14 文化祭の準備①
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あれから数日。
文化祭の準備も大分進んできている。
「レオナルド殿下…。そんなに恥ずかしがっていては演劇なんて出来ないよ?」
「す…すいません。しかし、どうも女性の言葉遣いというものが…」
「ふむ。普段から女装してみてはどうかな?」
「えっ! そ…それは……」
「だって、クリス嬢やカリーナ嬢含めてかなりの数の男の娘が女装しているじゃないか。彼女達には見習うべきところが多いと思うんだけどな」
「そ…それはそうなんですが…」
まぁ、うちのクラスの内訳って、女性十一人、男装女子七人、男子十人、女装男子十二人の合計四十人だしね。
比率的には見た目女子のが多いのかな。
「でも、コトネ役を射止めた時はあんなに嬉しそうだったじゃないか」
「それはクリスと出来るからと思った訳で…」
「それでも変わらないと思うんだけどなぁ」
まぁ、相手が私だろうがシェルミー様だろうが、女の子を演じるんだからシェルミー様の言っている事は正しい。
「私の事ばっかり言ってますが、シェルミー嬢だって言葉遣いに苦戦してるじゃないですか」
「うっ…。ま、まぁ確かに使い慣れていないだけだからね。……コホンッ……。嫌ですわレオナルド殿下。そんな事言われたら私とても悲しくて泣いてしまいますわ」
おぉ…。流石シェルミー様。ジル様の真似そっくりだわ。
そんなジル様は少々引きつった顔をしている。
「どうだい? 僕にかかればこんなもんさ。さ、レオナルド殿下も練習しようね」
「うぅ……分かりましたよ」
レオナルドは顔を真っ赤にして台本を読み上げている。
まぁ、一度吹っ切れれば何とかなるでしょ。
そんな様子を見ていたソフィアがシェルミー様にサムズアップしていた。
演技指導は殆どシェルミー様に任せっぱなしだな。
そう思っていたら、意外とカリーナちゃんも身振り手振りを交えて教えていた。
「ここは、こう表現するといいですよ」
「なるほど。……こうですか?」
「違うわ。こうよこう。ここが伸びきってないの。もう少し手の先にも意識して」
カリーナちゃんって意外と多才だよなぁ。
カリーナちゃんがいないとうちの演劇も上手く行かなそうなので、実行委員の仕事は殆ど私がやっている。
実際、大した仕事ないしね。
クラスでの演劇の練習を見届けた後、文化祭実行委員会の会議室で事務作業をする。
流石に四人では回せなかったらしい。
今日はお手伝いで十数人が手伝っている。残りの人達は外回りの仕事だ。
隣には愛しのテオドールたんがいる。
お陰でいつもの倍以上仕事が捗らない。だってかわいいんだもん。
もし、隣にカリーナちゃんもいたらもっと進まなかっただろう。
「クリス手止まってるけど大丈夫?」
「大丈夫。ちょっと考え事してただけだから」
「そう? そんな難しい案件なの?」
「ん? そ…そうなのよ。困っちゃうわねぇホント」
そんな様子を委員長や副委員長が半眼で見ている。
分かりましたよ。ちゃんとやりますよ。もう…。
「ところで、リアムから聞いたんだけど、テオドールたん主役なんだって?」
「そうなんだ。マーガレットが脚本書いてね。ウィリアムも絶賛してたよ」
「へぇ。どんな内容なの?」
「何かよく分からないけど、魔法…少女…モノ? っていうものらしいよ」
マーガレット良くやったわ。グッジョブ。後でなんかお願い事聞いちゃうわ。
主役ってことは勿論テオドールたんが魔法少女よね。絶対に観に行くわ。
「必ず観に行くからね」
「うん。でもちょっと恥ずかしいな…はは…」
あぁ…。照れてる姿もかわいいなぁ…。
どんな魔法少女なのかな? 想像するだけでもワクワクしてくるわ。
そんな感じで妄想に浸っていたら、副委員長が早くやれと口パクしてきた。
はいはい。分かってますよ。ちゃんとやりますよ。
もう。こんなの数分で終わるんだからね。
仕方がないので、パパッと片付ける。伊達に前世で長い事会社員やってないわよ。こんな書類仕事朝飯前よ。
「どうぞ」
「クリス嬢は本当に仕事が完璧だね。これでもう少し早ければ…」
「すいませんね遅くて」
「いつもはもっと早いよね。やっぱり…」
「やっぱり?」
「いや、なんでもない。サマンサ様のような威圧感は出さないでもらえると助かる……」
別にお姉様みたいな威圧感出してないんだけどなぁ。やっぱ姉妹だと似るのかな?
そんなこんなで書類仕事を完全に終わらせて帰路につく。
寮の前でテオドールたんと別れる。なぁんでテオドールたんは女子寮じゃないんだろう?




