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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第7章

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02 冬のエピソード


           *      


 三月のこの時期でもガンガン雪が降る。

 その為、学園のあちこちにはかなりの雪が残っているので、文化祭を開催するとしたら、あれが完全に無くなった頃だろう。

 しかし、今年も去年同様雪が多いな。

 冬の間は雪深いので、朝の訓練も走り込みも出来ない。

 ただまぁ、散歩は出来るので、今日は昼間にゆっくり学園内を歩いてみようと思う。

 ある程度雪かきされて歩けるようになっているしね。


 校門近くの広場に出る。

 暇な生徒がいたのかかなりの数の雪だるまや雪像が作られている。なんでこっちの雪だるまって三段なんだろうね?

 それはそうと、さっぽろ雪まつりじゃないけど、よくもまぁこんなに雪像を作ったわね。

 どこぞの社会主義国の銅像みたいに剣を持った女神とかどっかを指し示してるおっさんとか。

 そう思ったら、見事な建物だったり、ほっこりするような動物とかが形作られていた。

 「なんだこれは…」

 ある雪像の前で足を止める。

 私の雪像が三体あるんだけど、どれもこれも卑猥だ。甚だ遺憾だわ。雪玉をぶつけて折ってやろうかしら?

 中に石を詰めてガッチガチに固い雪玉を作り、投げようと思っていたら、後ろから羽交締めにされて止められた。

 「何をするんです女神様!」

 「何ってあの卑猥な物体を破壊するのよ」

 「おやめください。毎日信者が祈ってるんですよ」

 「お前布教すんなって言ったよな?」

 「していませんよ。皆さん自発的に入信しただけです」

 どうだか? 私アーサーの言う事は一切信じてないのよね。

 何故か私の雪像の前にはお花が飾られ、ちょっとした祭壇みたいになったいる。

 「それを壊すなんて勿体無い」

 「え?」

 「そうだね。出来る事なら永久に残したいくらいだね」

 振り返るとレオナルドとシェルミー様がいた。我が学園のキラキラ王子様一号二号ね。

 止めるって何? 洗脳でもされてんの?

 あの誘拐事件の後から、やたらと好意をもって接してくれているんだけど、別にそこまでの事してないんだけどな。

 「そうですわ。後々これは銅像と石像を作って全国へ配布するんですの」

 「え、やめて」

 「クリス様が嫌がっておられますので…」

 イヴ様は比較的まともなのかな? ジル様の提案を撤回してくれるようだ。

 「…私達の家と領の広場のみの設置にしましょう」

 「だからそれをやめてって言ってるの」

 建てるならせめてそっちのよく知らないおっさんの雪像にしなさいよ。

 「別に私達のお金で作るのだからいいではないですか」

 「そうだね。一応うちの領の話だし」

 「ちゃんと素晴らしい逸話も追記するから」

 「王城の中庭に設置したいと考えてまして、母上には了承を得ているんですよ」

 全然話通じないな。

 とりあえず、アーサーの拘束が解かれたので、持っていた雪玉をアレにめがけて思いっきり投げつける。

 「「「「あっ!」」」」

 「!?」

 絶対に壊れる速度で投げつけたのに、雪玉は『キン!』という甲高い音を鳴らして弾き飛ばしてしまった。

 どこぞのメジャーリーガーかなってくらい遠くへ飛んで行ってしまった。

 「な…なんで…」

 「私、同じ失敗はしませんので。以前作った時に破壊された教訓から、ガッチガチに固めてあります。尚、女神様の御柱部分は周りを純氷で、中心に鉄の棒を入れております。流石の女神様のお力を持ってしても壊す事など出来ませんよ」

 くだらない小細工してからに。いいわ。後で夜中に火炎放射器で溶かしてやるわ。

 ひとまずここは諦めたフリしておきましょ。

 「分かったわよ。その執念に免じて見逃してあげるわ」

 「ありがとうございます。ちなみに燃やそうとしてもダメですよ。夜通し監視してますので」

 一体何がそんなに彼らを突き動かすのだろうか。

 ちなみにこんなに雪像があるという事で、ここの場所だけ一般開放されていて、王都内外からこれを見にやってくると言う事をみんなから聞いた。知らなかった……。

 やっぱり公衆衛生上よくないから、破壊した方がいいと思う。

 中にダイナマイトでも入れて破壊しようかしら?

 最近他の炭鉱でも使われるようになってきているらしいし。まぁ、管理が必要な物だからそう簡単には手に入らないだろうけど、ソフィアに言ったら用意してくれないかしら?

 「中に何か埋めようとしても無駄ですよ。重機でもないと穴を穿つ事すら出来ないでしょう」

 何でアーサーは私の考える事を予想出来るのよ。

 「女神様の考える事など、信者からすればお見通しですよ」

 ホント気持ち悪いわね。

 「ありがとうございます。私にとってはご褒美です」

 「!?」

 「いいなぁ…。あんな風に喋らなくても心通わせられるようになりたいよ」

 「ホントですわ。鍛錬あるのみですわね」

 「くっ……婚約者のはずなんですが……」

 「こう言う時に魔法を使えばいい」

 「ですがまだそれは習得できてません」

 「まぁ、私も出来ないんだけどさ」

 そんな事出来るようにならなくていいのに。

 そもそもこのストーカーみたいのが異常なだけで。…って、レオナルドはアーサーに極意を聞こうとしないでよ。変態が感染るわよ。

 ………………待って。今スルーしたけど魔法って言った? ねぇ魔法って言ったの?

 なぜかその事を聞いたらレオナルドとイヴ様から目線を逸らされた。

 魔法ってうちのお兄様がやたら勿体ぶった言い方をする、あの邪気眼みたいなやつじゃないわよね?

 イヴ様は兎も角、レオナルドはそんなイメージないなぁ…。


 『其れは終焉の時を呼び寄せる諸刃の剣。紅蓮の焔を纏いて顕現せよメテオストライクッ! うーん違うなぁ…。もっとおどろおどろしい単語が……。約定の時は来たり! おっいいんじゃないかな。ねぇクリスはどう思う?』

 そんな感じの事をお兄様がノートに書いて庭で言っていたなぁ……。

 よくミルキーさんが目をキラキラさせながら見てたっけ。懐かしいなぁ…。そんなお兄様が作った部活にあの二人が入ってるんだよね。悪影響とかないかな?

 アーサーを見てると不安になってくるんだよなぁ。

 とりあえず普段から中二病みたいな事言い出したら止めればいいかな。


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