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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第7章

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09 文化祭の出し物について③


           *      


 翌日の午後。今日も文化祭の出し物に関する集まりをしている。

 皆がソフィアの書いた草案を読み、みな絶賛している。

 興奮したり、泣いたり、感動したり忙しいなと思う。

 「おかしいな。私が書いたのと違う気がする…」

 あれ別ファイルに保存じゃなくて上書き保存しちゃったんだっけ? まぁいいや。

 流石にソフィアのアレは公に出来ない。いろんなところからクレーム来ちゃうもの。

 でも皆に褒められてソフィアも満更でもない顔をしている。

 「ソフィア様って創作の才能もお有りなんですね」「よくこんな発想出来ますね」「私感動しちゃいました。これ書籍化してくれませんか?」「脚本が今から待ち遠しいです」「てっきりソフィアは私の悪口を書いてくるもんだとばっかり思ってました。見直しましたよ」

 お。レオナルド鋭い。

 「ソ…ソンナコトナイヨー」

 何故か片言になるソフィア。


 満場一致でこの作品で演劇を進めていく事になった。

 「ソフィア嬢、脚本期待しているよ」

 特に演劇にこだわりの強いシェルミー様がソフィアを労っている。

 「も…もちろんよ」

 「そういえば、登場人物はそんなに多くありませんのね」

 「これ以上増える事はあるの?」

 ペラペラと草案を捲って確認するソフィア。

 「いや…増えないと思うけど」

 「じゃあ、今のうちに配役決めちゃおうか」

 「そうだね。そっちの方が脚本も書きやすいだろうしね」

 どんどんと話が進んでいく。

 「ごめん。配役決めなんだけど、もうちょっと話の内容練ってからでもいいかしら?」

 ソフィアの提案にみな納得したところで今日の集まりは終わった。


 さて、私は今日は調理部の講師があったわね。

 教室を出ようとしたところで、制服の襟をギュッと掴まれる。

 「ぐっ! ちょっと何するのよ!」

 振り返り抗議すると、案の定ソフィアが困った顔をしていた。

 「何?」

 「ごめんクリス手伝ってぇ…」

 うーん。手伝ってあげたいのは山々なんだけど、今日の調理部のメニューはビリヤニなのよね。そんなに難しくないけど、要所要所で教えないと間違えやすいから行かないと行けないんだけど……。

 「ごめんソフィア。今日は調理部の…」

 「分かったわ。終わるまで待つわ。さ、行きましょ」

 これ完全に調理部のある調理室で待っている気でしょ。しかも食べる気満々。

 「ねぇ、今日は何を作るの?」

 「ビリヤニ」

 「へぇ…。何それ?」

 「なんていったらいいんだろ。スパイスの効いたご飯?」

 「カレーピラフな感じ?」

 「違う。カレー味じゃない」

 「?????」

 まぁ、こればっかりは説明しても難しいからね。実際食べてみた方がいいでしょうね。

 調理室へ入ると調理部のみんなが既に待っていた。

 「遅いぞクリス」

 ウィリアムがニッと笑いながらそんな事を言う。

 「ごめんごめん。文化祭の出し物決めでちょっと時間かかっちゃってね」

 文化祭の出し物と聞いて調理部のみんながざわつき出す。

 「ふ…ふーん。出し物ね。何をやるんだ?」

 ウィリアムが口を開くとみんな集まって聞いてくる。

 「クリス様のクラスは何を?」ってね。

 そこでソフィアが「はいはい」と言いながらみんなをかき分けて私の横に立って、私の腰に手を回。何で?

 「うちのクラスは演劇をやるわよー」

 「「「おおっ!」」」と声が上がる。

 それに気を良くしたソフィアが爆弾発言をする。

 「ちなみに、キスキーンもちゃんとあるわよ」

 別に誰がキスするなんて言ってないのに、「キャー」と黄色い歓声が室内いっぱいに広がる。

 「く……くくく………くり……クリス…」

 「そんな焦ってどうしたのよリアム」

 「な、なぁその演劇ってのA組B組合同に出来ないか?」

 何を言ってるのかしら? そんなの出来るわけないでしょう?

 ソフィアも同じことを思っていたらしい。

 「ごめんねぇ。配役そんなに多くないから一緒には出来ないわ」

 「……そうか」

 物凄くがっくりと落ち込むウィリアム。そんなに演劇やりたいならB組も演劇にしたらいいのに。

 そしてウィリアムの横で不機嫌になるクリちゃんはウィリアムの足を蹴飛ばす。

 「いった! 何すんだよ」

 「何でもない!」

 「??」


 いろんなところでワイワイやっていて、調理どころじゃないわね。

 パンパンと手を叩く。

 「はいはい。おしゃべりはそこまでね」

 そう言うとみんな素直に「はーい」と言って席に戻る。

 「あ、ソフィアはやらなくていいから、あの辺でシナリオ考えといて」

 「言われなくてもそうするわよ」

 今日はやけに素直だな。楽でいいけど。

 「はい。じゃあやっていきましょうか」

 黒板の前に移る。ずっと事の成り行きを見ていたダイゴ先生が苦笑いしていた。

 「それではクリス先生、本日は何を作るんですか?」

 「今日はビリヤニを作っていきます」

 「ビリヤニですかー。最近流行ってますよね」

 「えぇ。ですのでご家庭でお気軽に作れるレシピをご紹介していきます。材料はこちらですねー」

 「材料は黒板に書いてありますのでご確認ください」

 お米、鶏肉、玉ねぎや各種スパイスの配分が書いてある。今回はシンプルにクミン、コリアンダー、ターメリックに私が選んだいくつかのスパイスを入れていく。

 「そしてお米ですが、こちらを使います」

 「随分と細長いですねー」

 「バスマティライスといいまして、こちらは鍋で茹でていきます」

 「へぇー。お米によって焚き方が違うんですねー」

 「はい。あと、細長いので折れたり割れやすいので、水につける程度で十分ですし、洗わなくてもいいです」

 「では、こちらが茹でたお米になります」

 ダイゴ先生が後ろのテーブルから茹で上がったお米をみんなに見せる。

 「では、次にソースを作ります。玉ねぎをしんなりするまで炒めたら、鶏肉を入れます。鶏肉の色が変わったらこちらのスパイスを入れていきます」

 「こちらが炒め終わったソースになります」

 またぞろダイゴ先生が後ろから炒め終わった後のフライパンをみんなに見せる。

 「そしたら……」

 「ちょっと待って」

 作ってる途中でソフィアが大声で止める。

 「え、何? 今作ってる途中なんだけど」

 「何でそんな◯分クッキングみたいなやり方してるのよ」

 「だって、一回一通り見せた方が分かりやすいでしょ?」

 「そりゃそうだけど……」

 「作ったら食べさせてあげるから、戻って戻って」

 「分かったわよ」

 納得いかないみたいな顔をして戻っていった。

 「はい! えーっと……。あ、はいはい。炊き上がったお米とソースを混ぜて蒸したら完成になります」

 最後はそれらを混ぜて、みんなに見せていく。

 「お米とソースを交互に重ねたり、いろんな作り方がありますので、機会があったらまたやっていきましょう。はい。出来ました」

 「はい。こちらが完成したビリヤニですねー」

 ライタと呼ばれるヨーグルトと野菜を和えたものを添えて、パクチーはお好みで乗せて完成ね。

 「はい。ではみんなで作っていきましょう。分からなかったら聞いてねー」

 そんな感じで部活は進んでいく。

 進行上五人分くらい作ったけど。ソフィアがパクパクと食べていく。夕飯入るの?

 部員のみんなが料理を作り終え、食べ終わった頃にソフィアが勢いよく立ち上がる。

 「クリス、完成したわよ」

 「あ、そういえばシナリオ煮詰めてたんだっけ?」

 「そうよ。なーんか足らないなって思っててね。最後は結婚式のシーンにしたわ。二人は幸せなキスをして終わり」

 それを聞いていた部員が色めき立つ。

 まぁ、いいけど別に私がやるとは限らないのにね。

 と言う事で、無事にシナリオも完成し、部活動も終了し家路に着いた。

 あんなにビリヤニを食べたのに、夕飯もきっちり食べて、食後のデザートまで食べるソフィアの胃袋は一体どうなってるのかしらね?

 そっち方面で文化祭やれば良かったのに。


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