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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第6章

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52 メアリーなりの気遣い


           *      


 寮の自室へ戻ると、颯爽とソフィアが出迎えてくれた。

 「おかえりクリス。何か変なことされなかった?」

 言いながら体のあちこちを弄るソフィア。そんな暴力振られるような事する人いないでしょうに。

 そしてあることに気づいたのか、動きを止めるソフィア。

 「ソフィアどうかした?」

 「何…このドレス……」

 「あぁこれ? いいでしょう。ヨメナさんにもらったんだ」

 「私もいただきました。色違いですがおそろですよ」

 それを聞いてワナワナ震えるソフィア。

 「ずるい……」

 「え?」

 「ずるい! こんないいドレスそうそう手に入るもんじゃないわよ。うちの領都の駅前一等地が余裕で買えるわよ」

 あ、ソフィアでもこのドレスの凄さが分かるんだ。

 「後でヨメナさんに聞いてみたら?」

 「うん。そうする。最悪土下座してもいいわ」

 そこまで!? 確かにこれすっごくいいのよね。重厚な生地なのに重さを感じないし、動きやすいし。

 「ところでジルのお茶会ってそんな美味しいもの出たの?」

 いくら公爵家同士とはいえ呼び捨てって…。

 そんなソフィアは今度は犬のようにあちこちをスンスンと匂いを嗅ぎ出す。人前では絶対にやめなさいよ?

 「別に普通よ? サンドウィッチにスコーン。あと焼き菓子ね。えーっとタルトだったかな。あ、タルトって言ってもソフィアの想像するようなやつじゃなくてベイクウェルタルトっていうので…、その他にはカップケーキがいくつか……」

 「それはそれで美味しそうね。でも違うのよ。甘い匂いがするのよね。特にメアリーの方から」

 「あぁ…。クレープ食べに行きましたからね」

 ソフィアの目が鋭く光った。

 「どういう事? 散々お茶とお菓子食べた後にクレープ食べに行ったの?」

 グイグイと迫り来るソフィア。そんなに気になるところなの?

 「いや、最初はメアリーが今川焼きの美味しいお店に連れてってくれるって話だったんだけど、レオナルド殿下が来て一緒にクレープ屋さんに行くことになったの」

 「レオナルドが来たからどうしてクレープ食べる話になるのよ。というかその今川焼きも気になるんだけど!」

 高価なドレスだからか、掴むことはせずに問い詰めてくる。珍しく理性が勝っているわね。

 「だから、こんな甘い匂いさせてるのね。よくこのドレス着て行ったわね。恐ろしくて気軽に着ていけないわよ。どういう神経してるのよ」

 あ、気になるところそこなんだ。

 いや、着替えてから行こうと思ったんだけど、レオナルドに止められたのよね。


 「まだこんな時間か。今から行きましょ。私さっきまで会議でお腹ペコペコなのよ」

 「そうなんだ。お疲れ。でももう夕方よ? 秋は暗くなるのが早いから…」

 「そう言うと思ってクレープ買ってきましたよ」

 メアリーがクレープの入った紙袋をソフィアに手渡す。

 「え、こんなに?」

 「いえ、流石に皆さんの分もありますよ……ってクリス様どうしたんです? 豆鉄砲が鳩食ったような顔をして」

 「それを言うなら鳩が豆鉄砲を食ったよう…よ」

 いやだって、三大食い意地キャラの一人であるメアリーが他人の分までお菓子を買ってくるなんて想定外なんだもの。

 そういえば、今日の朝も今川焼きもらったわね。

 一体どういう心境の変化かしら? 女心と秋の空とは言うけれど、いくら何でも変わりすぎじゃないかしらね? これは台風の二個三個来てもおかしくないわ。絶対に何か嫌なことが訪れる前触れなんじゃないかしら?

 そんな事を考えていたら、いつの間にかソフィアはいなくなっていた。

 「みんなー聞いてー。メアリーがお菓子買ってきたわよー」

 「え、本当に?」「クリス様じゃなくて?」「明日隕石でも堕ちるのかしら?」「そのメアリー偽物なんじゃ…」「食べきれなかった残りじゃなくて?」

 「散々な言われようね…ってメアリー?」

 「いいですよ。そう言う事言うんならあげません! 全部私が食べます」

 「食べないとは言ってないじゃない」「そうよ。珍しいなーって話してただけで…」「そうそう。頭でも打ったのか心配してただけだし」

 怒ったメアリーが突撃して、クレープの入った紙袋を奪おうとしている。そんな事しているとドレスダメにするわよ。

 しかし、本当に姦しいわねここ。


 その後メイドさん達が平謝りして事なきを得たんだけど……。

 「あの、サマンサさん…私こんなに食べられないんですけど」

 ドレスをもらったのが嬉しかったんだろうね。ヨメナさんへの感謝の気持ちだったんだろう。食べきれないくらいの量のクレープがヨメナさんの前にうず高く積まれていた。逆に嫌がらせにも見えるのよね。

 「そうですか? 私はこのくらいペロリといけますが」

 「あんたとヨメナさんを一緒にしないでよ」

 ビシューさんがきょとんとしたメアリーにツッコミを入れる。

 「お気持ちだけ受け取っておきますね」

 「じゃあ残りは私が」「いいえ、私が」「あんたさっきいっぱい食べたでしょ」

 みんなでクレープの取り合いになってしまった。

 まぁ、実際美味しいからね。取り合いになるのは分かるんだけど、もう少しで夕飯の時間になるんだけど分かってる?


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