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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第6章

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57 探しにいこう①


           *      


 今回はいつもの無駄に広い会議室ではなく、学園長室に案内された。

 学園長室へ入ると、執務机に学園長が座り、その横にスミカ様が立っていた。

 そして、執務机のこっち側には見知った顔がいた。

 「あらぁ、クリスちゃん、サマンサちゃん遅かったのね」

 「あなたにちゃん付けされると虫酸が走るのだけど」

 「つれないわねぇ…」

 頬に手を当てクネクネするエリー。

 「そんな事より勢揃いね」

 その言葉にただ頷くクリちゃんとカスタさん。お姉様がいるからだろうか、凄くおとなしい。いや、よく見ると緊張しているというか怯えてる?

 普段や学園内でのお姉様を思い出す。納得。

 エリー達を呼びに行ったであろう先生達と、アンジェさん達も部屋の中に控えている。こんなに人数がいるのならいつものところで良かったんじゃないですかね?

 しかし、先生達も戸惑っているな。何でこの子達が? って顔をしている。

 「こんな時間にすまないね」

 「いいえ。寧ろ遅すぎるくらいですわ」

 代表してお姉様が学園長と話をする。

 「こんな時間まで決断できずに申し訳ない。学園を代表してお願いしたい。どうかうちの生徒を救ってはくれないだろうか?」

 「いいわ。でも、その前にそちらのリンダ・スファレライトチューベローズ侯爵令嬢について説明頂けるのよね?」

 お姉様が顔を向けた方向を見ると、気落ちした一人の女生徒が立っていた。

 ジル様のお茶会で唯一失踪事件に関わってない人だ。この人が元締めなんだろうか。

 「彼女から話を聞いて、我々の手に負える内容ではないと判断しました。そこで、あなた達にこの件を解決していただきたくお呼びしました」

 スミカ様が淡々と告げる。思うところはあるが今は言うべきではないといった顔をしている。後で色々聞かれるんだろうなぁ。

 「もっと早くにこっちに振ってくれればここまで被害が広がる事は無かったと思うのよ」

 「そう…ですね」

 スミカ様が言葉につまり、学園長は苦々しい顔をする。

 「まぁいいわ。知ってる事教えてくれる?」


 リンダ様が言うには、今回の失踪事件は王家や学園に悪い評判をつけようとした事。そして、それをその生徒の親が指示した事。

 悪評を流し、自分達に有利に働くよう別の噂を流布させようとしていた事。

 そんな中、トミーさんとカイラさんの件はその親の雇った者達の暴走である事。

 そして、事が大きくなり後には引けなくなったと判断した自演をしていた生徒達が、親に報告せずにその者達を使って、ジル様達三公爵家の令嬢とレオナルド殿下。ソフィアと間違ってマーガレット達を誘拐したんだそうだ。

 そしてその者達の狙いが、昔の貴族と平民が完全に分け隔てられた時代を取り戻し、富を誘導しようと画策しているとの事だった。

 その計画にどうして誘拐が必要なのかと思ったけど、どうやら昔ながらの考えで、王家や公爵家を脅し利益を誘導しようとしていたんだそう。

 そんなの軍を向けられたら終わりだと思うのだけど、やっぱり領地経営とかしていなかったのか、そこまで考えていないんだそう。

 当初の悪評から流れを変えようとしたところまでは分かるんだけど、後半は完全に悪手よね。

 微妙に親と考えがズレているし。

 リンダ様はそんな彼らに嫌気が差したのだという。

 そして、「クリスがジル様達を誘拐した」という噂を流すよう指示されたんだそうだ。

 とんでもないことよね。

 確かに、ジル様とのお茶会。レオナルドとシェルミー様と街へ出かけた事。イヴ様と寮内で鬼ごっこした事。

 みんな攫われる前に私と会っているから、罪を擦りつけやすかったのだろう。

 でも、リンダ様の心境の変化か、元々忌避していたのかは分からないが、学園長の元へ事件の内容を打ち明けたようだ。

 「とってもお粗末な計画だわ。打算的なのに杜撰ね。まぁ家の名前を聞いたら納得だけれども」

 お姉様がクスッと小馬鹿にしたように笑う。


 「それで、レオナルド殿下達はどこにいるのかしら?」

 それが一番重要な事だわ。

 「分からない……」

 「「分からない?」」

 呟いた言葉がお姉様と被る。

 「分からない訳ないでしょう? あなた達がいた場所よ? まさか此の期に及んで時間稼ぎをしようとしてるんじゃないでしょうね?」

 言葉は淡々と喋っているのに、刺々しく冷たい。横にいたクリちゃんが「ヒッ…」と小さい悲鳴を出す。

 よく見ると先生達も直視出来ないのか下や横を見ていたりする。

 「違うの。本当よ」

 泣きそうになるのを堪えながら訴えるリンダ様。

 「学園からそこまでは用意された馬車で移動するのだけど、誰のものでもない屋敷だから、持ち主も場所も分からないのよ」

 まぁ足が付くような事しないものね。ただ、王都でタウンハウスを持ってる貴族はいっぱいいるだろうし、場合によっては商人とか官僚の屋敷の場合もあるのよね。

 「他に何か情報とかないかしらぁ?」

 緊張で張り詰めていた空間にエリーの間延びした声が響く。

 「えっと……あの……」

 まぁ、戸惑うのも分かるわ。見た目筋骨隆々の角刈りなのにオネエ言葉なんだもの。だが、少し空気が和らいだのは事実だ。

 「あ…」

 「あら、何か思い出したぁ?」

 「誘拐した人達の一味が街で飲んでいるって言ってた」

 「あらぁ…」

 「飲み屋ってこの王都に何件あると思って…」

 確かに。それをノーヒントで見つけ出すのは至難の業だろう。

 一体どうしたものか。

 

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