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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第6章
424/426

63 囚われの王子様他②


 あんなに大声で叫んだのに全く反応がない。広すぎてそこまで届かないのかもしれない。

 上に上がる階段とエスカレーターを見つけたが、電力が通ってないため動いていない。そりゃあ当たり前よね。ちょっとでも楽しようと思ったわけじゃないわよ。

 階段を上ると、至る所に壁のない部屋があった。恐らくテナントの入る場所なんだろう。これ目的で来る人もいるでしょうね。

 しかしやたら広いな。広いけど隠れられるような場所はない。

 いるとしたらもう一つ上の階だろう。上の階は完全に社員用のフロアだからバックヤードみたいな場所から入るんだろうけど、本当に広くて暗いから分からない。

 せめて案内板くらいあれば良かったのに。

 しかしそれを考えていたのは私だけではないようで。

 「あらクリスちゃん」

 お姉様のグループと合流した。お姉様達も軽く迷っていたようだ。

 「ちょっと広すぎじゃないかしら?」

 「文句はソフィアに言ってください」

 「分かったわ」

 「でもぉこの辺全部お店になるはずよねぇ?」

 「じゃあ文句は言わないでおくわ」

 何のお店が出来るとは言っていないはずなのに、あっさりと手のひらを返したわね。

 「まぁクライブはここに来るまでに何回行方不明になったか分からないしね」

 「お前らがいたずらに懐中電灯の明かりを消すからだろう」

 「お兄様ったら何回か泣きそうになっていましたものね」

 「そうね。傑作だったわ」

 「お前等本当にいい性格してるよ」

 まぁクライブさんはいじられキャラだから仕方ないね。


 しかし、こんな時でも婚活を欠かさないレベッカ先生は流石だ。

 「クライブ君は好きな人いるのかしら?」

 「あ、俺は年下にしか興味ないのでレベッカ先生は対象外です。あと三十歳くらい若けれ…はぁ〜ん」

 レベッカ先生が思いっきり股間を蹴り上げた。

 いくらなんでも一桁の年齢じゃないと恋愛の対象にならないのは異常だと思うんですよね。流石にレベッカ先生四十は超えてないでしょうし。

 股間を押さえ床で悶絶しているクライブさんをゴミを見るような目で見るレベッカ先生とお姉様。

 そんな時、残りのアンさんのグループも合流した。

 まぁ、駅の構造上どこから入っても同じ場所に辿り着いちゃうのよね。改札口を超えなければね。

 「何やってんの?」

 ゴミを見るような目で吐き捨てるように言うアンさん。そしてクリちゃんとカスタさんも状況を察したのか微妙な表情をしている。

 「結局みんな集まっちゃったのね」

 「そうですね。工事中でどこにも隠れられそうな所はないですし」

 「このフロアには人の気配がありませんね」

 「となるとこの上なんだろうけど、どこから行くんだ?」

 「従業員専用の入り口とかあるはずなんだけど、暗くて現在地すら分からないわね」

 その時後ろから声がした。

 「上へ上がる階段を見つけました………って皆さん床に座ってどうなされたんです?」

 「あんたが急に現れるからでしょう!」

 「それは失礼しました」

 音も気配も無く現れたのはシグマさんだった。

 「どこから入って見つけたのよ?」

 「窓をバリーンと割って…」

 「後でソフィアに謝らないと……」

 「冗談ですよ。入り込めそうな窓があったので外して入りました。流石に壊しませんよ」

 こんな状況で笑えない冗談を。


 「とりあえず、二階と三階の間で行き来できそうな所は全て人員を配置済みです。屋上からアプローチした方も恐らく同じでしょう」

 「流石普段バカなことしていてもこう言う時は優秀ね」

 「ありがとうございます。いい殿方を紹介していただければ問題ございません」

 「ここはボスの娘であるアンが責任を持って見つけてあげるべきよね」

 「そうだな」「そうねぇ」「そうですね」「それしかありませんね」

 「ちょっと待って。何でみんなそんな一斉に私に振るのよ。私にだって出来ることと出来ないことが…」

 「期待していますよ」

 出来ないって言ったら後ろからナイフを投げつけられそうな雰囲気がある。レベッカ先生ですら空気を読んで黙っているのに。

 「ではこちらです」

 シグマさんに案内され三階へと上る。

 上った瞬間にさっきまでとは違う感覚があった。

 「確かにいますね」

 「こっちのが数多いんじゃないか?」

 漏れ聞こえる声から、それなりの人数がいるようだ。

 「仕方ない。あいつらの無力化は俺達がやっておこう」

 「そうね。今日は暴れたりないなって思ってたのよね」

 「じゃあーあ私もぉ」

 「お前はダメだ」

 「何でよお」

 「俺らの分まで持ってっちゃうだろ」

 「そうね。エリーはクリスといるべきね」

 「そぉんなぁ」

 なんて物騒な会話をしているんだ…。エリーも悔しそうにしないの。

 「まぁ、この階にはいないでしょうしね」

 「サクッと終わらせちゃいましょ」

 お姉様とかクライブさんとアンさんは、恍惚の表情で光の漏れている部屋へゆっくりと進んでいった。

 「じゃあ四階にいきましょうか」


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