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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第6章

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50 二人の王子様①


 校門へ向かいながら歩いていると、さっきまで話題の渦中にいたレオナルドがいた。

 「ちっ…」

 私にしか聞こえない声量でメアリーが舌打ちする。やめなさいよホントに。

 「おや奇遇ですねクリス…………とメアリー」

 「ごきげんようレオ様。どうかしましたか?」

 「いえ、折角の休日ですしクリスと街に行こうかなと思って寮のコンシェルジュに呼び出してもらおうかなと思っていたんですが、いいタイミングでした………って、そのドレス姿どうしたんですか?」

 「あぁこれですか? 先ほどまでジル様のお茶会にお呼ばれしていまして」

 「何ですって!」

 なんでそこでそんな過剰反応するんですかね?

 「大丈夫ですか? 何か嫌な事はされてませんか? もしそうなら私が排除しますよ」

 何で私の周りにはこんな過激思想の持ち主しかいないんだろう。ゼロか百にしか振れないのはどうかと思うの。

 「そんなレオ様の言う事なんてありませんよ。現にほら、何もありませんし。楽しかったですよ?」

 実際私の望むリンチみたいなお茶会ではなかったからね。

 「本当ですかメアリー?」

 全く信じてないんですね。しかもそこでメアリーに聞くというね。ちょっと失礼じゃありませんか?

 「クリス様の言う通り素晴らしいお茶会でしたよ。ふふふ…」

 「そうですか…。メアリーがそう言うのならそうなんでしょう………。ですが、何か含みがある感じがするんですが」

 「気のせいですよ。ねぇクリス様」

 「そうね。寧ろ平和すぎるくらいでしたわね」

 「そうですか。それは良かったです。クリスに何かあったら気がきではないですからね」

 何かあったとしてもレオナルドの前では絶対にそう言う事は言わないようにしないと、大勢の被害者や二次被害者が出てしまいかねないからね。


 「それはそうと、今日はとても大人びて見えますね。そのドレスも素敵ですし………! そのドレスはもしかしてゴールデンマムですか?」

 レオナルドも知っているって事はそんなに有名なのかな? いつも自社ブランドの服着てるからよく知らないのよね。

 「そうみたいですね」

 「そうみたいって……メアリーのドレスまで…」

 驚きすぎて凄い顔になっている。

 「そんなにこれ凄いんですか?」

 「凄いなんてもんじゃありませんよ。以前は王族かそれに連なる家くらいしか買えないくらいの物だったそうですけど、当時の職人がやめてしまい、後継者もいないことから幻のブランドになっているものですよ。質がいいので年月が経っても価値が落ちるどころか上がり続けてますからね。クリスの着ている物だと、小さめの子爵領か伯爵領くらいは買えちゃうんじゃないですかね?」

 とんでもないわね。博物館級のドレスじゃないの。今何の気なしに着ているけど、めちゃくちゃ怖いんですけど。

 というかそんなドレスを二つも持っているヨメナさんって一体……。

 「しかし、それは比較的新しいデザインですね」

 「そうなんですか?」

 「えぇ。後期のデザインで流通量が少ないですから、それこそ城が立つくらい貴重ですよ」

 「着替えてきてもいいですか?」

 「まぁまぁ落ち着いてください。それを知ってる人は限られていますから大丈夫ですよ」

 いや、汚したくないなって思っただけで。

 「それに今戻ったら余計なものまで来そうなので」

 「はい?」

 「いえ何でもないです。それより折角時間があるんです。デートしませんか?」

 「ダメです」

 「メアリー…、空気を読んでくださいよ」

 「いーえダメです。今日はこの後私とデートして今川焼き、モダン焼き、たこ焼きと食べ歩きする予定だったのです」

 「そうですか…。私は最近出来たクレープ屋さんに行こうと思ったんですよね。パリパリ食感のクリームのないものなんですけどね」

 「クリーム無いのに美味しんですかぁ?」

 メアリーが小馬鹿にした感じで言う。誰にでも態度変えないのは凄いけど。

 「ふっ…。メアリーはお子ちゃまですね。そこはパリパリ食感の生地が美味しいんです。バターに砂糖や蜂蜜を使っていて、生地の美味しさがより際立つんです。シンプル故に何個でも食べられちゃ…」

 「分かりました。そっちに行きましょうクリス様」

 レオナルドの話が終わる前に食い気味で行く事を決定するメアリー。本当に食いしん坊なんだから。

 しかしそのクレープには非常に興味があるわね。是非とも食べてみたい。


 「いえ、ですから、折角のデートなのでクリスと二人きりがいいなぁ…なんて」

 「何言ってるんです? 令嬢が街へ行く時は必ず侍女が付くんですよ。常識ですよ? それにうちのクリス様をどこぞの男の元に一人で行かせられる訳ないじゃないですか。お目付役として私も行きます。そしてクレープを食べます」

 「ただクレープが食べたいだけじゃない」

 「そうとも言いますね」

 「仕方ありませんね。ですが、私とクリスの邪魔はしないでくださいね?」

 「そうですね。検討に検討を重ね、最善の方法を模索しながら、あらゆる可能性を排除せずに注視し、見極めながら検討を進めていきたいですね」

 「なんですかその内容の無い言い回しは。誰の影響なんです? 逆に頭悪そうに見えますから止めたほうがいいですよ」

 「そうね。レオ様の言う通りだわ。それ結局嫌って言ってるようなものだし」

 「自分も途中でよく分からなくなってました」

 メアリーに頭の悪い言い回しを止めさせて、三人でクレープ屋さんに行こうとしたところで、本物の王子様みたいな人シェルミー様が声をかけてきた。

 「やぁレオナルド殿下にクリス嬢…。えっとそちらは」

 「クリス様の未来のお嫁さんメアリーです」

 「そうなんだ。よろしくね。気軽にシェルミーと呼んでほしい」

 「はい。分かりました」

 シェルミー様とメアリーが何か通じ合った感じで見つめ合ってるとレオナルドが勢いよく割り込んだ。

 「いいえ。違います。メアリー勝手に何を言っているんですか」

 「ははは。賑やかでいいね。ところで三人でどこへ行くんだい?」

 「あ、はい。レオ様がクレープ屋さんに行くそうなので一緒に」

 「へぇ…そうなんだ。僕も一緒していいかな?」

 「ええどうぞ」

 「はは…ありがとう」

 「どうしてメアリーが言うんですか?」

 「でもいいって言いますよね?」

 「まぁ…はい」

 私達の普段のやりとりにシェルミー様が戸惑っている。まぁ無理もないよねメイドであるメアリーが場を仕切っているんですもの。

 「ところで、クリス嬢とメアリー嬢のそのドレスはいいね。シンプルながら洗練されたデザインだ。いいセンスだね」

 「ありがとうございます…」

 シェルミー様は普段から男装してるから、このドレスは知らないんだな。まぁ私も知らなかった訳なんだけど。

 「折角だしエスコートしてもいいかな?」

 そう言ってシェルミー様は片膝を地面につけて片手を差し出した。

 なんて男前で素敵なのかしら。少女漫画のヒーローみたい。どうしよう。胸の奥がキュンキュンしすぎて鼻血が出そう。

 「ちょっと待ってください。クリスのエスコートは私がします」

 そう言ってレオナルドも同じようなポーズを取るが、シェルミー様の方が様になっているんだよなぁ。

 そして勿論この方メアリーもエスコートを申し出………いや、メアリーは勝手に私の手を掴んでいた。

 そしてドヤ顔で二人を見下ろす。うーん不敬。

 その様子に苦笑いをするシェルミー様と不機嫌な顔をするレオナルド。

 「仕方ないね、クリス嬢の隣は既に予約済みのようだ。どうだろうレオナルド殿下。僕に君のエスコートをさせてはくれないだろうか」

 「えっ!」

 あらぁ。いいじゃない。私そういうの好きよ。

 王子様と王子様が仲睦まじくしているのっていいよね。

 「ふふ…悪いようにはしないよ。王子様」

 ちょっと胸を抑えるレオナルド。一瞬ドキッとしたのね。

 そして顔を赤らめ落ち着かない様子のレオナルド。どうしていいのか分からず泣きそうな顔になっている。なかなかにそそるわね。

 「じゃあ行きましょうか」

 そして案の定メアリーが主導権を握ったままクレープ屋さんへ足を運んだのだった。


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