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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第6章

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65 囚われの王子様他④


 拘束が解けたのか腕の具合を確かめながらジル様、シェルミー様、イヴ様が私の前に歩いてきた。

 部屋の外を見まわし、驚愕に目を見開くジル様。驚き何回も周りを見まわし困惑するシェルミー様。やっぱりといった顔をするイヴ様。三者三様だ。

 というか、イヴ様顔が近いんですが。そんなに顔を寄せられても可愛い私しかいませんよ?

 「これは一体どういう事ですの?」

 「予想以上に凄い事になっていたんだね」

 「あなた本当に何者なの?」

 「えっと…」

 「確かに僕も気になるね」

 「わ、私も気になりますわっ!」

 そんな言われても、どう答えたものか。

 その時、一番グルグル巻きにされていて後回しになっていたレオナルドのロープが解かれたのだろう。

 一瞬で私の前へ文字通り飛んできたレオナルド。

 「全くあなたと言う人はこんなに無茶をして!」

 言いながら私の体や服を色々と触り出す。

 「しかもこんな露出の多い格好をして、襲われたらどうするんです!」

 それに近しいことを今されているのですが…。

 流石にそんなレオナルドに異常を感じたのか、公爵家三人娘がレオナルドを嗜める。

 「ちょっとレオナルド殿下、いくらなんでも女性相手にベタベタ触りすぎでは?」

 「そうだね。いくら婚約者だと言ってもちょっと過保護すぎやしないかい?」

 「ここまで気にしていると何かあるんじゃないかと勘ぐってしまうわ」

 やっぱりイヴ様だけ感がいいですね。その通りです。

 「別に婚約者が危ないことをしていたら心配するのは当然ですよね? というかですね、私のクリスに近づき過ぎてはいませんか?」

 「いやいや、危ない所を助けてくれた彼女に感謝の気持ちを伝えたくてね」

 「そうですわ。私このまま助からないんじゃないかと気が気でなかったんですの」

 「あの時はかっこよかったのに…まるで別人のよう…」

 あの時とは…?


 よく見たらレオナルドの頬が少し腫れている気がする。

 「あれ、レオ様ここ……大丈夫ですか?」

 「あぁ流石は私のクリス。こんなところにまで気づいてくれましたか…」

 私の手を握りしめて満面の笑みを見せるレオナルド。

 「ちょっと、私にも譲ってくださいまし」

 「そうだよ。レオナルド殿下一人で独占してずるくないかい?」

 「離れて…」

 三人がレオナルドを私から引き離そうとするが、レオナルドがそれを阻止しようと私のドレスを掴む。

 そしてイヴ様とシェルミー様も私のドレスを掴んだあたりで嫌な音がした。

 ビリビリビリ─────

 「「「「!?」」」」

 ただでさえ露出の多いドレスは破けパンツ一枚だけになってしまった。どうしていつも私はこんな目に遭うんだろうね? 別に私そんな悪い事してないはずなんだけどな。

 「ちょっと…これは一体どういう事なんですの!」

 「僕もこれにはどう言ったものか………」

 「やっぱり隠していたのね」

 「わぁ! 皆さん見ないでください。これはその……」

 レオナルドが私の前に立ちふさがり大の字で隠そうとするが時すでに遅し。

 小さいパンツの膨らみとまな板を見て、驚愕の表情をする三人。

 「隠しても無駄ですわよ」

 「驚いたな……。まさかレオナルド殿下はそっちの趣味だったなんて……」

 「これはこれで悪くないけど…」

 「何を言ってるんです! クリスは今は男なだけで…」

 そう言うが誰も信じていないですよ。それに一時女だっただけで、元々女装趣味の男なんですよ。

 その時パサッと何かを掛けられた。

 「裸のままで何やってるのよ」

 最後に拘束を解かれたカリーナちゃんが着ていたジャケットを羽織らせてくれた。

 流石はカリーナちゃん。

 まぁ真っ先にやることではあるのよね。

 「…あ、ありがと」

 小さい声で呟くカリーナちゃん。

 「まぁ、無事でよかったよ」

 「私が捕まるなんて油断してたわ。今後は気をつけるわ」

 恥ずかしそうにツンとした感じで言う。

 その時、ジャケットの袖をツンツンと引っ張られた。

 「なぁに?」

 「ねぇ、ソフィアお姉様が見えないけど、どこにいるの?」

 「いや、危ないから家で待っていてもらってるわよ?」

 「え………」

 そして俯き何かを考え出すマーガレット。

 ホントどうしたんだろう? 流石に心細かったのかな?

 「クリス様、このご恩は何と申し上げたら……」

 「いいんですよそんな…。ヨメナさんが無事で良かったです」

 全く。見境なく攫うなんてどうかしてると思うのよね。まぁ、レオナルドの頬の腫れ以外はみんな大事なくて良かったかな。


 「あの……」

 恥ずかしそうな顔をしてジル様が小さく手をあげた。

 「どうかしました? どこか痛みますか?」

 「いえ…その……。ちょっとお手洗いに行きたいと思いまして……」

 あぁ…そうだよね。長い間監禁されていたらトイレとか行けてないものね。

 その辺をよく考えていなかったんでしょうね。

 「実は僕も……」「私も……」「あ、私も行きたいかも……」

 シェルミー様、イヴ様、マーガレットが恥ずかしそうに手を挙げた。

 「じゃあ、まずはここを出ましょうか」

 その後、レベッカ先生先導の元、先ほどのバーへみんなで向かったのだった。


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