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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第6章

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62 囚われの王子様他①


     *     *     *


 「で、結局どこに捕らわれているの」

 「お姉様の方では聞けなかったんですか?」

 「聞く前に発狂しちゃったんだもの。聞けるはずないじゃない」

 あっけらかんとした顔で言うものだから、何も言えなくなってしまった。

 「アンさんの方は?」

 「もう少しだったんだけどねぇ。責めがキツすぎたのか途中からうんともすんとも……」

 この人達全然ダメじゃん。すーぐ遊んじゃうんだから。

 「そういうけどクリスの方はどうなのよ」

 「ちゃんと聞き出しましたよ」

 「さっすがクリスね」

 もし私が失敗してたらどうしていたんだろうか?

 「で、どこなの?」

 「あそこです」

 私は西側の方を指差した。

 「え、どこよ?」

 「建設中の西駅の中だそうです」

 「はー……なるほどね。盲点だったわ」

 間抜けな顔したアンさんが納得する。

 「確かに外側は完成しているし、後は内装だけだしね。周りの片付けが終わってからだから、暫くは中は人がいないわよね」

 リンダ様が倉庫とか言及しなかったって事は、恐らく貴族のタウンハウスとそんなに違いがなかったからなんだろう。

 恐らく職員の仕事場とか駅長室や応接室なんかに捕らわれているのかもしれない。

 ここを表に歩いていくと大きい噴水広場があるけれど、この辺は元々建物が少なかったから、この通りから西側を再開発しているのよね。

 噴水から西側にちょっと歩くと大きな駅舎が見える。

 こっち側あった外壁は撤去されているが、代わりに大きな駅舎が立ち塞がっている。

 駅舎の前には資材やらが置かれているが、人は見当たらない。勝手に入ろうと思えばいくらでも出入り出来そうだ。

 それにここを選んだ理由も何となく見当がつく。

 王妃様直々のプロジェクトだ。誘拐事件によりネガティブなイメージをつけることにより、依頼を受けたアンバーレイク家と依頼した王家にダメージを与えることも出来るだろう。

 ましてや罪をなすりつけることだってやろうとすれば出来るだろう。


 みんなで通りから歩いて駅舎に近づくが、分からなければどこぞの貴族の屋敷を改装中と認識してもおかしくないわね。

 そのくらい立派な駅舎だ。南駅より少し小さいが十分だろう。

 上を見上げるが窓のある辺りに僅かに光るものが見えた。

 「お姉様あの辺に誰かいるかもしれませんね」

 「じゃあここからは別れていきましょうか」

 そう言った瞬間にメイドさん達や、アンさん達が連れてきた従者の人達が一斉にどこかへ飛んで消えてしまった。凄いなぁ…いつかアレ出来るようになりたいな。

 私達は正面から堂々と入る。

 「暗いわね」

 そう。もう夜だし建設中だから明かりがない。窓がある所はうっすらと見えるけど、そうじゃないところは完全に闇だ。

 「じゃあはいこれ」

 お姉様が手渡してくれたのはペン型の懐中電灯だ。

 クリちゃんとカスタさんは頭に「?」をつけながら戸惑っている。

 アンさんが丁寧に教えている。こういうところはちゃんとしているのね。

 「凄いものがあるのねぇ…」

 「レベッカ先生なんで付いて来ちゃったんです?」

 「だって私一人置いていかれても困るし」

 「危ないですよ?」

 「どんだけ修羅場をくぐって来たと思ってるのよ」

 「多分ですけど、レベッカ先生のお眼鏡にかなうような男はいませんよ」

 「まぁ…そうなんだけどさぁ。一人残されても寂しいじゃん? 実際残ってるわけだし」

 「「「…………………」」」

 言葉に詰まるくらいジョークが重い。みんなも一斉に明後日の方向を向く。

 「わ…私達はこっちを探すわね」

 「ぼ…僕も」「私もー」

 アンさんはクリちゃんとカスタさんを引き連れて右のほうへ。

 「じゃあクリス。私はこっちから探していくわね」

 「あ…はい」

 お姉様はクライブさんとエリーを連れて左のほうへ行ってしまった。

 みんなレベッカ先生と絡むのが嫌なのか、率先して暗い方へ歩みを進めていった。

 あのエリーでさえ目を合わせずに黙っていくなんてどういうことなのかしらね?


 「あら、じゃあ私達はここをまっすぐ行って探しましょうか」

 「そうですね……」

 いつの間にか場を仕切るレベッカ先生とウィリアムと私の三人で捜索する。

 といってもこんなに暗い場所には流石に隠れていないわけで、光源のあった上の階へ行くための階段とかを探している。

 これ外から侵入した方が早かったかもしれないわね。

 でも外から入れる場所なんてあったかしら?

 そう思いながら進んで行ったんだけど……。

 「ウィリアム君は好きな子とかいるのかしら?」

 「は…はぁ? そ…そそそ……そんなのいねーし」

 急に声をかけられたからだろうか焦って否定するウィリアム。

 「あらそう? そういえば風の噂で聞いたんだけど、ウィリアム君年上が好きなのよね?」

 「そうですね」

 「私はどうかしら?」

 「……………………………………………………………考えておきます」

 長考した挙句保留したウィリアム。きっぱり拒否しないんだ。

 「クリスさんは好きな人いないの?」

 「いないですねーって今そういう事話してる場合にゃああああああああ!」

 振り返ると、懐中電灯を顎下から当てているレベッカ先生。

 思わず叫んでしまった。

 「おバカ! バレたらどうするんです!」

 「ごめんて。場を和ませようとしただけじゃない」

 ロクなことしないなこの人。簀巻きにしてこの辺に捨ておこうかしら?


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