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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第6章

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69 番外編28 怪しい部活①


 この学園には、ありとあらゆる部活や同好会が存在する。

 クリケット部、モルック部、ゲートボール部、乗馬部、園芸部、文芸部、新聞部、学園生活部、奉仕部、ホスト部、木工ボンド部などの部活や、マジック研究会、ミステリー研究会、落ちもの研究会、現代視聴覚文化研究会、打首獄門同好会、のばら会、カバディ同好会、野外活動サークル、アカペラサークル、ダンスサークルなの同好会も存在する。


 部活棟から少し離れた小さめの体育館のようなこの施設もとある同好会がある。

 『黒魔術研究会』

 禍々しい字体で書かれた看板がデカデカと壁に付けられていた。

 「本日よりお世話になります。レオナルドと申します。皆さんよろしくお願いします」

 この国の第二王子の入部に騒然とする室内。

 それもそのはず。こんな訳のわからない部活に入る酔狂なんて根暗か陰険かつまはじき者くらいしかいない。

 そんなところにこんなキラキラしい人が入るのだ。あまりの眩しさに拒否反応が起きても不思議じゃない。

 「ん。歓迎する」

 そんな中一人淡々と歓迎したのはイヴだった。

 「おや、貴女もですか?」

 「ええ。この研究会には可能性があるわ」

 「ですよね。私もある目的の為にここへ入ったのですよ」

 すっと手を差し出すイヴ。

 そしてそれを掴んで王子様スマイルで返すレオナルド。

 「こちらこそ、よろしくお願いしますね」

 二人して不敵な笑みを浮かべる。

 「しかし、唯一不満なのは貴女が顧問だという事です」

 「失礼ね。前の顧問が産休に入ったから仕方ないじゃない。それよりも王子殿下がこんな所入っていいんですか?」

 不満そうに語るのはアンという今年入った教師だ。何かとクリスを構おうとする不届ものだ。

 レオナルドにとっては敵と捉えられてもおかしくない人物だ。

 「ええ。私には目標がありますから。それに、愛しのクリスのおに…お義姉様が創設された同好会です。入らない理由はありませんよね?」

 「あー…、なるほどね」

 言動や格好のおかしいクリスのおに…お義姉様の創設した同好会だ。きっとクリスを元に戻す方法のヒントがあるに違いないと考えるレオナルド。

 「まぁ、気長にやってちょうだいな」

 「いえ、すぐにでも結果を出しますよ」

 「どうして? そんな焦ってやるような部活じゃないでしょうに」

 アンとイヴが不思議そうな目でレオナルドを見る。部活なんてそこまで死に物狂いでやるものではないと思ってる二人には奇異に見えた。

 「実はですね、私の大切な人が、ある呪いにかかっていまして…。ここなら何か解決の糸口を掴めるのではないかと思いまして入った次第です」

 「くっ…」

 口元を押さえ、凄い速さで後ろを向いて震えるアンと申し訳なさそうな顔をするイヴ。

 「そ、そうなんだ…」

 「呪いにかかっても尚、気丈に振る舞っている姿を見ると早くなんとかしてやりたいと思いまして」

 「くっく……くぅ…」

 「なんか疑ってごめんね」

 「いえ、いいんですよ」

 「私てっきり、クリスさんとラブラブになるために入ったんだと思いました」

 「何を言ってるんです。私とクリスはずっとラブラブですよ」

 「そうは見えないけど…」

 「ぷふっふ…」

 「貴女はいつまで床で寝転がっているんですか?」

 床で頽れ震えてるアンを冷たい目で見下ろすレオナルド。

 「そういえば、気になっていたのですが、その格好は何です?」

 アンとイヴの格好を見て、少し顔を赤らめる。

 「あぁこれ? なんかルイスが始めた格好なのよ」

 二人とも、大きなとんがり帽子とマントを付けている。

 アンは教師だからだろうか、マントの下には普段着ている白いシャツにロングの黒いスカートだが、問題はイヴの方だ。

 眼帯をつけて、ミニのワンピースと、指抜きの手袋。足の片方は黒いニーソックスだか、もう片方は怪我をしているのか包帯を巻いていた。

 「そういうのが流行りなんですか?」

 「変な事聞くね。これはいくつかある正式な格好の一つよ」

 「正式な格好…ね」

 顎に手をやり、繁々と眺めるレオナルドと堂々と見せつけるイヴ。

 「是非ともクリスにも着てもらいたいですね」

 「むぅ…ここで他の女の名前を出すのは失礼」

 「え…あ…そうなんですか。すいません。何分初めてなものでここのルールを知らなくて…」

 「そんなルールないから」

 流石のアンも呆れた顔で呟いた。


 「あの、本当にこれを言うんですか?」

 「そうよ。何か不満でも?」

 「いやぁ…だって、ねぇ…」

 「もうしょうがないわね。私が見本を見せるから」

 分厚い本を開いて苦い顔をするレオナルドになんの事はないと言って詠唱を始めるアン。

 「我は選ばれし眷属の末裔。太古より荒ぶる生命の伊吹よ、狭間を裂きて現出せよファイヤーボール!」

 ……………。

 「何も…起きませんね」

 「まぁ起きたら困るんだけどね。というか黒魔術研究会は、こういうのを実現させる部活だから。別に出来なくても恥ずかしくないし」

 顔を赤らめ早口で捲し立てるアン。

 すぐ近くではイヴが、カッコつけて何処からか持ってきた杖を掲げていた。

 「黒より黒く…深き漆黒の常闇を纏い…深淵にて君臨する暴虐の奔流よ、世界を灰燼に帰すため天より裁きを与えたまえサンダーボルト!」

 何言ってんだこいつといった顔でイヴを見る。

 プスン…。

 一瞬何もない空間に小さい煙が出た。

 「「!?」」

 「今何か出ませんでしたか?」

 「そ…そうね。こんなの初めて…」

 「もしかして、詠唱の単語を変えれば成功するんじゃ…」

 「一考の余地はある」

 イヴの行った詠唱により他の部員達も試行錯誤を始めた。

 そして、ただの変人集団と思われていた黒魔術研究会だったが……。


 「レオナルド殿下! その目に焼き付けるがいい! 天の怒りは大地を穿つ無数の咆哮! 叛逆の拍動は力の奔流を破壊への衝動へと変える! 無慈悲なる鉄の雨を降らせ賜えレインアロー!」

 いつもの事ながら何言ってんだこいつと思いながらも、イヴの発する言葉によって小さな矢が一本地面に突き刺さって折れた。

 しかし、何もない空間から現象を作り出すのは凄いと感心した。

 現時点でイヴしか成功させていないのだ。

 「凄いですね」

 「まだまだ全然。こんなの初代会長に比べたら」

 どこまで本当なのかは分からないが、初代会長ことルイスは、ありとあらゆる現象を巻き起こすことができたのだそうだ。

 そんな話クリスから一度として聞いた事が無かったが、目の前で起きているものを見たら信じざるを得ないのだが、当時同級生だった筈のアンが目と口を大きく開けて驚いているので、もうどっちが本当か分からなくなった。


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