27 文化祭二日目⑥
うちのクラスの演劇が始まると、ざわつきが一斉に収まった。
まず最初にシェルミー様扮するピスティスとレオナルド扮するコトネが舞台に上がった。
みんな最初は誰だか分からなかったが、次第にそれが二人の王子の女装だと分かると、一気にため息が漏れた。
うちのクラスの二大王子様が女装して演じているのだ。盛り上がらないわけがない。
「あらあら。うちのレオちゃんが女の子の役だなんて。誰に触発されたのかしらね?」
「くじ引きの結果なので、それはないんじゃないですか?」
「そうかしら? それだけであそこまで演技なんて出来ないわよ?」
そういうもんなのかな?
確かに凄く上手なのよね。女子特有の繊細さとか明るさとかトキメキみたいなものの表現が巧い。
対してシェルミー様も相当頑張ったんだろうな。ジル様のようなツンデレお嬢様の感じが凄く出ている。特にデレた時の可愛さなんてもうそれだけで白米2杯は食べられるわ。そのくらい可愛い。
そして二人とも声の張りや抑揚が巧いわ。私じゃとてもとても。
王妃様も茶化すのをやめて、真剣に観ている。
お母様は顎に手をやり何やら呟いている。
「…あれはうちでも取り入れられるわね……。確かに逸材だわ………。盲点だったわ……」
お母様…。レオナルドをあの魔法少女のショーに参加させるのはどうかと思いますよ。
しかし、私があの時書いた内容をここまでブラッシュアップさせるなんて、ソフィアもなかなかやるわね。
そして、かなりの量練習したのね。まったくミスがない。
出演している全員がそれぞれの役を完璧に演じていた。
飽きる事なく、要所要所に盛り上がりがあるからついつい引き込まれるのよね。
最後の方でイヴ様扮する魔王が出たんだけど、イヴ様とレオナルドの出しているあれはなにかそういう特殊効果なのよね? 魔法のようにも見えるけどきっと気のせいよね?
なんかシェルミー様もそういった事してるんだけど…。どっちなんだろうね?
アンバーレイク家の技術を使えばあのくらいの表現余裕だと思うけど、ここからだと判別がつかない。これはあとで聞いてみるしかないわね。
そして最後のクライマックスシーン。
そう。二人のキスシーンだ。
二人の顔が近づくが、髪の毛で隠れているので本当にキスしているのかは分からない。
客席からは黄色い悲鳴がかなり聞こえる。
「これクリスちゃんがやっていたら、きっと死人が出ていたわよね?」
「確かに。うちのクリスがどこぞの馬の骨とキスなんかしようものなら大変なことになるな」
王妃様もお母様も物騒な事を言う。
そんな事あるわけ………ありえそうね。
そして、最後に二人が力を合わせて魔王を討ち倒すシーンがあった。
これで終わりかな?
そう思っていたら、二人は見つめ合い…。そしてシェルミー様がレオナルドの腰に片手を当てて、互いに見つめ合う。
うわぁすごい…。二人の熱っぽい演技に引き込まれる。
ここで終わりかなと思ったら、ゆっくりと顔を近づけてキスをした。
!?
はっきりと見えた。本当にキスしてる!
レオナルドもそのまま受け入れている。わぁ!
会場全体から悲鳴と絶叫が聞こえた。そりゃそうよ。
流石の王妃様も両手を口に当ててびっくりしている。
ルキナ王女も見てはいけないものを見た子供みたいな表情している。
ご家族の前でよくやったわね。
まさかここまでやるなんて思わなかったわ。
そして長く感じたキスシーンだが、二人が口唇を離すと、二人ともほんのり顔を赤らめている。
もうそれだけで、会場の窓ガラスが割れるんじゃないかという位の悲鳴と絶叫がビリビリとこだました。
これ二人はいったいどういう気持ちで演じたんだろう?
なんでか分からないけど、胸が少しチクチクするわ。
そんなこんなで、無事にうちのクラスの演劇は終わった。
みんな立ち上がり盛大な歓声を上げながら拍手をしていた。四十分くらいがあっという間だったわ。
それから色んなクラスの出し物があった。
流石に演劇は続くとダレるからか、連続で二回。間に漫才やら演奏が入ったりしていた。
うちのクラスの委員長と副委員長の漫才も勝手にエントリーされていたらしく、バックれずにちゃんと参加していた。
しかし本当にうちの委員長はペラ回るなぁ。話が巧いね。
それをゲラと突っ込みの副委員長がいい味出してる。
もう夫婦漫才として将来約束されたも同然じゃないかしら?
ラジオとかもいけそうだし、委員長がテンパだから、昔やってたキ◯キ◯アフ◯みたいな番組やってほしい。あ、テレビ局無いからダメか…。
しかし、どれもこれも完成度が高い。一つ目が観られなかったのが悔やまれる。あとで、DVDに焼いてもらおうかしら?
これ、販売したら結構いい収入になると思うのよね。




