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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第7章

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16 文化祭の準備③


 さて、書類仕事か終わってもやる事はいっぱいあって、例えば出し物に不備がないかのチェックね。

 私は今正門前に来ている。副委員長のレインさんとカリーナちゃん。あと別のクラスの人が二人一緒だ。

 大分形になってきていて、正門前にはおっきなアーチが作られている。

 そこから学園に向かっていくつもの屋台が出ている。

 しかしなんだね。異世界だというのに、日本の漫画やアニメで見るような屋台が並んでいるのを見ると、乙女ゲームの世界なんだなと、改めて認識させられる。

 それも並んでる屋台が、パッと見ただけでも『チョコバナナ』、『わたあめ』、『ヨーヨーすくい』、『ベビーカステラ』、『大阪焼』、『たこ焼き』、『焼きそば』、『フライドポテト』、『かき氷』、『レインボーアイス』、『唐揚げ』、『りんご飴』、『煮イカ』、『じゃがバター』、『フランクフルト』………と、かなりの数が出ている。

 縁日かっていうくらいバラエティに富んでいる。

 よくもこんなに出店してるわね。

 あそこの『射的』とか『型抜き』なんて景品取らせる気ないでしょ。

 学園前広場では何やらパフォーマンスの練習をしていたりする。

 学園前だけでこんななんだもの。中の方も相当すごいんでしょうね。

 一店一店ルールを守っているかとか、安全性に配慮しているかチェックしていく。

 何店か基準に満たないところもあるので、そういうところは次回のチェックまでに改善していなければ出店は出来ない。

 というか、出店に関しては部活や仲良しグループでやってりするんだね。

 私も何かやればよかったな。

 「クリスがお店やったら行列が出来すぎて、捌ききれなかったり、他のお店に迷惑かけちゃうわよ」

 まさしくその通りだと思うけど、当たり前のように心読むのやめてくれない?

 そんなに顔に出やすいのだろうか? ほっぺたをむにむに触る。

 「何してんの?」

 「いや…別に…」

 中の方のチェックは別の人がやっているようだけど、そっちも確認したかったなと思う。

 なんせアーサー率いるJ組は要注意だ。


 会議室へ戻る。

 一年、二年、三年、その他の場所とそれぞれ分担してチェックしていたようだ。

 「委員長すいません。J組の出し物チェックの資料見せてもらってもいいですか?」

 「いいけど。何もそんなに身構えなくてもよくない?」

 「いやぁ、過去何度もアイツには辛酸を舐めさせられているので…」

 「クリス嬢がそう言うならよっぽどなんだろうね」

 「えぇ。メチャクチャやばいヤツですね」

 「はは…」

 委員長が乾いた声で笑う。

 チェックされた資料を見ると、問題なしと書かれている。ホントにぃ?

 担当したのは………スノウさんだね。

 「あの、副委員長ちょっとよろしいですか?」

 「どうかした?」

 「ちょっとこのJ組の出し物で、問題なしってなってますけど」

 「そうね。問題はないわ」

 「そうですか。ちなみにどんな感じだったかお聞きしても?」

 「いいわよ。コンセプトカフェをやるようで、みんな水色のウィッグを被って、いろんな衣装を着て接客する感じね。食べ物も凝っててクリス様パンケーキ、クリス様フレンチトースト、クリス様パフェ、クリス様プディング……」

 「ちょ…ちょっと待ってください。それでなんでオッケーなんですか?」

 何を言っているのか分からないと言った顔でコテンと小首を傾げるスノウさん。

 白に近い水色のロングストレートの美少女が不思議そうな顔で小首を傾げる姿はなんともグッとくるものがあるのだけど、ここはちゃんと言わないとダメだろう。

 「? 何でってクリス様の素晴らしさを広めるいい催しだと思うのだけれど」

 「ダメに決まってるじゃないですか! どう考えても悪影響しかないですよ?」

 「悪影響ってどんなの?」

 「いや…それは……」

 言葉に詰まる私。確かに嫌な思いをするのは私だけなんだけど…。

 あれ…じゃあいいのかしら? かわいい私を喧伝する……いやいや。アイツはそういう意図でやってないわ。

 なんというか、ナチュラルに私を貶めてる気がするもの。

 「言えないの?」

 「うっ…」

 そんな上目遣いされたら否定出来ませんって。

 「そんな頭ごなしに否定しなくてもいいと思うのよ。私達からしたら何も問題ないもの」

 「私達?」

 「そうよ。クリス様ファンクラブとしては後押ししたいくらい」

 「え、待ってください。クリス様ファンクラブってなんですか?」

 「これよ?」

 そう言ってスノウさんは少し厚みのあるカードを差し出した。

 プラスチックっぽい素材のそれには、スノウさんの顔写真と名前、会員番号、会員ランクが記載されていた。

 『スノウ・ホワイトロード No.04120832 S』と書かれていた。

 「多いですね………」

 「あぁ、それ? それは第四期入会で、当時の派閥番号が十二だったのよ」

 「へ…へぇ……。そうなんですか…」

 入会時期はともかく派閥とは? 聞いたらいけない気がして聞けない……。

 「このSってのは? 結構上の方なんですね」

 「ん? あぁ…ランク? 下の方よ」

 「へ?」

 「上から『G』、『L』、『U』、『S』、『C』、『B』ね」

 わっかりづらいなオイ。

 多分、上から『ゴッド』、『レジェンド』、『アルティメット』、『スーパー』、『コモン』、『ビギナー』なのかな? 憶測だけど……。

 もう『SSR』、『SR』、『R』でいいじゃない。

 最近思うのだけど、『SSR』って付いても雑魚扱いなのはどうなのかしらね?


 しかし、ファンクラブかぁ…。

 レオナルドのがあるんなら、当然私のもあるはずよね。

 なんか踏み込んだらいけない領域な気もするし、放置してはいけない気もする。

 でもなんか納得だわ。私のファンクラブの人が審査したら、そりゃあ甘々な判断になるわよね。

 まぁ、仕方ない。多分私の格好をして接客ならそこまで酷い事には……………………。

 「これ勧誘とか布教とかはしませんよね?」

 「流石にそれは規定に違反するからしないみたいよ。してもいいと思うのだけど…」

 「いやいや、いいわけないじゃないですか。まぁ、それを聞いて安心しました。まだ、少し疑念はありますが、一応納得しておきます」

 「そう…」

 正直、私のファンクラブの存在の方が衝撃的すぎてJ組の出し物が途端にどうでもよくなってしまったわ。

 「ねぇ…」

 「あ、はい。スノウさんどうかしました?」

 「ファンクラブの事は内密にしてもらえると助かるのだけど」

 「どうしてです?」

 「本当は秘密なのに、私が口を滑らせてしまったからよ」

 「あぁはい。まぁいいですけど…」

 「助かるわ。ありがとう。ところで……」

 「なんです?」

 「握手してもらってもいいかしら?」

 「あ、はい」

 すっと手を差し出すと、がっちりと両手で掴まれてさすられるように握手された。

 「…してくれたんだね…」

 「え…えぇ……」

 真顔で言うからちょっと怖いんだよなぁ…。

 こんなやりとりをしていたからだろうか。カリーナちゃんとテオドールたんがじっとこっちを見ていた。

 「ど…どうかした?」

 「別に…」

 「うん。何も……」

 色々あったが、こうして着々と文化祭の準備は進んでいったのだった。


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