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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第6章

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56 来訪者


           *      


 玄関の扉を開けると、そこにいたのはボロボロになったディンゴちゃんと見覚えのある男性と見知らぬ女性の二人だ。

 格好からして、この人達がシャリオさんとディオンさんなんだろう。

 「ごめん…クリス。助けて欲しいの」

 そう言って泣きそうになるディンゴちゃんをもう一人の女性が頭に手をポンと乗せた。

 「すまない。我々の失態だ。本来であれば我々だけで対処しなければならない案件だが、今回ばかりは…」

 軍人さんみたいな喋り方をする人だな。

 「とりあえずここでは何なので、中へどうぞ」

 部屋の中へ案内し、リビングの椅子に座るよう促した。

 「早速だけど、レオナルド殿下の件よね?」

 お姉様が座ると同時に口を開いた。

 「はい…。昨日出かけられた後から戻ってきていないのだ。一応外出時には我々の内誰かが監視についていたのだが、完全に油断していた。ストーンローゼス公爵令嬢と話をしていたので問題ないだろうと、向こう側の従者と一緒に見守っていたんだ」

 「何? 攫われている瞬間に指を咥えて見ていたってワケ?」

 「ちょっとお姉様」

 「いや、いいんだ。事実だからな。事実、後ろからの襲撃に気づかなかった。気づいたのは辺りが完全に暗くなってからだった」

 「くっ…(お酒さえ飲んでなければ……)」と悔しそうに下を向くが、今微かにお酒飲んでたって聞こえたんだけど、気のせいよね?

 「で、シェルミーの所の従者はどうしてるの?」

 「今も寝込んでいる」

 二日酔いじゃないわよね?

 お姉様が険しい顔で考え込んでいる。

 「それで、一昼夜向こう側の従者達と捜索していたが見つけることが出来なかったんだ…」

 「そうなんですね…、ところで…えーっと……」

 「あ、名乗るのが遅れていたな。私はレオナルドの従者兼護衛のディオン。こっちのデカイのがシャリオ。そしてこっちがディンゴだ」

 シャリオさん言われた人はずっと腕を組んで目を瞑ったままだ。微動だにしないが、もしかして寝ているって事はないわよね?

 ディオンさんが肘でつつくと「んぁ!」と声を上げて目を見開いた。

 「……あぁ、クリス嬢そのなんだすまないが手伝ってくれると助かる」

 「私からもお願い」

 「力を貸してくれ」

 三人とも一斉に頭を下げてきた。

 「頭を上げてください。私達も探しに行こうとしていたところですから」

 しかし一向に頭を上げる気配がない。もしかして疲れて寝ているなんて事ないわよね?

 お姉様の方を見ると未だに考え込んでいる。

 その時、またぞろチャイムが鳴った。今度はイータさんが確認しに玄関へ向かった。


 「ちなみに向こう側の従者さんは今どうしてるんです?」

 流石に寝ていなかったようで、頭を上げたディオンさんが答える。

 「流石に私達と同じように起きている事など出来ないからな。今は交代で休憩しながら捜索している。無論この学園の教師陣と連携をとってはいる。いるのだが、如何せんどこをどう対応したらいいのか分からない様子だ」

 「公爵家や王妃様とかには報告はしたんですか?」

 ここが一番気になるところなのよね。

 「現時点では報告はしていない。いや、どう報告すべきか学園側で協議中といったところだろうか」

 まぁそうだよね。安全だと言われてる学園で相次ぐ自作自演の失踪事件。その後に本当の失踪事件。そして今度は王家と公爵家が狙われたんですもの。安全神話が崩壊してしまっては、どう取り繕うことも出来ないでしょう。

 まぁ、エテルナ様の事だから既に知っていて、こっちに任せて口を出してこないなんて可能性もある訳で。

 そんなエテルナ様の部下が今目の前で歯切れの悪い言い方しかしないのは、恐らく板挟みになっているからなんだろうな。

 しかし、学園内を捜索してもいないって事はもう学園外しか可能性はないのよね。

 先行してうちのメイド達が、その可能性を考慮して学園外に行ったけど、これは報告を待ってから動いた方がいいかもしれない。

 お姉様も同じ事を考えていたのか、そう口にした。

 「恐らくだけど、もう学園の中にはいないでしょね。内部の人間が手引きしているんだもの。態々ご丁寧に学園の中に閉じ込めておく事はないでしょうね」

 「なるほど……」

 「それで、今うちのメイド達と部下達に例の自演をした家のタウンハウスを捜索させてるわ。自分達より家格の上の人間をその辺の倉庫や廃屋に監禁するなんて恐れ多くて出来ないでしょうからね」

 お姉様って結構ちゃんと考えてるんだなぁ…。パワープレイばっかりしてるイメージだったわ。

 「他の可能性は考慮しないんですね……」

 「侯爵令嬢に手を出した時点で後戻りできないなとは思っていたのよ。まぁ、流石に予想より早くて手を打つ前にやられてしまったのだけどね」

 悔しそうに顔を顰めるお姉様。

 そんな時、玄関から戻ってきたイータさんがおずおずと話しかけてきた。

 「お話中失礼します。学園の方がお越しになったもですが、お通ししてもよろしいでしょうか?」

 「いいわよ。寧ろ遅すぎるくらいよ」

 イータさんが再び玄関へ戻り呼びにいった。

 「こんな時間に済まない…」

 私達の前に現れたのはレベッカ先生だった。

 「私には何が何やら分からないのだが、学園長がお呼びでな。申し訳ないのだが来てもらってもいいだろうか?」

 「えぇもちろん」

 それ以上は言わずに学園長の元へ向かったのだった。


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