11 文化祭の出し物について⑤
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それぞれ役割が決まった人達で集まり話し合っている。
例えば衣装係はどんな衣装にするかとか、使う生地や予算を確認している。
大道具・小道具係も同様だ。
役者チームは何故かお通夜の雰囲気だが、ソフィアが発破をかけている。流石頼れる姉御だ。
演出のカリーナちゃんもしっかりしているから大丈夫だろう。暴走しかけたソフィアを止めるブレーキ役にはぴったりだわ。
しかし問題は私だ。広報って何? 何すればいいのよ? チラシやポスター描けばいいのかな?
文化祭実行委員の仕事もあるからこのくらいの仕事でいいのかな?
あ! 文化祭実行委員会へ何をやるのかの報告と予算聞いてこないと。
みんな勝手に予算決めてるけど、超えてたら大変だものね。
「ごめんみんな。報告ついでに予算聞いてくるから。もうちょっと待っててね」
危ない危ない。予算内に収めるのも実力の内だけど、超えたら超えたで自腹切ればいいし、何とかなっちゃうのよね。
それじゃあ意味がないんだろうけどさ。
さて、ここを左に曲がれば実行委員会の使ってる会議室がある方ね。
間違って右に曲がろうもんならあの生徒会室へ行ってしまうから気をつけないと。
あの物騒な組織どうにかならないのかしらね?
左へ曲がったところで後ろから声を掛けられた。
「あらクリスどこへ行くの?」
振り返ると、改造して軍服ワンピースみたいになっている制服を着ているお姉様がいた。冬仕様のそれは何というか、よりコスプレ感が強い。
ルイスお兄様のゴスロリ趣味に触発されているのか、結構ロリータ風味の衣装を好むのよね。
大人っぽい衣装作って筈なのに、普段着は結構乙女趣味だ。
そんなお姉様はニッコリとただ微笑んでいる。怖い。
「あ、私文化祭実行委員なんで、今から報告に」
「あら。生徒会室へお茶をしに来てくれるんじゃないのね?」
「ごめんなさいお姉様。ちょっと忙しくって」
「いつくるの?」
「暫くは難しいかと…」
「いつくるの?」
怖いよ。壊れたおもちゃみたいにずっと同じ事言い続けてる。
え、何? 『はい』を選ばないとずっと進めないゲームのシナリオなの?
「放課後お伺いさせていただきます」
「ん。待ってるわ」
何で学園ではあんなに推しが強いんだろうね?
まぁいいや。委員長に報告に行かないと。
……よく考えたら私、実行委員長知らないや。
ここが文化祭実行委員に割り当てられた会議室…ね。
ノックすると「どうぞ」と返事があるので、そのまま「失礼します」と言って入る。
入ると、言葉を失うくらい美形の人達がコの字の机の向こう側に座っていた。
恐らく真ん中が実行委員長なんだろうけど…。
「あぁ、えっとクラスと名前いいかな?」
真ん中に座る金髪イケメンに聞かれたので答える。
「はい。一年A組のクリスティーヌ・オパールレインです」
「「「「「オパールレイン?」」」」」
「あ、はい…。そうですけど、何か?」
みな険しい顔をしているんだけどどうして?
「もしかしてお兄様かお姉様っているかい?」
「えぇ。ルイスとサマンサという名前ですが……」
ガタガタっと音を鳴らして立ち上がったり、椅子から落ちたりする。
「そ…そうか。君が例の…。あぁ…申し遅れたね。俺はクラウド。クラウド・ピンクスパイダーだ。三年で、文化祭の実行委員長をしている。お手柔らかに頼むよ」
「は…はぁ…」
別に私は何もする気は無いのだけれど、お兄様とお姉様の残した爪痕が相当深いのね。
「それで、僕の隣にいるのが、副会長のレインで、そっちに立っているのが書記のサニー。そっちで何故か床に座っているのがスノウだ」
委員長以外女子だね、なんだただのハーレム野郎じゃないの。まぁ、性格も良さそうだし、顔もいいから納得ではあるけれど。
「それで? A組は何を?」
「あ、はい。演劇になります」
「ふーん。今年は演劇多いねぇ。いつもは二つ三つくらいなのに」
「そうなんですか?」
「まぁ、みんなで協力しないと出来ないからね、ああいうのは。俺的には増えるのは良い事だと思うよ。あ、そうそう予算だよね?」
「えぇ」
差し出された紙を覗き込む。まぁまぁの金額だ。
「一応、このくらいかな。もし、どうしても足らなくなったら申請してもらえれば検討するから」
「はい。ありがとうございます」
「いや、構わないよ。君はまともそうで良かった。……ホント良かった」
含みのある言い方だなぁ。そんなに苦労したのだろうか?
他のお三方も目を合わせてくれないんだけど。
まぁいいか。とりあえず教室に戻って報告しようか。




