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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第7章
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19 文化祭一日目②


 そういえば、最初のお店で買った時にスタンプラリーの紙をもらったのよね。

 食べ終わったので確認してみると、二百店越えのマスがある。こんなん達成出来る訳ないでしょ。

 考えた担当者誰なのよ…。

 これ、お姉様とソフィアなら…いや流石に無理だろうな。三日あっても金銭的にも胃袋的にも不可能だわ。

 まぁ、升目には食べ物の名前が書いてあるから、パンフレット代わりなんだろうけど…。

 全部達成すると、王都にある食べ放題のお店の無料チケットが貰えるらしい。

 王都の学園でもスポンサー集めしてたんだね。知らなかったわ。

 さて、しょっぱいもの食べたら甘いものよね。

 さっきの今川焼エリアに行くか、別の甘いものに、行くか…。

 「食べ物もいいですけと、カフェとかも気になりますわ」

 なるほど。確かにそれもあるわね。

 でもカフェもかなりの数あるんだよなぁ。

 そしたら、トミー様がおずおずと手を挙げた。

 「あの…、一つ気になるところあるので行ってみてもいいですか?」

 他のみんなはどこでもいいみたいで、快く了承した。

 「ええ。いいですわ」「トミーの行きたいところならどこでも行くわ」「どこでもいいんじゃない?」「カイラ様の気になるところでいいですよ」

 はにかみながら「よかった」と呟く。

 「じゃあ、行きましょう」

 トミー様筆頭にそのカフェへ行く。


 まさかまさかのあのバカのいるJ組のカフェだなんて…。しかも、結構並んでるし。

 でも、今更やめない? なんて言えるわけもないし。うーん…。一応変な事やってないか確認は大事よね。そう自分に言い聞かせる。

 だってみんな楽しみにしてるんだもの。水を差す訳にはいかないわ。なぜかマーガレットですら期待しているし。

 待つ事二十分。私達の番になった。

 なったのだが、私を見るなりJ組の生徒が教会式の礼をする。やめて。

 「あの…案内していただいても…」

 「かしこまりました女神様」

 もう帰りたい。

 席に案内されると、水色の髪の毛。といっても全員なんだけと、その人が、カフェの説明をする。

 「当クリス様カフェをご利用いただきありがとうございます。当カフェのご説明をさせていただきます」

 そう言って説明をする。クリス様カフェって何よ。

 「当カフェは、クリス様の素晴らしさを伝道するためのカフェではございません。文化祭でそれをやると女神様に怒られてしまいますからね」

 チラッと私を見る。分かってるじゃないの。もしそんな事をしようものならこの場でお姉様の如く怒り狂って暴れてやるつもりだったわよ。

 「ではどういったカフェなの?」

 ジル様が興奮気味に尋ねる。

 「私達が、クリス様になりきって接客いたします」

 「それだけですか?」

 トミー様も面食らった顔で聞き返す。

 「はい。なぜならば、敬愛するクリス様になれるんですもの。これ以上の幸福はありませんよね? そして、そんなクリス様に接客されたら嬉しくないですか?」

 「ま…まぁ。そうね。悪い気はしませんね」

 カイラ様が気押されるように答える。

 「では、心行くまでお楽しみください……。いらっしゃいませ〜ん。当店ではぁ、たっくさんのスイーツとぉお飲み物をぉ用意してます〜♡」

 違う。それ私違う。エリーの喋り方。

 流石に全然違う事に三人はイラっときたのだろうが、他の偽クリスもそれぞれ違う言葉遣いなので、敢えてそういういろんなクリスを演じているんだろうなと納得した。

 とりあえず、飲み物とスイーツをみんな頼んだ。

 私は、カフェオレとシフォンケーキにした。

 「それでっはぁ〜、少々お待ちくだはぁ〜ぃい」

 どこかのアパレル店員みたいな言い方になっている。みんな笑いを堪えるので必死だ。

 店員さんが奥へ引っ込むと、みんな失笑した。

 「なんですのアレは。クリス様があんな口調なワケ…ふふっ…」

 「まぁ、あれはあれで新鮮ですけどね。ぶふっ…」

 「他でも聞いた事ないような口調ですね。特にあそこはひどいですね。ふへへ…」

 「ねぇ、試しに言ってみてよ」

 「えぇ…まぁいいけどさぁ。…コホンッ…。いらっはぁいませぇ〜。とうてんぅぜぇんぴぃんざんじゅっぱーせんとおっふになっておりまっすぅ〜」

 「「「「あっはっはっはっ!」」」」

 どうよ。似てたんじゃないかしら?

 「昔バイトしてたとこの人そっくりだわぁ〜」

 マーガレットが大爆笑している。まぁ、ご満足いただけて何よりだわ。

 「くっ、クリス様、あちらの口真似お願いできますか!?」

 おぉ! ジル様の食いつきがすごい。

 えっと…、あれか…。低めの声で…。

 「お嬢様、今日もとてもお美しいです(イケボ)」

 「〜〜〜〜〜〜〜〜!?」

 「あ、私も私も!」

 まさか隣のテーブルの人からもお願いされるとは。その後、調子に乗った私は、店員さんと一緒にいろいろやってしまったらものすごい人だかりになってしまった。

 流石に収集がつきそうにないので、そろそろお暇させてもらおう。


 再び屋台の方へ行き、私はチョコバナナを買って歩いている。

 なぜか屋台の辺りから人が減っていたのだ。

 「いやぁ、さっきは凄かったねぇ」

 「何でそんな他人事になれるのよ」

 何でって言われてもなぁ…。

 「私、クリス様ってもっとお固いイメージでした」

 「私も…」

 「えぇ…そんな事ないよー?」

 「でもお陰で良いもの見られましたわ。一歩リードですわ」

 「別にあのくらいいつでもやるよ?」

 「本当ですの!?」

 目を輝かせてグイッと近づくジル様。顔が近い。

 ジル様ってこういうの好きなのかな?

 「ふふ…。クリス様の知られざる一面を知れて、私大変嬉しいですわ。これで一歩リードと言ったところですかね」

 そこに水を差すマーガレット。

 「意外とうちではやってるよね」

 「まぁそうだね」

 「「「!?」」」

 三人とも目が光ったんだけど。

 案の定ウチでの事を根掘り葉掘り聞かれたのだった。

 マーガレットも傍観してないで、ちょっとは助けてくれてもいいと思うのよ。


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