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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第6章

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61 遊んでたわけじゃないですよね?


           *      


 「アガサさんにクラリッサさんお店をお貸しいただいてありがとうございます」

 お店を貸してくれた本当のアガサという初老のおじさんとクラリッサさんという妙齢の女性にお礼をする。

 「なぁに気にすることないよ」

 「そうよ。最初は何だろうと思ったけど、見ていて面白かったしね」

 誘拐犯の一味から情報を聞き出すためにお店を借り、私達が店内で張っていたのだ。

 本当に来るのかは半信半疑だったが、それっぽい男が一人来たので様子を見ることにした。

 その後に本物が来ても対応できるようかなりの人数で張っていたが、最初の一人しか来なかったし、これがターゲットでよかった。

 ただの下心丸出しのスケベオヤジだったけど、お酒に弱いのかカクテルを何杯も飲ませたらベロンベロンになって聞いてないことまで洗いざらい吐いてもらった。

 お陰で労せずに情報を引き出すことが出来たので、用済みになったおじさんはメイドさん達で訳知りの衛兵さん達のいる詰所へ放り込んでもらった。

 まぁ、私も久しぶりに飲めて楽しかったし良かったわ。

 それにしても、あの程度のお酒と量で酔うなんてまだまだね。


 「まぁレベッカちゃんのお願いなら断れないからね」

 そう。レベッカ先生がそれぞれのお店を回って軽くお願いしたら、二つ返事で了承してくれたのだ。

 どうやらこの辺のお店には顔が広いんだそうだ。

 流石に後々迷惑を掛けるわけにもいかないから、看板は急ごしらえで作ったんだけど、スパイダーズウェブ(蜘蛛の巣)ってどうなのよ?

 レベッカ先生が「ここはこれにしましょう」って言うし、他に代案も無かったからそれにしたけど、怪しさ満点よね。

 「まぁ深くは聞かないけれど、嬢ちゃん若いうちから飲むのはあまり関心しないよ?」

 「そうね。もう少し大きくなってからの方がいいわよ?」

 「はい……そうですね」

 「だから言っただろ? 無理して飲む必要はないって。烏龍茶でよかったじゃんか」

 ウィリアムからも横槍が入った。

 「いや、やっぱリアリティを持たせるために本物を使った方がいいでしょ? もし取り上げられてお酒じゃないってバレたら、それこそ話が進まなかった可能性もあるのよ?」

 「ぐっ……だけど……」

 まぁウィリアムの言うことは尤もよね。心配してくれるのは分かるんだけど、今更だし…ね?

 「私はぁ別に慣れてるならいいと思うけどなぁ。本当に美味しそうに飲んでるし」

 エリーからの援護射撃があった。

 「そうよね。そうよね」

 「そうね。確かに飲み慣れている雰囲気はあったのよね」

 「私も長いことやっているが、あんなに堂に入った飲み方は中々見ないねぇ」

 「そうでしょうとも」

 「しかも酔ってないときたもんだ。大したもんだよ」

 「いやぁどうもどうも」

 「本当に学生さんなのよね?」

 あれ、これ下手するとバレるんじゃないかな? バレたところで別に構わないんだけどさ。

 そんな感じの事を話していたら、向こうも終わったのかお姉様のグループ(お姉様、クライブさん、クリちゃん、カスタさん達)とアンさんのグループ(アンさん、シグマさん、プロフィアさん達)がやってきた。

 クリちゃんとカスタさんは顔が真っ白だけどどうしたの?

 というか、プロフィアさん始め、何でみんなボンテージファッションなんですかね? そう言うお店をやったという事ですかね?

 こんな時まで趣味に走るのはどうかと思うんですよ……って思ったんだけど、私も変に突っ込むとお酒飲んだことがバレるから、今回に限り見逃してあげるわ。


 「そっちはどう?」

 「バッチリです。お姉様」

 「そう。それは良かったわ。こっちは泣いてばっかりで全然話してくれないんだもの」

 何をしたんですかお姉様? クライブさんも気まずそうにそっぽを向く。

 一緒についていったメイドさん達は疲れ切った顔をしている。

 情報を聞き出すのが目的ですよね?

 どうもお姉様はこういうのがあんんまり得意なイメージ無いのよね。

 それはそうとツヤッツヤの変態集団はどうしてボンテージなんですかね?

 唯一クオンさんが恥ずかしそうにしているけれど、普段の格好と露出度あまり変わらなくないですかね?

 シグマさんにレベッカ先生までそんな格好をして…。

 「さ…流石に悪漢相手に婚姻届を書かせようなんて事はしていないわよ」

 「そうですよ。私達だって流石に相手は選びます」

 「何も聞いてないんだけど」

 聞いてはいないけど、白い皮のドレスって時点で信用できないんですよ。

 そしてその胸に挟んである紙はなんですかね?

 「あらこれ? これは……その……何でもないの」

 「そうです。たまたま入り込んでいただけで……クリス様が署名してくれるならお渡ししますよ? というか書いてもらってもいいですか? さぁ!」

 「いやぁ…いいかなぁ…。またの機会に……ね?」

 今度にしてって言ってるのに、紙を開いて押し付けるの止めてよ。書かないからね?

 婚活系女子って何でこんなに重いの? せめてもう少し普通の女子力を磨いてからそういう事してほしい。高いのは攻撃力だけじゃないのよ。

 「私の師匠はこれで結婚できたと言っていたのですが…」

 「うちの退職した学年主任もこれで結婚できたって言ってたのに……」

 他人の真似ばっかりしてるから行き遅れるんじゃないですかね? 性格にも難ありだし。


 「ところで、そっちは情報を巧く聞き出せたんですか?」

 「それがですね。情報の前にトラウマを引き出してしまったようで、殆ど……」

 プロフィアさんが残念そうに笑いながら言う。

 何でこの人どんどんと残念な感じになっていくんだろう……。

 そして胸を曝け出しているもっと残念な人には一切ツッコミは入れてやらない。物欲しそうに唇に指を当てているけど、突っ込まないわ。

 ウィリアムやクリちゃんが顔を真っ赤にして居心地悪そうにしている。

 ガン見しているクライブさん……は役に立たなそうなので、もう一人の保護者のエリーに何となく伝える。

 「え? ダメなの?」

 あぁ…この感じはエンジェルシリカ領では当たり前なんだな。

 でも、この後のこと考えると流石にマズイので、エリーから服を着てもらうよう言ってもらった。

 「おかしいわよね。服を着ろだなんて」

 「ホントよねぇ。肌を見せてこそだと思うのだけれどぉ」

 「やっぱり、服を着るのおかしいですよね。これも脱いだ方がいいですよね」

 「そうね。私もこれ脱いだ方が筋肉がはっきり分かっていいわよね」

 「いい訳ねぇだろバカ!」

 流石にお姉様がツッコミを入れた。ですよね。

 お姉様に怒られたからなのか渋々服を着るエリーとギガさん。

 二人ともパッツパツだ。もう少しゆったりしたものかマントみたいの無かったんですかね?

 そしてずっと直立不動のクライブさんの脛を思いっきり蹴ったのはアンさんだった。

 「お前らも牢屋に入れてやろうか?」

 「「「すいませんでした」」」

 流石にマズイと思ったのか、エリーとギガさんがふざけることなく謝った。

 クライブさんは地面で悶えながら謝罪していたが、どことなく嬉しそうに聞こえるのは気のせいよね?

 何でこんなに締まらないんだろうね?

 自己主張の激しい人がこんな仕事やっちゃいけないと思うの。

 ずっと店の前で馬鹿騒ぎをしていたので、アガサさんとクラリッサさんが真顔で固まっていた。

 なんか、本当にすいません。


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