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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第6章

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58 探しにいこう②


 そこでまた考え込むお姉様。

 「そういえば、さっき馬車で移動したって言ったわよね」

 「え、えぇ」

 「移動中何か見えなかったかしら?」

 「何かって……。強いて言えば赤と白の変な形の塔だけがいくつか真横に見えたわ」

 赤と白の変な塔って…タワークレーンかしら?

 「なるほど。それはタワークレーンね」

 「タワークレーン?」

 何人かの先生達が首を傾げる。

 「大型の建物を建設する時に使うものですね」

 「あれが…」「そういう名前なんだ」「知らなかった」「タワークレーン…。言い得て妙ね」

 話が横にずれてしまったわね。

 「まぁ、アレを使ってるのはアンバーレイク建設だけなんだけどね。分かりやすい目印だわ」

 ホントソフィアの所は手広くやってるよね。まぁ、王妃様に頼まれて仕方なくなんだろうけどさ。

 「建設中の駅は西と東があるんだけど、タワークレーンがまだ立っているのは東側の駅ね。西側はあと内装工事だけだから、撤去しているもの」

 「じゃあ東地区って事ね」

 「地図あるかしら?」

 「あ、はい。こちらに」

 先生の一人が地図を持ってきてテーブルの上に広げた。

 「アレが真横に見えるのはこの辺ね」

 「何でそう断言出来るの?」

 スミカ様が不思議そうに問う。

 「ここだと、建物が邪魔して見えないし、こっちまで行くと真横見えないし、何より壁が邪魔して見えないわ」

 「なるほどねぇ」

 お姉様って意外と論理的に考えられるんだなと感心してしまった。

 「となるとぉ、この辺ねぇ……ってこの辺貴族のタウンハウスばっかりの場所じゃない。しかもあの子達の家が集中しているし。物量で押せそうではあるけれどぉ…」

 「うちのメイド達に調査に行かせたから、結果を待った方が早いかしらね」

 しかしその瞬間、自信満々な顔をしていたお姉様が何かに気付いたのか顔を険しくさせる。

 「あぁダメね。ここの貴族街には飲み屋は一件もないわ」

 「本当だ」

 「あら本当ね」

 地図を見ると、閑静な住宅街だ。飲み屋さんどころかお店が一つもない。

 「あの子達の報告待ちになるかしら…」

 チラと時計を見るお姉様。つられて私も見る。

 あら、暗いからもういい時間だと思ったけど、まだ五時前なのね。ホント暗くなるの早いんだから。損した気分になるわよね。

 「まだ開店時間前じゃな」

 学園長が時計を見ながら呟く。

 「ギリギリの時間ね」

 悔しそうに呻くお姉様。

 しかし、お姉様の考えはいい線いってたと思うんだけど、これでまた振り出しだわ。

 そういえば、と。街に買い物に出た時の事を思い出す。確か、一ヶ所だけアレが見えた場所があったのよね。どこだったかなと、地図を確認する。

 ……あった。


 「お姉様、もう一ヶ所だけあのタワークレーンが真横に見える場所があります」

 「え、どこよ?」

 私はその場所を指で指し示す。

 「ここ?」

 みんな半信半疑で問う。

 その時、状況を見守っていたレベッカ先生が口を出した。

 「確かにここ見えるわね。よく男漁りに繰り出すから知ってるわ」

 「レベッカ先生…」

 「ちょ、何よその顔は! 別にいいでしょ! 私だって結婚したいんだから」

 「分かります。そのお気持ち」

 疲れ切ってぐったりとしていたシグマさんが、急に元気になって同意してきた。

 「あら、あなたも?」

 「はい。同士ですね」

 「あーもう話進まないから、婚活は向こうでやって」

 お姉様が虫を追い払うようにしっしっと手で払う。

 「失礼ね」なんて言ってるけど、今話す内容じゃない。

 「でもここ西地区よね」

 「そうなんだけど、ここに大きな噴水のある広場があって、建物も比較的低いんで通りから余裕で見えますよ。それにここ、建設中の駅舎は見えないけど、タワークレーンはそれより高いので、それだけ見えるんですよ」

 「なるほどね。盲点だったわ。赤と白の塔だけが見える…と」

 「ここら辺というとぉ、あら! 三つあるわね」

 該当の場所には飲食店が多く立ち並ぶが、お酒を飲めるお店はメインストリートの裏手側に三つだけだった。

 「今から行けば…ギリギリね」

 「三つなら別れて調べた方がいいわね」

 「そうね」

 そんな時、学園長室の扉がノックされた。


 近くにいた先生が開けて確認する。

 「あの…クリスさんの所のメイドさんなんですが」

 「通してあげて」

 スミカ様がすぐに答え、うちのメイドさん達が通された。この人数が入ると、より狭くなるわね。

 「報告します」

 お姉様が軽く頷いたのを見て、フィジーさんが答える。

 「例の生徒達のタウンハウスを調べましたが、人のいた形跡は見つかりませんでした」

 「ご苦労様」とお姉様が一言労い、先程話し合った可能性を伝える。

 「じゃあ、ここに的を絞って見つけるわよ」

 一同頷き部屋を出ようとすると、先生達から制止された。

 「ま、待ってくれ」

 「何かしら?」

 「私達にも何か出来る事はないだろうか?」

 「ないわ」

 お姉様がピシャリと言い放つ。

 「だが…」

 「そうね。強いて言えば、この人達が学園内にいたら、勝手に動かないようにしてもらえると助かるわ」

 そう言って、お姉様は胸ポケットから紙を一枚取り出し机に置く。

 「これは?」

 「あっち側と内通している教師のリストよ」

 そう言って先生達が一斉に覗き込む。

 そんなリストいつの間に作ったんだろうか。

 「そんな…。あの先生が?」「一番無いと思ってたのに」「マジか」「あれ、でもいたかな?」

 みんな信じられないといった顔をしている。

 まぁ、仕方ないよね。

 先生達がザワザワしている間に、私達は部屋を抜け出した。

 学園長とスミカ様だけがじっと見つめていた。


 「待ちなさい。私は行くわよ」

 廊下に出て歩き始めたところで呼び止められる。

 振り返るとレベッカ先生が立っていた。

 「危ないですよ?」

 「あそこのお店は顔がきくの。私が行った方がスムーズだと思わない?」

 確かに。お店の人と交渉する時間にどれだけ取られるか分からないものね。

 お姉様も同じ事を考えていたのか、簡潔に「男漁りをしないならいいわ」と言う。

 いやいや、こんな時にする訳ないでしょうに。

 「ぜ…善処するわ」

 なんだろう。うちのメイドさん達と同じ匂いがする。

 校舎を出ると、完全に暗くなっているというのに一人の人物が立っていた。

 「クリス!」

 「え…リアムどうしたの? こんな時間にこんな場所で」

 「レオを探しに行くんだろ? 俺も連れて行ってくれ」

 そう言って頭を下げるウィリアム。

 「いや危ないし…」

 「そうよぉ。いくらリアムちゃんでも怪我しちゃうかもしれないわよぉ…」

 「分かってる。でも友達を助けたいんだ。ここで何にもできなかったら後悔しちまう。頼む! 邪魔はしないし無理もしない。だから連れて行ってくれ! 頼むっ!」

 再度頭を下げ続けるリアム。なんかスピンオフ二作目の刑事みたいな頭の下げ方だ。

 まぁ、ここまで必死になっているんだし、断る理由はないかな。

 「お姉様……」

 「いいわよ。でも、本当に危ないなと思ったら引くのよ。分かった?」

 「分かった。感謝する」

 「なんか青春感じちゃうなぁ…」

 後ろでレベッカ先生が艶っぽい声で呟く。レベッカ先生年上だし、年上好きのウィリアムもワンチャンあるんじゃないかしら?


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