼ばなくて結構ですからね。


 そんなツヤッツヤのレオナルドは、時計を見て少し考える素振りを見せた。

 「ふむ…。そういえばそろそろですかね」

 「どうかしましたか?」

 「ええ。この後体育館での出し物を見にいってもいいですか?」

 「ええ。いいですよ」

 今日もいろいろやるようで、何をやるのか気になってたのよね。まぁ、今日はデートという事だから、全部は見られないでしょうけどね。

 「ではいきましょうか」

 レオナルドは手を差し出したので、私はちょっと躊躇いながらその手を掴んだ。

 その様子に嬉しそうにはにかむレオナルド。

 やっぱり少し心がチクチクした。


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