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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第6章

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70 番外編28 怪しい部活②


 それから数日。

 今日も部室にて黒魔術を極めんとする二人がお茶を飲みながら話していた。

 「私がやりたい事となんか違うんですよね」

 「どう違うの?」

 「皆さんは、火だの水だの氷だったりと、そういったものを出す事に重きを置いてるじゃないですか」

 「私の最終目標は違うけど大体あってるね」

 「私は、呪いを解く。もしくはある物事を改変する事が目的なのです」

 「あー…なるほどねぇ。だったら白魔術研究会の方が合ってるんじゃない?」

 「白魔術?」

 「そう。去年の副会長が今年立ち上げた部活で、まだ一人しかいないはず」

 「へー…そうなんですね。ちなみに白魔術はどんな事をするんです?」

 希望を見出したのかグイッと前のめりになるレオナルド。

 「うーん。傷を治すとか生き返らせるとかだったかな」

 それを聞いて椅子に座り直すレオナルド。

 「なんかちょっと違いますね。とりあえずこのままここでもう少し頑張ってみます」

 「私も協力するわ。で、具体的にどうしたいの?」

 「なんと言ったらいいか…。そうですね、簡潔に言うと性別を変える方法ですかね」

 「え、何? 女風呂に入りたいとか? そんな事しなくても見放題なんしゃないの王子様ってのは?」

 「一体どこの暴君の話をしているんですか。私はクリスにしか興味ありませんよ」

 「あぁそう…。まぁつまり、その…前言ってた呪いに関する事なのね?」

 「そうです」

 「じゃあそういう資料がないか先輩とかに聞いてみようか」

 「お願いします」

 「殿下も行くんですよ」

 「え、あ…あぁそうですよね。ところでアン…先生は何か嬉しい事でもあったんですか?」

 「ちょっとね」

 二人の会話を見ていて、必死に笑いを堪えているアンだった。


 「先輩、少し宜しいでしょうか?」

 「いいですよ。どうかしましたか? 詠唱の単語選びですか? かっこいいポーズの取り方ですか?」

 これまた奇抜な格好の先輩が変なポーズを取りながら応える。

 マントをつけていなかったら、ほぼ裸に近い衣装を着ている。辛うじて短すぎるスカートで隠れている程度だ。動いたら見えてしまうだろう。

 だがもう慣れたのか、普通に接するレオナルド。

 「いえ、実はかくかくしかじかでして…」

 「なるほど。まるまるうまうまっと。分かったわ。確かいい感じのやつがあったはず……」

 聞くたびににやたらとポーズを取るが、全くの無反応のレオナルド。

 先輩部員も特に不満には感じていないようだ。


 本棚の中からやたらと薄い本を何冊か取り出した。

 「先輩達が集めた資料なんだけど、参考になれば」

 「あのっ! これどこで手に入りますか?」

 薄い本に食いつくイヴと冷めた目で本を見るレオナルド。

 「あぁこれですか。これを見てここに入ったんですよね」

 「「!?」」

 「何ですその目は?」

 「いやぁ、レオナルド殿下もやっぱり男の子なんだなと」

 「私もびっくりだわ」

 「勘違いしてるようですけど、解決の糸口を探すために閲覧したんですよ。その証拠に呪文とか書いてありませんし」

 「なんか…色んな意味で残念ね」

 「そうですね。…あ、これ! ここに書いてあるのどう?」

 「確かに…これは盲点でした。早速試したいのですが、何か丁度いいものありますか?」

 「うーん。…ちょっと待ってなー」

 薄い本に可能性を見出したレオナルドは、先輩部員に実験に使えそうな素材を尋ねる。

 「これなんかどうよ。見た目が分かりやすいから成功か失敗かすぐ分かるよ」

 「何ですかこれ?」

 「これ? これはタヌキンタマガエル。ほら、ここがめちゃくちゃ大きいでしょ」

 「エグいくらい大きいですね」

 「そうでしょう。こっちの本に描かれてるサイズとほぼ一緒よ」

 「私の婚約者のはそんなに大きくありませんよ」

 「……………」

 「まあまあフィクションだから」

 「どちらにしろカエルはちょっと…」

 「えー…黒魔術の基本よ?」

 難色を示すレオナルドに先輩部員は呆れ返す。

 その様子をイヴは黙って眺めていた。

 「申し訳ないんですけど、もう少し違うモノでお願いします」

 「仕方ないわね。なんか探しておくわ」

 「無理言ってすいません」

 そう言ってレオナルドは退出していった。


 「不思議な子ねぇ…」

 「そうですね。アレをエロ目線で読まない人初めて見ました」

 「ムッツリって訳でもなさそうなのにね」

 「意外と一途なんですね。妬いちゃいますよ」

 「いい感じの魔術あるわよ」

 「それは最終手段でお願いします」

 「分かったわ」

 決意新たに一人奮起するイヴ。

 両腕を半分程上げたところで、もっと重要な事があったと思い先輩部員へ向き直る。

 「先輩、そんな事よりもっと重要な事思い出しました」

 「これ?」

 薄い本を掲げてニヤける先輩部員。

 「そうです。それ、どこで手に入れるんですか!」

 「おぉう…圧が凄い。見た目と違って迫力あるのね」

 「早く!」

 「わぁ…分かった分かったから、落ち着いて」

 そう言って先輩部員は、財布の中から一枚のポイントカードのような物を取り出した。

 「何ですかこれ?」

 「これは青の洞窟というお店の招待状よ」

 「招待状…?」

 「そ。これがないとラピスラズリでいくら買っても入る事は出来ないの。私のサインが入ってるから、これを持っていけば入れてくれるわよ」

 「へぇ…そういう仕組みなんですね。………。え? 待って待って!」

 「忙しい子ねぇ。どうしたのよ」

 「あの…先輩の名前見たんですけど、先輩男だったんですか?」

 「あぁ。こんな格好してるものね」

 「いや、それにしたってどこからどう見ても女性ですよ」

 「あら嬉しいわぁ」

 嬉しそうに微笑んだ後、妖艶な表情でスカートをたくし上げる先輩部員。

 「!?」

 「あっ♡」

 声を出すのも忘れたのか、ある事に気づいて驚いたイヴは、先輩部員のスカートを思いっきり上へ持ち上げた。

 「無い…無い無い無い…。え? 無いんですけど、ツルツルなんですけど」

 パンツも思いっきり下げて確認するイヴ。

 「え、男…なんですよね?」

 「そうよ」

 「アレはどこにいったんですか? 切ったんですか?」

 「違う違う。これよこれ」

 先輩部員が再び持ってきたのは先程のタヌキンタマガエルだった。

 「これがなんですか?」

 「実験中なんだけど、これの分泌液といくつかの薬草を組み合わせると、性別を変える事が出来るの。カエルだけに……いたっ!」

 くだらないダジャレを言ったためか、先輩部員の突起物をつねるイヴ。

 「いたたた…。なんて事すんのよ」

 「すいません。ちょっとイラッときまして。でもそんな凄いものがあるんですね」

 「といっても二時間くらいしか持続しないしね。こういうのを研究するのも黒魔術研究会のやる事の一つよ」

 「へぇー」

 黒魔術研究会もただ変な事を言うだけの部活じゃないんだなとイヴは思ったのだった。


 翌日。

 「あの…先輩少し宜しいでしょうか?」

 「どうしたの?」

 「お貸しいただいた鶏に、呪文をかけたのですが…」

 レオナルドが抱えいた鶏を地面に離すと、確かに様子がおかしい。なんといか、ヘコヘコと腰のあたりが変な動きをしている。

 そして一番気になるのは、尻尾のあたりが爬虫類のような黒いテカリがあった事だ。

 「あれってオスだった? メスだった?」

 「あ、よく見てなかったです」

 「じゃあもう一回、呪文を言ってもらってもいい?」

 「はい……。えっと、高き壁を超え、挑むは神への冒涜。世界の理を書き換え、正しき理想へと……(なんだっけ…確か……)アダルトタッチで女の子になーっれっ!」

 光り輝き、硬直する鶏。暫く事の成り行きを見守っていた二人だったが、突然「コケーコケー」と鳴き始めると、辺りを猛スピードで走り回り、窓を突き破って外へ逃げてしまった。

 「「あっ!」」

 一瞬の隙をついて逃げた鶏は既に姿を晦ましていた。

 「どうしましょうか?」

 「どうしましょうね」

 結局その後もその鶏は学園内で見つける事は叶わなかった。

 そして、その魔術が成功したのか失敗したのかは分からず、同じように言葉を紡いでも同じようには再現できなかった。

 「レオナルド殿下、きっとそのうち成功するわよ」

 「そう…ですよね…」

 あの魔術をよく笑わずに言えるものだと部員達は思っていたが、誰も口にはしなかった。ただ一人を除いて。

 そしてその事を笑いながら指摘しようとしたところで、イヴから大きな雷を浴びせられて気絶したのだった。


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